杉本 晋一 院長の独自取材記事
杉本歯科医院
(大阪市住吉区/あびこ駅)
最終更新日:2025/08/25

大阪メトロ御堂筋線あびこ駅から徒歩約5分。1993年に開院した「杉本歯科医院」の杉本晋一院長は、「町の歯医者さん」として虫歯や歯周病などの治療を行う一方、大阪府歯科医師会の活動として患者の歯科相談に対応により、多忙な日々を過ごしている。モットーは「患者さんとのコミュニケーションを大切にすること」と院長。初診では応急処置後、患者とじっくりと話をして今後の治療方針を決めており、その誠実な姿勢を信頼し、開院以来通い続ける患者も多いという。「いつまでも自分の歯で食べられるように、定期検診を受けて予防してほしい」と語る院長に、歯科治療の移り変わりや訪問歯科診療の課題、歯科とスポーツの関係など幅広く話を聞いた。
(取材日2017年8月22日/更新日2025年8月21日)
住み慣れた町で幅広い世代の悩みに対応
歯科医師をめざした経緯や住吉区に開院された理由を教えてください。

最初は医師をめざしていましたが、受験勉強中に消化器官の入り口である口腔の重要性について考えるようになり、歯科医師になろうと決意しました。徳島大学歯学部卒業後は大学の担当医師の紹介で、大阪市住吉区の歯科医院に6年間勤務し、1993年に開業しました。さまざまな年齢層の方が住んでいらっしゃることと生まれ育った生野区にも似ていて慣れ親しんでいたことがこの地を選んだ理由です。基本的に治療は私が1人で行います。昔から住んでいる方が多い地域ですが、「この歯科医院に1回行ってみようか」という感じで来た患者さんが、良かったと思い通い続けてくださったらうれしいですね。
診療内容や患者さんの年齢層を教えていただけますか?
保険診療、自由診療ともに行っていますが、やはり患者さんの主訴の多くはう蝕と歯周病ですね。矯正治療は住吉区の専門の歯科医師を紹介しています。患者さんの年齢層は、現在は中高年以上の方が多いです。外科手術のような大がかかりな治療は、大阪府急性期・総合医療センターの歯科口腔外科や大阪歯科大学などの治療実績がある先生を紹介しています。患者さんの多くは、定期的に歯石を取るメンテナンスも受けておられます。長年通い続けていた高齢の患者さんで、通うのが難しくなった場合は訪問歯科診療も行っています。
さまざまな患者さんを診る中で、訪問歯科診療にも対応されているのですね。

住吉区は65歳以上が約30%と、高齢化が進んでいます。当院でも以前可能であった通院が何らかの理由でできなくなった患者さんがいらっしゃいます。この年代の方の主訴は歯周病が多く、歯がなくなりよく噛めなくなったという方も多くいらっしゃいます。そういった方々に対しては声をかけさせていただき、自宅での治療やケアを行っています。歯科医師会としても居宅への訪問歯科診療を進めてはいますが、歯科医師側の負担も大きくなかなか浸透しないのが現状です。歯科医師会でも先進の治療器具や設備を貸し出して訪問歯科診療のサポートを行っていますが、私を含め、もっと進めていかなければと思っています。
コミュニケーションを大切に患者とじっくり向き合う
診療のモットーは何ですか?

患者さんとのコミュニケーションを大切にすることです。私は診療以外に歯科医師会の仕事をしているのですが、その中で、「治療結果が自分が思っていたものと違う」「こんなに高額になるとは思っていなかった」などの相談を受けることがあります。これは歯科医師側の説明不足だと思いますが、このような経験を通じて患者さんとの対話の重要性を感じています。特に、初診の患者さんに対してはまずは主訴を聞き、丁寧にカウンセリングをするようにしています。また、大切なことは日を改めて再度説明するようにしています。何でも相談しやすい歯科医師でありたいと思っています。
患者さんとじっくり向き合うことで、やりがいも大きいのでは?
そうですね。歯科医師会の仕事を通じて、患者さんと徹底的に話すことが重要だと気づかされ、その思いを臨床にも生かしています。患者さんと向き合っているからこそ、喜んでもらえると良かったなと思います。時には反省することもありますが、それよりもうれしいと感じられる回数がどんどん増えていけばいいなと思っています。長く通ってくれる方が多いのは、そうして患者さんと密に関わっているからかもしれません。
長く地域の患者さんを診る中で、近年の傾向はありますか?

昔に比べて子どもたちの虫歯が減り口の中がとてもきれいになりましたね。お母さんの考え方が変わったのが大きな要因ではないでしょうか。食生活の面での指導も行き届いているのを感じます。一方、50~60代になると、やはり歯周病の方が増えています。以前より、厚生労働省は80歳で20本の歯を残そうという「8020運動」を掲げていますが、その目標はほぼ達成できています。現在は次の目標として、壮年期の口腔状態の改善を考えているようです。いわゆる「6024運動」で壮年期における喪失歯をなくしていこうという目標です。歯周病も定期検診を受けることでかなり改善が期待できると思いますので、継続して歯科医院に通い、良い状態を保ってほしいですね。
全身と歯科の関係やスポーツ歯科について学び啓発を
糖尿病と歯周病の関係や、スポーツ歯科医学にも精通されていると伺いました。

近年、糖尿病と歯周病が相互に影響していることが明らかになってきました。生活習慣病である2型糖尿病の患者さんが増え、問診でも糖尿病の治療・指導を受けておられる方が多く見受けられます。日本糖尿病協会にも所属し、歯科医師として知識を深めることで、全身状態を診ながら歯周病の治療を行い、糖尿病の改善にもつなげたいと考えています。一方スポーツ歯科の分野では、スポーツと歯の関係をより積極的に発信していこうと思っています。現在は、空手、フットボール、バレーボールといったコンタクトスポーツの外傷予防としてマウスガードを作製しています。
院内に飾られた絵が華やかな雰囲気ですね。先生のご趣味ですか?
絵を飾っているのは、開院時に知人がプレゼントしてくれたのがきっかけです。時々いくつか絵を交換しています。患者さんはあまり関心がないと思っていたんですが、皆さん「絵が替わりましたね」とおっしゃってくださいます。もともと絵は好きなので、いいなと思うものがあれば買っていますが、衝動買いがほとんどです。休日は家で読書をしたり音楽を聴いたり、妻と一緒に外出して食事やショッピングをして過ごしています。体調管理として、週に2~3回ジムに通っていましたが、最近はなかなか時間が取れず行っていません。
今後取り組んでいきたいことを教えてください。

校医の仕事を通じて、高校生にマウスガードの必要性や正しい情報を伝えていきたいです。マウスガードは外傷予防が目的で、本来歯科医師が作り調節も行うのですが、学生はそれを知りません。インターネットでは、自分で材料を溶かして、噛んで作るようなものがたくさん販売されていますが、そういったものは正しい予防効果が得られなかったり、ひどくなると噛み合わせに問題が生じ、顎関節に障害が出るリスクもあります。コンタクトスポーツをするときにはマウスガードを装着しなければならないという意識を持ってほしいですね。今後も歯科とスポーツの関係について積極的に発信していきたいと思っています。
高齢者だけでなくさまざまな層に治療を届けていくんですね。
当院開設から30年以上たち、当初から来られている患者さんの高齢化も進み、中には来院できなくなっている方もいらっしゃいます。そういった方々や歯科医院に行きたくても今まで受診できなかった方々に対して訪問診療による口腔管理を積極的に進めたいと思っています。近頃は「平均寿命」よりも「健康寿命」という言葉がマスコミでも取り上げられることが多くなりました。不本意にも残念ながら寝たきりになってしまわれた患者さんも寿命を全うするまで生涯お口から栄養を取っていただきたいと願っています。そのためにこそ子どもさんからお年寄りまで全世代の口腔管理に努めています。
自由診療費用の目安
自由診療とはスポーツ用マウスガードの作製/1万円~