速水 茂 院長の独自取材記事
速水歯科医院
(京都市左京区/神宮丸太町駅)
最終更新日:2025/05/15

鴨川から二条通を東へ歩いて5分ほどの場所にある「速水歯科医院」。情緒あふれるロケーションの一画にある同院は、大正時代から続く歴史あるクリニックだ。速水茂院長は、祖父が開院した同院を10年前に父親である先代から受け継いだ。その際に院内をリフォームし、バリアフリー化。グリーンと木目を基調としたぬくもりのある空間は、常に笑顔で穏やかな院長の人柄同様に安心感を与えてくれる。「口の中をノーマルな状態に戻そう」をコンセプトに、地域の頼れるかかりつけ医として診療にあたっている速水院長に話を聞いた。
(取材日2021年7月2日)
診療コンセプトは「口の中をノーマルに戻そう」
長く続く歯科医院だとお伺いしました。その成り立ちと先生との関係を教えてください。

私の祖父が大正時代に開院し、父が継承した後、さらに私が受け継ぎました。もともと祖父は生まれ育った京都を離れ、通っていた大学のあった関東で歯科医院を開院したのですが、関東大震災に遭い、こちらに戻ったと聞いています。私が小学生の時に父の代になり、自分もいずれは継承すると思っていましたが、父が高齢になるまで現役を貫いていましたので、先代からバトンタッチしたのは2011年。今年で10年目に入ったところです。
先代から継承するまでの経歴を教えてください。
1991年に大阪歯科大学を卒業し、そのまま同大学の大学院に進みました。専攻は歯科保存学、根管治療の研究をしていました。口の中の病気というのは、外からの感染ではなく、自分の体にもともとあった菌が入ってはいけない所に入り込んでしまうもの。本来だったら、人間と共存できている菌が悪い作用をしてしまうということに興味を持ったのがきっかけです。「健康は口もとから。口の中をノーマルに戻そう」という自分の診療コンセプトは、その根管治療の研究を通して体感したことがベースになっています。入ってはいけない所に入ってしまった菌というのは、出ていってもらうか、根絶やしにするしか道がない。そうしないと健康に戻らない。つまり、口の中が清潔ではないと病気になるし、いろいろと不都合なことが起こってしまうということ。患者さんにも、メンテナンスや口の中を清潔に保つことの重要性をしっかりと伝えようという思いを持ちました。
先代から受け継いだ際に院内をリフォームしたそうですが、その際にこだわった部分を教えてください。

先代は良い意味でも、悪い意味でも昔気質の人だったので、院内も今の時代に合わせてアップデートすることを第一に考えました。まずはフローリングをクロスに張り替え、ユニット台も3台から2台に。患者さんのプライバシーを守るためにも、間にしっかりとパーティションを立てて、セミクローズの形に変更しました。近隣から来てくださる方は高齢の患者さんも多いので、入り口部分に手すりを設置し、待合室に入るドアも押して開閉する重たい開き戸から、扉を横にスライドさせる引き戸に変えました。引き戸を開放することで、スロープを別途つけることもできますので、車いすのまま入っていただくことも可能です。
患者の希望を聞き取るのが治療の第一歩
診療にあたって心がけていることを教えてください。

歯科医師の役目は、お年寄りになっても噛めるように、口で食べられる状態でいられるようにすることだと思っています。歯を削ってかぶせるというのは、そのための手段であって、何をするにしても歯科医師のもとに来た以上は来る前よりも、よく噛めるようになっていなくてはいけない。ですから、治療に入る前には患者さんの希望をしっかりと聞き取り、それに沿うような形で治療計画を立てるようにしています。それが治療を始める第一歩ですね。痛みをなくしたいのか、入れ歯の調整なのか、メンテナンスなのか。何を望んでいるのかということを聞き取るためには問診が一番大事ですから、じっくりお話をお伺いするように心がけています。とはいえ、長く勤めている歯科衛生士には「強い口調になっている」と怒られることもあり(笑)。まだまだ日々、勉強です。患者さんとのやりとりに関して、経験が長い頼れるスタッフがいるのは自分にとっても心強いです。
特に初診の際には問診に時間をかけていらっしゃるそうですね。
初診の患者さんは痛みを訴えてくる方が多いので、最初の目的はまず痛みを取り除くこと。そして、ここからどうしますか?ということを、掘り下げてお聞きするようにしています。「痛みが治まればいいんだ」という方もいますから。でも、そういったケースでも種をまくつもりで「口の中をきれいにしないと駄目ですよ」ということはお伝えするようにします。そうすると、だいたいの方はその後のメンテナンスに興味を持ってくださるものです。高齢の患者さんには特にメンテナンスの重要性をお伝えしています。
入れ歯治療にも力を入れているとお伺いしました。

80歳になっても自分の歯を20本以上残そうなどといいますが、それは噛める歯が20本ということで、噛めない歯が20本あっても仕方ないんですよね。生活の質を落とさないためには、しっかり噛める歯に変えることも考えなくてはいけない。歯の数にこだわるよりは、噛むための装置を口の中に入れてあげたほうがいい場合もあります。入れ歯は、その手段の一つです。他の歯科医院で作った入れ歯が合わずに困っている方が来院されることもよくあります。私が大切にしているのは基本をしっかりと押さえて対応すること。もし今、お持ちの入れ歯で「噛めない」「痛い」などお困りのことがあるなら、一度ご相談に来てください。お手伝いできることがあると思います。
将来を見据え、メンテナンスの一環として小児矯正を
小児矯正も行っていらっしゃるそうですね。

大学では歯科保存学が専攻で、根管治療など歯を残すという部分の診療科にいたのですが、頑張って歯を残しても歯並びが悪いとやっぱり噛めないことが多いんです。それに、歯並びが悪いと、虫歯を治療しても予後が良くないということが多い。大人になってからの口もとトラブルの原因の多くは、やっぱり歯並びなんですよね。ですから、成長が止まるまでの子どもの間に歯並びを整えることが大事だなと。小児矯正も、大人になった時の口もとが整うようにという、メンテナンスの一環として考えて提供しています。
小児矯正はどのくらいの年齢から始めるべきだとお考えですか。
今、当院に来ていただいているのは10~15歳のお子さんが多いです。どのタイミングで矯正をスタートすればいいのか悩む親御さんも多く、よくご相談もいだきます。ですが、早ければいいというものでもなく、基本的には子どもの理解力、受け入れ能力が整ってからをお勧めしています。本人が自分の口元を気にしたり、矯正したいなと思ったりするには、ある程度の成長が必要ですから。自分のためだと思わないと長続きしませんし、矯正装置が入ると虫歯もできやすくなりますから、歯磨きをする習慣がついている年齢からがいいと思います。
小児矯正には、どのような方法があるのでしょうか。

生え替わり時期のお子さんなどは、床矯正で始める場合もあります。ですが、床矯正というのは本人の意識が高くないと矯正力が働かないので、やみくもには勧められないんですよね。当院では、6歳臼歯が生えた後のお子さんが多いので、歯列の内側に単純な装置を入れて歯並びを整えていく方式を導入しています。この方式だと取り外しをする必要もないですし、見た目にも目立ちにくいです。やはり歯並びが悪いと歯磨きをしにくかったり、虫歯になりやすかったりと、将来的なリスクもあります。見かけの美しさだけでなく、歯を残すための矯正をという思いを第一に考えています。
読者へのメッセージをお願いします。
年を取っても噛めるように、まずは自分の口の中に関心を持っていただきたいです。1日1回、歯磨きの時に口の中をよく見てください。毎日チェックすることで、悪くなったときの変化に自分で気づけるようになると思います。また、今後は高齢の方に向けて、往診にも対応できるような体制を整えていきたいと考えていますが、往診ではできることが制限されますので、通えるうちに口の中を整えていきましょうとお伝えしたいです。自分が生まれ育った愛着のある街ですから、これからも地域の皆さんが気軽に相談できる「街の歯医者さん」でありたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは床矯正/10万円~、ホームホワイトニング/1万9800円~