怖い気持ちを乗り越えて受診する
患者の勇気に応える歯科診療
寺辺歯科医院
(津市/津駅)
最終更新日:2024/10/04


- 保険診療
歯や全身の健康を保つためにも、定期的に受診したい歯科医院。しかし、何らかのきっかけから歯科治療、ないしは歯科医院自体に苦手意識を募らせ、受診を避けてしまう人は決して少なくない。歯科治療に恐怖心を抱く人のよりどころとなっているのが「寺辺歯科医院」だ。長年にわたり地域に根差した診療を行う寺辺勝之院長は、いうなれば「気長な先生」だ。「怖い思いを乗り越えて受診に踏み出すこと自体、とても勇気ある行動です。その勇気を尊重することが大事なんです」とほほ笑む寺辺院長。急かしたり脅かしたりせず、本人の心が決まるまで待つことを厭わない。そんな姿勢に信頼を寄せ、遠方からの受診も少なくないという。日々、専門家として実直に歯科治療に向き合う寺辺院長に、歯科治療に恐怖心を抱く人への対応への工夫などについて話を聞いた。
(取材日2024年9月9日)
目次
歯科治療で何よりも大切なのは、恐怖心や不信感に真摯に寄り添い、決断の一つ一つを尊重すること
- Qどんなきっかけから歯科に恐怖心を抱いてしまうのでしょうか?
-
A
▲さまざまなきっかけが治療への一歩を妨げることがある
治療が痛くてつらかったなど身体的な理由もきっかけになりますが、中でも歯科医師やスタッフから受けた言葉で傷ついた経験のある人は多いのではないでしょうか。例えば「どうしてこんな状態になるまで放っておいたんだ」だったり「素人にはわからないだろうけれど」だったり。言葉によって心が傷ついた経験によって歯科治療への恐怖心が膨らみ、歯科医院を受診できなくなってしまう。そもそも、誰だって歯科医院は怖いのですから、「次同じことをされたらどうしよう」と思ったら、二の足を踏んでしまうのは当然だと思います。静脈内鎮静法などを用いて鎮静状態で治療を行うことをめざす方法もありますが根本から改善する手助けをしたいですね。
- Q患者さんを迎え入れる際に心がけている姿勢を教えてください。
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A
▲チェアに座り話をする時間をまず最初に大切にしている
患者さんはトラウマがありながらも何度も何度も考えて、やっとの思いで予約をして、診察にいらっしゃいます。その勇気を尊重することが何よりも大切ですね。いざ診察となったら、これまで歯科を受診できなかった理由に耳を傾けます。つらい思いをした患者さんには、私は同業者として代わりに謝ります。申し訳なかったね、って。すると患者さんの顔色が少し明るくなるんです。その変化を見れたら、もう大丈夫だって思います。気休めと思われるかもしれませんが、チェアに座れてお話ができたら大丈夫なケースが本当に多いんです。患者さんにも「自信を持って」とお伝えしますし、反対に「やっぱり怖い」という人には無理に診察を行いません。
- Q「怖い」というだけで何度も予約し直しても大丈夫なのですか?
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A
▲患者との縁を大切にしたいと思っているクリニック
大丈夫ですよ。何も気にすることはありません。患者さんの中には、僕らを気遣う方もいらっしゃいますが、どうしても今日は無理だと思ってしまうこともあるのは当然です。どうぞ僕らのことは気にせず、自分のお気持ちを第一に判断していただけたらと常々思っています。ただ、一つだけお願いしているのは、体調不良などでない限りは来院した上で再度予約を取っていただくこと。電話口でのキャンセルだと、足が遠のきやすくなってしまいますし、顔をお見せいただけたら必ず次につながりますからね。ご縁は簡単にできるものではないですから、やっぱり大切にしたいです。だから、私もスタッフも「いつまでも待っているよ」という姿勢でいます。
- Q患者さん自身が自分の心の声に耳を傾けることも大事なのですね。
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A
▲患者の意志に寄り添った治療を心がけている
歯科恐怖症の方に限らず、患者さんが「自分自身で考えて決める」ことはとても大切です。「先生に全部お任せします」とおっしゃる方もいるのですが、もしもその結果「こんなはずじゃなかった」と思ってしまうようなことがあったら、患者さんも私たちもどちらも不幸になってしまいますからね。当院では、例えば治療法を選ぶ場面なら「何もしない」も選択肢に入れています。変に思われるかもしれませんが、患者さん自身が「今は何もしない」と選べる道筋を残しておくことは大事だと思うんです。時間がたって、「やっぱりこの治療を受けたい」と思えばそれに応じるまでのこと。治療を押しつけるようなこともしないよう心がけています。
- Q初診から具体的な治療まではどのように進むのでしょうか?
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A
▲予約を取って受診への道を踏み出せるよう努めている
初診では緊急を要する事態でない限り具体的な治療は行わず、まず患者さんのお話を聞きます。予約の段階であらかじめ時間を多めに取っておくので、患者さんも気兼ねなくお話しいただければと思います。その上で、今抱えているお困り事に関する診査診断などを行って、患者さんが納得のいく治療を受けられるよう、いくつかある選択肢を説明して、患者さんの決断を踏まえて具体的な治療に進みます。診療の最後には必ず次の診療で行うことをお伝えしておきます。見通しが立ちやすくなりますからね。ただ、どうしても次の診療に際してまた怖くなってしまった場合には、予約し直してもらって心が決まるのを待ちます。こう考えると待つ場面が多いですね。