石崎 一成 院長の独自取材記事
石崎歯科医院
(松山市/石手川公園駅)
最終更新日:2021/10/12

愛媛県松山市の中心街から、自転車で約数分。街中からの立地も良い湊町の中ノ川通り沿いにあるのが、石崎一成先生が院長を務める「石崎歯科医院」だ。長年歯科医師として同院に訪れる患者だけでなく、愛媛・松山の街全体の人々に向けて健康に関する啓発を続けてきた石崎院長。そんな石崎院長のこれまでの取り組みや、歯科医師として、人として大切にしてきた思い。そして多くの人々に知ってもらいたい、口の中の健康に関する知識などについてじっくりと話を聞いた。
(取材日2021年6月5日)
訪れる患者だけでなく、市民全体の健康を守りたい
まずは先生の歯科医師としてのこれまでの歩みを教えてください。

もともと私の父も母も歯科医師でして、幼い頃から両親が患者さんへ治療を施す姿をずっと見て育ってきました。ですから自分も歯科医師の道を迷わず選ぶかたちになった次第ですね。大学は東京へ行って学んだのですが、卒業後に愛媛に戻ってきてすぐ父が亡くなりまして。その父が生前望んでいたこともあり、博士号を取るために顎関節症を専門に再度学びを深めました。その研究も行いつつ父の後を継ぎ、開業医として今日までたくさんの患者さんの治療を行ってきました。
そんな先生の歯科医師人生の中で、大きなターニングポイントとなったことはなんでしょう?
一番印象的だった出来事は、松山歯科医師会の広報を担当することになったことでしょうか。それまでは当然、歯科医院に来た目の前の患者さんの治療を行うことへの意識が大きかったのですが、その役割を担うことになって歯科医師が持つ社会的な役割や、市民の健康維持のために歯科医師としてできることについて深く考えるようになりましたね。さまざまな方と関わる機会が増えたことで、私たち歯科医師が当たり前のように持っている知識でも、他の方にとっては知らないことがたくさんあると気づきました。その気づきを得た経験は、私の人生の中で非常に大きなものだったと思っています。
その際に、先生が一番大事にされたことはなんですか?

私たち歯科医師が知っていて、他の人々が知らないであろうことをとにかく徹底的に周知することです。ただ私たちの発信だけでは情報は広がりませんから、歯科医師だけでなく他の専門領域の先生方や、時には行政との連携を密に取ることにかなり重きを置きました。歯の健康は、体全体の健康に対しても非常に大きな影響を及ぼします。ですから他の専門領域の先生方にとっても歯科医師の持つ知識は大いに役立つと思い、積極的に意見交換会や情報共有を行いました。またこれをさらに大勢に周知するには、行政や報道の方々の力も必要不可欠です。総合的に市民の健康を守るという大きな理想を実現するため、忖度や利害関係は一切なしで大勢の方々と協力してきました。そこで得た信頼や深いつながりは、結果として私自身の人生も非常に豊かにしてくれるものでしたね。
口の中の健康は全身の健康や人の命に直結
先生が歯科医師として、最も患者さんに伝えたいことはなんでしょう。

やはり一番知っていただきたいのは、口の中の健康が全身の健康につながっていることでしょうか。口の中の問題を軽視したり放置したりすると、ゆくゆくは体全体に大きなダメージを与えることにもつながりかねないんです。口の中の健康を守るために大事なのは口内環境を整えることや、正しい噛み合わせの大切さを知ることです。きちんとした歯磨きを行うことや食事をしっかり噛んで食べるといったある意味当たり前のことを、知識として改めて啓発していきたいですね。
口の健康が全身の健康につながるという点について、もう少し具体的なお話を聞かせください。
口内環境が悪化すると体に悪影響が出ることは、実はすでにさまざまなデータとして数字に明確に現れています。最近の話題と関連づけるならば、口腔ケアをきちんとしていない人ほど、新型コロナウイルスに感染した際重症化しやすかったり、集中治療が必要になったりする可能性が高いことも指摘されています。また妊婦さんにとっても口内環境を整えるためのケアは非常に大事で、これを怠るとおなかの中の赤ちゃんへ悪影響が出ることも。さらに口内環境が悪化すると、いわゆる歯周病菌が増加します。実はその歯周病菌が原因で血管内に血栓ができやすくなることから、心筋梗塞や脳梗塞につながることも決して珍しくはないといわれるんですよ。
口の中の健康は命にかかわる疾患とも密接に関わっている、ということですね。

それに関連して、もっと多くの方に知っていただきたい話をするならば、震災後肺炎についての話題も欠かせません。これまでにも日本では度々大きな震災が起こっていますが、その度に避難所で多くの誤嚥性肺炎の患者さんが発生しているとのデータがあるんです。年齢に関わらず、この誤嚥性肺炎で震災後に亡くなる方も一定数存在します。この原因となるのが、避難所での生活や水が十分に使えない環境下での口内環境の悪化とされているんですね。これを防ぐためには、災害時の避難セットの中に歯ブラシを一本入れておくだけでも全然違うと思います。今後愛媛では、南海トラフ地震の発生も想定されていますから、その時に命を救うための口腔ケアの知識を、行政や報道関係の方とも連携して事前に認識しておいていただけるよう、もっと広めていきたいですね。
大勢の温かい協力があってこそ今の自分がある
そういった多くの方とのつながりが、先生ご自身の大きな財産になっているのでしょうね。

歯科医師という立場から市民の皆さんの健康を守りたい、という思いに、多くの方が賛同してくれたことには本当に感謝しかありません。協力してくださった方々とは、理想をかなえるため真剣に腹を割ってさまざまなことを話してきました。そんなつながりから、仕事だけでなくプライベートで皆さんと交友を深めたことも多々あります。協力を頼まれて、行政の方と一緒にしまなみ海道のサイクリングに挑戦したこともありましたね。私自身運動がとても好きなもので、これまでにも合気道やスキー、ウインドサーフィンなどいろんなスポーツに親しんでいまして。サイクリングも一度挑戦して以来すっかり楽しくなってしまって、それ以降今でも続けている趣味の一つになりました。
お仕事の合間で、非常に多くの方と充実した時間を過ごされているんですね。
さまざまな方に助けていただいたことからできたご縁ですから、私もいろんな頼まれごとへの協力やお手伝いは極力断らないようにしています。スポーツ以外に、動物にまつわることにも私は興味を持つことが多くて。歯科医師として働きながら、実は金魚の品種の一つであるランチュウのブリーダーとしても長年活動しているんです。それにまつわる取材を頼まれることもありましたし、今は保護猫や保護犬の殺処分を減らすための活動を時折お手伝いしたりもしていますね。
最後に、今後の展望などがあれば教えていただければと思います。

口の中の健康を守ることで、未然に防げる病気や症状はたくさんあると考えています。時には命を脅かすことにもつながりかねない口内環境のトラブルについて、私も引き続き多くの市民の方々に啓発を続けていきたいですね。また今回口の中の健康の大切さについて新たに知ったことがあれば、ぜひ正しい知識を身近な方にも伝えてあげてください。今後も歯科医師としてたくさんの人々の協力も得ながら、多くの市民の健康を守ることに尽力できればと思っています。