村上 昇 院長の独自取材記事
村上皮膚科クリニック
(横浜市都筑区/中川駅)
最終更新日:2021/10/12

「治療によって人生の変わる人もいるのが皮膚科です」と語る村上昇院長。学生時代、アメフトで汗を流したスポーツマンだけに、言葉の一つひとつが力強い。一方、子どもの患者や、自身の子について語るときには、穏やかな表情がより一層にこやかになる。「子どもには治療のことなど一通り説明しています。子どもを信じていますから」と話す院長。心理的なストレスがアトピーを悪化させると言われているが、このドクターの診療なら、子どもたちはきっと安心して通院できるだろうと感じた。
(取材日2010年5月19日)
治療によって人生が変わるのが皮膚科
先生が医師、とりわけ皮膚科医になった理由は?

僕の祖父が医師をしていました。夏休みなどに祖父の家に行くと、お医者さんとして町の皆さんや患者さんから慕われている様子を見ることができました。そんな祖父の姿に接するうちに、医師という仕事は誇りを持って続けられる仕事なんだろうなあと、子ども心に感じました。その後、医学部へと進学し、いろんな科の実習を受けることになりました。その中で皮膚科というのは、結果を目で見て非常によくわかるというか、治る、治ってないがすぐにわかる科だと思ったんです。内科的な側面からもアプローチでき、いろんな要素を持ち合わせているのが皮膚科。治療法もバラエティに富んでいます。そして何よりも「結果を突きつけられる科」だと思いました。皮膚科の疾患の多くは、外科や内科に比べると死に直結するようなケースは少ないかもしれません。しかし本当につらい皮膚の疾患を抱えた人の中には、心の死というか、絶望の淵にいる人がたくさんいます。とても深刻な診療科目であることは事実です。だからこそ最善の治療を行いたい。治療によって人生の変わる人もいるのですから。
キャリアはもうどのくらいになるのですか?

聖マリアンナ医科大学を平成8年に卒業し、その後大学院へ進学し博士号を取得しました。皮膚科医の専門医の資格も取りました。13年間、出向も含めて大学病院に勤務し、昨年の4月に当院を開院しました。なのでキャリアは14年以上になります。いつも僕は実際の年齢よりも若く見られてしまって、いったい得なのか損なのかわからないのですが(笑)、もう40歳。皮膚科医として多くの経験を積んできています。母校の聖マリアンナ大学は皮膚科の最先端治療にも力を入れており、化粧品の開発にも積極的に参加するなど、活発に皮膚医学の情報を発信しています。僕は現在、母校の非常勤講師も行っており、学生の前で講義することもあります。「教えることは二度学ぶこと」と言いますが、まさにその通り。とにかく必死で勉強しています。学生の反応も毎回違いますね。それだけ僕がおもしろい講義をしているということならうれしいのですが(笑)。
中川に開院した経緯は?
じつは以前この場所で、大学のアメフト部の先輩が皮膚科医院を開院していました。しかしある事情で続けることが難しくなり、そこで僕に「後を継いでくれないか」というお話しが来ました。それから約半年という短い期間で開業にいたりました。ここは医療モールではないのですが、たまたま耳鼻咽喉科や歯科医院などが同じビル内に入っているので、患者さんにはとても便利だと思います。また以前の先輩のクリニックも同じ皮膚科だったので、以前から変わらず通ってきてくださる患者さんもおられます。皮膚科の治療というのは、本当に日進月歩で進んでいます。皮膚に対する考えそのものも、時代によって違いますからね。なので皮膚に関する悩みがあるのなら、ぜひ気軽な気持ちで相談していただきたいと思います。
子どもを信じ、目を見て説明。共に前に進むため
どのような症状の患者さんが多いですか?

アトピーの患者さんをはじめ、あらゆる症状の患者さんが通ってこられます。夏場を前にすると水虫の患者さんも来られますし、小さなお子さんの場合はとびひで駆け込んでくる子もいます。お年寄りの場合は、加齢によって肌の水分量が減ることから、乾燥にまつわる症状で通院される人もいます。土地柄のせいもあるのかもしれませんが、とにかく年代を問わず、幅広い世代の患者さんが来られています。症状の中で、やはり目立っているのはアトピーかもしれませんね。アトピー性皮膚炎というのは、対人関係や仕事にも影響するため、患者さん自身はとてもつらい思いをなさっているでしょう。ましてやお子さんとなると、より精神的な負担は大きいのかもしれません。アトピー性皮膚炎のお子さんの中には、日常生活を大きく制限されている子がいるのは事実です。僕自身、2児の父親です。なのでアトピーに苦しむお子さんの気持ちは、痛切に感じますね。
アトピーに苦しむ子どもに対し、どんな点を心掛けていますか?

子どもというのは、大人が想像している以上に、ちゃんと物事を理解しています。なので僕はお子さんの患者さんには、きちんと本人の症状や治療法を説明しています。症状を改善するために、家に帰ったら必ずやってほしいこと。あるいは学校生活や毎日の暮らしの中で、お子さん自身にやってほしいこと。それらを本人にも伝えています。ママにはママの情報を。そしてお子さんにはお子さんの情報を。そのように治療に関する正しいインフォメーションを流すことで、トータルに症状をカバーできると信じています。子どもは大人からの信用を、きっと感じとっているはずです。ときどきお子さんの患者さんから手紙をもらうんですよ。内容は皮膚のこととは関係なく、学校などの日頃の生活を日記のように書いてきてくれる物が多いです。本当にうれしいです。お子さんに症状を説明するときは、ちゃんと本人の目を見て話すようにしています。小さなことかもしれませんが、大きな信頼関係につながると信じています。
きちんとした説明は、大人の患者にとってもうれしいですね。
そうですね。当院の診療モットーのひとつに「丁寧な診療とわかりやすい説明」があります。診断内容も治療法も患者さんご本人によく伝え、そしてご理解していただきたい。皮膚科の治療というのは患者さんと医師が一緒に治していくものです。例えば軟膏の塗り方一つをとってみても、丁寧に指示通りに塗った場合と、そうではない場合とでは、結果が大きく違ってきます。ステロイド剤も指示通り適切に使ってもらえれば、問題はないのです。あやふやな自己判断は決してしてほしくありません。また季節によっても注意事項は違ってきます。夏には夏の、冬には冬の注意点があります。このようにお伝えしなければならない点は山ほどありますが、まずは一緒に頑張りましょう、同じ目標を持って、共に前に進んでいきましょう、という気持ちで患者さんにご説明しています。
それぞれの立場に合った、ベストマッチングな診療
先生の奥様も同じ皮膚科医だそうですね。

はい。妻も週に1回、当院で勤務しています。皮膚科という診療科目は、とてもデリケートな面も持っています。「女の人にしか見せたくないわ」という女性の患者さんもいますし、逆に「同じ男の先生がいいな」という男性の患者さんもいます。なので診療日を分けて診察しています。男性ドクターと女性ドクターがそろうことで、きっと患者さんにもメリットがあるだろうと思います。僕自身、大きなメリットを感じているのかもしれませんね。妻は同じ皮膚科のドクターですから、本当に心強いです。仕事でも、そしてプライベートでも、妻は理想的な相談相手ですよ。家族を持ってわかったこともたくさんあります。今、二人の子どもがいますが、父親になったことで、お子さんの患者さんに対する治療のヒントをもらったような気がします。「この子がわが子だったら、どんな治療をするだろう」や、「この子にとって、一番の治療をしてあげよう」など、今まで以上に患者さんの立場や環境を察した治療ができるようになったと感じています。
先生の夢は何ですか?

プライベートな夢としては、いつか子どもたちを連れて、家族みんなでイグアスの滝を見てみたいですね。大自然のすごさ、地球の偉大さを肌身で感じられる場所に、いつの日か出掛けてみたいですね。ドクターとしての夢は、地域の皆さんが気軽に相談できるクリニックであり続けることです。僕の持っている皮膚の健康に関する知識が皆さんの役に立って、そして僕に相談することで皆さんの不安が解消する。地域の皆さんに「あそこに、いい皮膚科があってよかった」そんな風に思ってもらいたいですよね。このエリアは緑が多く、とても静かなところが気に入っています。患者さんもいい人が多くて、診療もとてもやりやすいです。とても大好きな町です。
読者の方にメッセージをお願いします。
僕は今、子育ての真っ最中です。きっと読者の方にも似た世代や境遇の方々が多いと思います。なので生活目線のより具体的なアドバイスができると思います。子育て中のママやパパの中には、お子さんのアトピーに悩んでいる人もいるでしょうし、あるいはご自身が皮膚のトラブルを抱え、子どもにうつらないかどうか心配している人もいるかもしれません。気になることがあれば、気軽に。それこそ友達感覚でいいんです。肌について不安なことを相談してください。僕の心掛けていることに「それぞれの立場に合った、ベストマッチングな診療」というモットーもあります。患者さんそれぞれに応じた治療法を今後も提案していきたいですね。