松本 悟一 院長の独自取材記事
松本歯科医院
(松山市/久米駅)
最終更新日:2021/10/12

伊予鉄道横河原線・久米駅から徒歩約3分、町の風景になじむ落ち着いたたたずまいの「松本歯科医院」。院長を務める松本悟一先生はこの地区の出身で、1988年の開業以来、地域住民の歯の健康をサポートし、長きにわたり診療を続けてきた。親子3代で通う患者も多く、「なるべく削らない、痛みの少ない治療」に子どもも抵抗なく来院するそう。虫歯や歯周病の予防にも注力し、定期的な検診で何年も通院を続けている患者も少なくない。また院内には歯科技工所が併設されており、歯科技工士が患者の口の中を直接確認して一人ひとりに適したきめ細かな対応を行っている。地域小学校の校医も務め、来院が難しい高齢者を往診することもある、地域で頼られる存在の松本院長に話を聞いた。
(取材日2019年6月12日)
歯の健康のため、痛くなる前に継続して予防を
この場所は、先生にとってどんな思い入れがありますか?
大学を卒業して5年ほど松山市内の歯科医院に勤務した後、1988年に生まれ育ったこの地域で開業しました。古くから顔なじみの方もたくさんいる、とても親しみのある場所です。患者さんは近隣の方が多く、開業以来ずっと通ってくださっている方や、おじいちゃん、おばあちゃん、お孫さん、そのご両親と、親子3代で来られているご家族もたくさんいます。1992年から地域の小学校の校医をしているので定期的に歯科検診に出かけていますし、寝たきりで通院することができない高齢の方を往診し治療することもあります。小さな子どもから高齢の方まで、地域の皆さまに長く自分の歯でおいしく食べていただけるように、さまざまなかたちで手助けをさせていただいています。
長く続けてこられて、患者の症状などで変わってきたことはありますか?
開業当時は虫歯の治療で来られるお子さんが多かったのですが、近年は予防のために来院する方が増えました。10年、20年と、歯のクリーニングのためだけに通い続ける方も多く、大人も子どもも予防に対する意識がかなり変わってきています。まずお母さんが子どもを虫歯にさせたくないと考え、歯が生え始める生後半年頃から歯科医院を受診するようになります。そうして育つと、子どもさん自身も歯科医院に通うことに抵抗を感じないようです。子どもの歯の治療に関して言えば、当院では毎週水曜に小児歯科を専門に学んだ歯科医師が在院しているので、特別に注意が必要な症状にもしっかりと対応できます。女性の先生なので、口の中を男性に見られるのは恥ずかしいという女性の患者さんが、その女性歯科医師の診療を希望されることもありますね。
予防のための歯のクリーニングについて詳しく教えてください。
私は歯周病について予防歯科の先進国ともいわれるスウェーデンの方式を専門に学びました。歯周病も虫歯も、まず大切なのは予防です。口の中の菌には歯周病菌や虫歯菌など悪い菌もいれば、虫歯になりにくくする良い菌もいます。歯石や歯垢を取り除いて悪い菌がいない状態にすれば、歯周病も予防することができます。歯石などを取る歯のクリーニングは、状態によっては2回に分けることもありますが、通常上下合わせて30〜40分くらいで行うことができます。行う目安は半年に一度。すでに歯周病が進んでいて、歯を磨くと必ず出血する、歯がグラグラしているなどという方は3〜4ヵ月に一度行うとよいでしょう。病気になってからでは医療費も体の負担も大きくなりますので、ぜひ長い目で見て、何か症状が出る前に予防をするようにしてください。
極力削らない、痛みの少ない治療で大切な歯を守る
虫歯治療ではどのようなことに気をつけていますか?
歯をできるだけ削らないようにすることです。もちろん虫歯になってしまっている部分はしっかり取らなければなりませんが、余計に削ってしまうことがないように気をつけています。当院では虫歯の場所が赤色や青色に染まる「う蝕検知液」を使い、削る量を最小限に抑えています。そうすれば、治療の際に患者さんがそれほど痛みを感じることもありません。虫歯の治療に限らず、歯のクリーニングでも歯を傷めないように注意します。例えば車を洗う時に塗装面を傷つけないように優しく洗い流したり、洗顔の時に泡でそっと洗ったりするのと同じです。歯の表面を削り取ることなく、汚れやばい菌だけを超音波で取り除き、その後にフッ素入りの研磨剤で磨いて仕上げています。
虫歯治療はどうしても「痛い」というイメージを持つ方がいるのでは?
大人でも虫歯の治療は痛くないほうがいいですよね。痛みを和らげるために麻酔を使うことがありますが、その麻酔注射がやはり痛いものです。そこで当院では、麻酔注射をする前に歯茎に表面麻酔を行います。ジェル状の塗り薬を歯茎に塗って表面をしびれさせ、注射針の痛みを感じにくくすることができます。子どもの歯を抜くときも、歯がグラグラの状態であれば表面麻酔だけでほとんど痛みを感じない状態で抜くことが可能です。できるだけ楽で痛くない治療を行って、患者さんの不安や緊張感を取り除いてあげたいと思っています。
ほかにも患者さんの不安をなくすために行っていることはありますか?

事前にしっかりと説明をして、納得していただいてから治療するようにしています。こちらの考えだけでいきなり治療を始めると、何をされるかわからず、患者さんは不安になると思いますので、治療する場所を鏡や小さなカメラで見てもらいながら説明をし、治療後にも「ここをこうしました」とお見せします。子どもにも「痛いのはここにこんな原因があるからで、それを治すんだよ」という説明をすれば、納得して積極的に口を開けてくれます。良い治療をするには、コミュニケーションを十分に取って信頼関係を築くことが大切です。そうすれば些細なこともすぐに相談してもらえて早く対処できることもありますし、こちらが歯科医師としてこうしたほうが良いと判断したことも、よく話を聞くと実は患者さんは別のことを気にしていて、そちらを重点的に治療してほしかったのだとわかることもあります。
患者と歯科医師が信頼し合い実現させる生涯の歯の健康
院内に歯科技工所があるそうですね。どんな良い点がありますか?
患者さんの口の中を歯科技工士が直接見ることができるので、補綴物について非常に微細な調整まで行うことができます。例えば頰の内側を噛みやすい患者さんなら、かぶせ物や詰め物の頬に当たる側を滑らかにしたり、入れ歯が張り出して見えるのが気になるという方は少し内側に入れたり、それぞれに応じて細かく対応します。また色の微調整を言葉で伝えるのは難しいものですが、技工士が実際に見て患者さんとも相談をし、満足できる色にすることができます。ほかにも入れ歯の修理にもすぐ対応できるので、患者さんにご不便をおかけしません。入れ歯を長くお預かりするとその間患者さんはうまく食事ができなくなってしまいますが、当院では数時間で修理してその日のうちにお返しできます。開業以来ずっと当院にいる技工士なので、微妙なニュアンスもわかり合える信頼関係ができていて、私にとっても頼もしい存在です。
オフタイムの過ごし方は?
当院がある地域は古くからお湯が湧き出ている場所で、近くに複数の温泉施設があるので仕事が終わってからお湯に入りに行くことがよくあります。ご近所の患者さんと偶然会って話をすることもありますよ。読書も好きで、時代小説をよく読みます。特に人情のあるものなど、ホッとするような内容のものが好きです。少し本から離れていても、ふと本を手に取るとまた次々に読み進めてしまうところも読書の魅力かもしれませんね。ほかには仲間や知人とゴルフに出かけることもあるので、時々打ちっ放しなど練習で体を動かしています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。

地域の方々に長く通っていただいて、何かあってもここに来れば大丈夫と思っていただけるような存在になりたいと思っています。信頼関係を一番大切にしているので、多くの方と良い関係を築いていきたいです。治療や予防の方法、歯磨きについても、時とともに新しい方法や道具が生まれたり、主流になる考え方が変化したりしてきました。当院では豊富な経験をもとに、患者さん自身の希望も伺いながら、複数の選択肢の中から一人ひとりに適した方法を選んでアドバイスや治療を行います。痛くなる前に、削ることなく健康な歯を維持できるように、足を運んでいただければと思います。ぜひ自分の歯で、おいしく健康に一生を過ごしてください。そのためのお手伝いができれば幸いです。