森本 朋蘭 副院長の独自取材記事
石井歯科
(松山市/いよ立花駅)
最終更新日:2025/09/11

地域に根差し、親子3代にわたって通える歯科医院として長年親しまれてきた「石井歯科」。副院長の森本朋蘭(もりもと・ともか)先生は、名古屋と愛媛を行き来しながら診療を行う2拠点勤務というスタイルで、日々の診療にあたっている。小児期の口腔機能や発育、さらに高齢者の口腔筋トレーニングなど、幅広い世代へのアプローチを得意とし、子どもたちの健やかな成長と地域の健康寿命延伸をサポートしているのが特徴だ。自身も子育て真っ最中の歯科医師として、保護者の目線に立った診療や、日常生活からの気づきを大切にする姿勢が印象的。単なる「治療」にとどまらず、家族ぐるみで相談できる地域の「健康支援拠点」として、未来を見据えた新たな歯科医療に取り組んでいる。
(取材日2025年8月5日)
子どもたちの「今」と「未来」を支えたい
小児歯科に力を入れるようになったきっかけを教えてください。

小児歯科に注力するようになったのは、自分の子どもがきっかけです。現在3歳の息子が夜によくいびきをかいていたのが気になり、調べるうちに、咀嚼・舌の筋力・呼吸の仕方が歯並びや睡眠の質に深く関係していると知りました。今の子どもたちは昔に比べやわらかい食事が多かったり、アレルギー性鼻炎などのさまざまな原因で顎や舌の筋肉が発達しにくくなっています。それが歯並びの乱れや睡眠障害、さらには集中力の低下にも影響している可能性があるんです。矯正ももちろん大切ですが、そもそも歯並びが悪くなる前に予防的なアプローチができるのが理想。そのために、正しい食べ方や舌の位置、呼吸の仕方を指導する「口腔機能発達支援」に力を入れています。今では保険適用も可能になったため、より多くの子どもたちに届けられるようになりました。
診療ではどのような工夫をされていますか?
子どもにとって歯科医院は「怖いところ」というイメージが根強いですよね。だからこそ、診療では「何をするか」を事前に伝えるようにしています。どんな小さな処置でも、いきなり触るのではなく、「これからこうするね」と必ず声をかけるよう心がけています。また、初診時の緊張を和らげるために、治療と関係のない話――例えば「夏休みどこ行った?」とか「好きな遊びは?」といった会話を交えることで、自然と表情が和らいでいきます。来院2回目からは、子どもたちが自ら診療室の奥に入っていく姿も見られるように。歯科医院を楽しい場所と感じてもらえるよう、治療ではなく「習い事」のような感覚で通ってもらえる環境づくりを意識しています。
治療の流れや期間について教えてください。

「口腔機能発達不全症」という保険診療の病名がつくことで、月1回のチェックと家庭でのトレーニング指導が可能になりました。最初に問診やお口の中の診察を行い、舌や顎の筋力、飲み込み方などをチェックします。普段の食事姿勢や癖も大事な観察ポイント。診療時にお子さんに楽しくできる課題を出し、それをご家庭で親子で実践してもらいます。毎月の通院では、その宿題ができているかを確認し、成長の度合いを見ながら進めます。半年ほどで改善が見られれば卒業。必要に応じて矯正に移行するケースもあります。きょうだいで来院されることも多いのですが、競い合うように取り組んでもらえればうれしいですね。継続することで生活習慣そのものの改善を図り、将来の健康にもつなげていってほしいです。
家族みんなが通える、地域のかかりつけ医へ
先生が歯科医師を志したきっかけは何だったのでしょうか?

当院は院長である父が1986年に開業し、私は小さい頃から歯科医師として働く父の背中を見て育ちました。とはいえ、「歯科医師になれ」と言われたことは一度もなく、むしろ子どもが好きだったので、保育士など子どもに関わる仕事を漠然と考えていたんです。ただ、高校生のとき、父と犬の散歩をしている時に「患者さんとのやりとりっていいな」と思ったのが転機でした。人の話を聞いて役に立つ仕事がしたい。その気持ちが歯科という道につながりました。大学は岐阜の朝日大学に進学し、その後は名古屋の大学病院で口腔外科を経験。インプラントや歯周病治療なども幅広く学びました。今こうして地元で診療しているのは、偶然と縁が重なった結果ですね。
現在の2拠点勤務体制について教えてください。
名古屋には家族がいて、普段はそちらに住んでいます。愛媛には1週間おきに戻ってきて、1週間は診療、1週間は名古屋で過ごすというサイクルです。飛行機も慣れっこになりました(笑)。2拠点勤務は大変な部分もありますが、両方の地域で患者さんに向き合えるのはありがたいこと。愛媛に戻るきっかけは、「やっぱりこの地域が好きだな」という気持ちでした。非常勤から始めて、今では定期的にしっかり関わる体制ができてきています。今後は、より愛媛での勤務比重を増やしていきたいと考えています。
幅広い世代の患者さんに対して大切にしていることはありますか?

小さなお子さんからご高齢の方まで、どの世代の方にも共通して意識しているのは「安心感を与えること」です。治療前に必ず説明し、触れる前には声をかける――これは年齢に関係なく行っている基本の対応です。また、ご高齢の方は会話の中に大事な情報が隠れていることも多いので、なるべく時間を取ってゆっくりお話を伺うようにしています。独居の高齢者の方も来院されますが、定期的な通院が「社会とのつながり」にもなっているんだなと実感します。お口のお掃除だけでなく、おしゃべりの時間も含めて「ここに来るのが楽しみ」と思っていただけるよう心がけています。
健やかな未来を支える「口の力」
高齢者向けのサポートにも取り組まれているそうですね。

はい。高齢の患者さんにとっても、口腔機能は非常に大切です。咀嚼力や嚥下力が落ちると、誤嚥や窒息のリスクが高まり、食事や会話の質にも関わってきます。最近では保険診療の中で、高齢者向けの口腔筋トレーニングも可能になりました。これは、子どもの口腔機能支援と同じく、筋肉の正しい動かし方を覚えるためのもの。簡単な体操や発音練習などを通じて、楽しみながら取り組めるよう工夫しています。いつまでも自分の口で食べ、会話し、笑うことができる――そんな未来を支えるお手伝いができたらと思っています。
地域の医療機関との連携も視野に入れていますか?
歯科だけで完結しない悩みもたくさんあります。例えば、いびきや睡眠の問題は耳鼻咽喉科や小児科との連携が必要なことも。また、言語発達が気になるお子さんには、言語聴覚士との協力が欠かせません。地域には信頼できる医療機関がたくさんあるので、必要に応じてしっかり紹介し、スムーズに連携が取れるような体制づくりをめざしています。いずれは、さまざまな専門職が横でつながれるような「チーム」のような地域拠点になれたら理想です。そうした環境が整えば、患者さんもより安心して継続的なケアを受けられます。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

歯科医院は、どうしても「怖いところ」「痛くなったら行くところ」と思われがちです。でも、本当は生活の質を守る場所でもあるんです。子どもの歯並びや姿勢が気になる、眠りが浅い気がする……。そんな日常の中のちょっとした違和感を、まずは気軽に相談してもらえたらうれしいです。いきなり治療を始めることはありませんし、納得した上で進める診療を心がけています。スタッフも皆、子育て経験のあるお母さんたちなので、ご家族ぐるみで安心して通っていただけます。もちろん、子どもだけでなく、虫歯や歯周病などの疾患でお悩みの方もぜひご相談ください。「何か変だな」と感じた時こそ、来ていただくタイミングです。小さなことでも一歩踏み出すことで、将来の大きな安心につながります。私たちは、その声に耳を傾け、最善の方法を一緒に探す準備をいつでも整えています。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正/20万4600円~