井手 正仁 院長の独自取材記事
井手歯科
(松山市/伊予北条駅)
最終更新日:2021/10/12

松山市北条辻にある「井手歯科」。歯科医師である祖父、父親が営んできた医院の名を受け継ぐ形で新院長に就任した井手正仁先生は、場所を旧国道196号沿いに移し、2014年に新装開業。井手院長の似顔絵を描いたユーモラスな看板が目印だ。神奈川歯科大学を卒業後、神奈川県内で先端の歯科治療技術を学び、Uターンした井手院長は、さらに松山市内の歯科医院で地域に根差したかかりつけとしての診療も経験。生まれ故郷である北条の人々の口内の健康を守ることを使命と考え、日々の診療に取り組んでいる。「患者さんの笑顔あふれる歯科医院」をめざしているという井手院長に、歯科医師としてのやりがいや、力を入れている診療などについて、ざっくばらんに話してもらった。
(取材日2019年8月2日)
幅広い経験を生かし、故郷での開業を決意
おじいさま、お父さまが続けてこられた医院を引き継がれた経緯を教えてください。

もともと、こちらに戻ってくるつもりはなかったんです。祖父や父から継いでほしいと言われたこともなく、自分の進みたい道を選べばいいというスタンスでした。ですから大学卒業後は、神奈川県内の歯科医院で4〜5年勤務しました。そこは先端の治療から地域密着型の診療まで幅広く展開している医院で、視野の広い院長のもとでさまざまな経験を積ませていただきました。転機としては、その医院を退職して、今後どうするかを考えたとき。小さな子どもが2人いたので、子育て環境として、松山に戻るというのもありかなと。仕事よりも家族のことやライフスタイルを考え、子どもが幼稚園に入る時期をめどにUターンを決めました。
それで、井手歯科の新院長になられたのですね。
それが、最初から継ぐ予定で帰ってきたわけでもないんです。まずは松山の歯科医療を経験したくて、普通に求人を見て(笑)、松山市の歯科医院で勤務しました。やはり都会と地方都市では、同じ歯科でも診療内容や求められるサービスが違いますから、地域のやり方を学んだ上で開院できればと。たしかに親の医院を継承するパターンもありますが、そうなると自分自身が本当に伝えたいことはできない。ハードにしても、一度すべて壊して一からつくらなければ自分のカラーは出せないと思いました。結果的には父が引退を考えていたタイミングでもあったので、移転する形で新装開院しましたが、自分のめざす歯科医療を貫くためには覚悟を持って取り組むのが大切だと思いましたので、建物も設備も新たにして、「新生・井手歯科」としてスタートしたんです。
都会と地域の歯科医療の違いというのはどんなことでしょうか?

まず、歯科医師の患者さんに接する姿勢ですね。神奈川時代、患者さんはお客さまという感覚。歯の詰め物を一つ入れるにしても、常に下からの目線でご説明していました。料金表をお見せして「どれにいたしますか?」と。まさにスーパーサービス業という感じでした。それが、松山の歯科医院では「患者さんとは対等の立場で接してほしい」と言われて、最初は戸惑いました。患者さんと方言でコミュニケーションをとることにも苦労しましたね。あとはデンタルIQの差。痛くならないようにするのか、痛くなったら行くのかの違いです。神奈川では歯科に関心の高い方が多く、むし歯にならないために定期的に通われる方が多かったのですが、松山では「なぜこの状態になるまで来なかったのか」という方もいらっしゃいました。ですから私は、お口の中への意識が薄い方にこそ、その大切さをお伝えしていきたいと思ったんです。
歯の大切さを分かち合えたときの喜び
先生の診療方針や、来院される患者さんの層について教えてください。

地域密着の歯科医院として、ある程度自己完結できるよう、オールマイティーにという気持ちでやっています。まずはどんな症状でも、とりあえず来ていただき、診させていただく。むし歯治療や歯周病治療、口腔ケアなどの一般歯科については私が責任を持って診療させていただきますが、矯正治療は、その道のプロフェッショナルにお願いするのが患者さんのためにもなりますから、松山市内の矯正専門の先生に来ていただいています。ただし、かかりつけ歯科医院として、最初のカウンセリングや治療後のサポートなどはしっかりと連携をとっています。また、患者さんの層としては小さいお子さんから高齢者の方まで本当に幅広いですが、意外と多いのが60代からのシニア層の男性。これまでは忙しくてなかなか歯科医院に行く時間がなかったけれど、定年退職をきっかけに「口の中を見直したい」「しっかり治療をしよう」と思い立って来られる方が多いようです。
歯科医師として、特にやりがいを感じる瞬間とは?
ご自分の歯やお口の中の状態に関心がなく、気づけば歯が抜けたり、歯周病がかなり進行したりという状況になってようやく来られた患者さんに、歯科治療や口腔ケアの大切さをわかっていただけたときでしょうか。最初はなかなか話も聞いてもらえないような状態だったのが、歯石の除去やむし歯治療などを丁寧に進めるにつれて、定期的に通う意義を感じ自然と通ってくださるようになったときの達成感たるや。私はもちろんですが、歯科衛生士が特に大きなやりがいや喜びを感じているようです。現在、当院には歯周病のケアなどで定期的に通われている方が300人ほどいらっしゃいます。歯周病治療の安定を図るためにも、患者さんの意識改革を行うことは重要であると考えています。
高齢者への取り組みとして訪問歯科診療も行っていると聞きました。

ご高齢になり、通いたくても通えない方が増えてきていますから、そんな患者さんのご負担を少しでも減らすためにも、訪問診療は積極的に行っています。訪問診療で大事なのは、継続的な口腔ケア。入れ歯を外した歯茎の溝に食べかすが詰まっている状態を放ったままにしておくと、それが気管に入って誤嚥性肺炎を起こしてしまったり、体の免疫力が低下している状態では歯茎のちょっとした傷からばい菌が入り、全身が冒されてしまったりという恐れがあるんです。ですから、私が入れ歯の調整などをしている間に、歯科衛生士が口腔ケアを行うというチームプレーで取り組んでいます。そして、ご家族や施設の方にもケアの方法を覚えていただき、患者さんのお口の中を清潔に保つために協力体制を築いていければと思っています。
地域に溶け込み、身近な存在であり続けたい
お子さんを持つ父親として、親御さんに伝えたいことはありますか?

仕上げ磨きは、小学3年生頃まではしていただきたいですね。小学校入学のタイミングで仕上げ磨きをやめる方が多いのですが、まだまだお子さんの歯磨きだけでは信用できない年頃ですから、お母さん、お父さんにしっかり見ていただきたいと思います。わが家も、長女は現在小学4年生ですが、歯並びが重なって磨きにくいところは仕上げ磨きをしています。また、お口の中の細菌数を増殖させないためにも、できるだけスプーンなどの食器をお子さんと共有しないようにしていただきたいですね。特に3歳くらいまでは注意が必要。歯が生えてくると、その周りの歯茎にばい菌が侵入してしまいますから。むし歯のリスクは小さいうちから省いていきましょう。
お忙しい日々だと思いますが、息抜きに行っていることはありますか?
もともと学生時代は神奈川でウインドサーフィンをしていて体を動かすのは好きだったのですが、開院してから運動する時間を取れず、体の衰えを感じ始めていたので、1年ほど前からウォーターアクティビティーのSUPを始めました。ボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進んで行くものなのですが、かなりいい運動になるんです。週に2回ほど、朝5時に起きて、松前の海岸で練習しています。レースにも出場するくらいハマっていて、今年も予定していたのですが、仕事の関係で出られなかったのが残念です。
読者の方へメッセージをお願いします。

0歳から100歳、いやそれ以上の方も、まずはお口の中を診せていただけたら、歯科医師として何かできることがあると考えています。地域の皆さんに気軽に来院いただきたいという思いで、外から受付が見えるようにしたのが良かったのか、診療目的ではなく、トイレ利用やウォーターサーバーの水を飲みに来られる方もいらっしゃいます。開院前は予想もしていなかったことですが、それも地域になじんでいるということでしょうか(笑)。そんなふうに、とても大らかな場所ですから、どうぞ気兼ねなくお口の中の気になること、お悩みなど、なんでも聞かせていただけたらうれしいです。
自由診療費用の目安
自由診療とはインプラント治療/30万円~、歯列矯正/70万円~
※各税別です。
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