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佐々木 典彦 院長の独自取材記事

佐々木歯科医院

(伊予市/新川駅)

最終更新日:2021/10/12

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院 main

伊予鉄道新川駅から徒歩5分ほど、大谷川橋のそばにある「佐々木歯科医院」。1986年の開業から30年以上にわたり、近隣住民の健康を守り続けている。院長を務める佐々木典彦(ふみひこ)先生は、愛媛大学医学部附属病院歯科口腔外科で勤務医を経験した後、同地にて開業。地域のかかりつけ歯科医院となるべく地域に密着して、日々診療にあたっている。学生時代文化人類学に傾倒したという院長独自の視点に基づく歯学へのアプローチなど、話を聞いた。

(取材日2019年9月11日)

豊富な知識のバックボーンとなった文化人類学の勉強

開業30年以上、まさに“地域のかかりつけ医”かと思います。

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院1

気づけばという感じですが、そうなっていますね。僕は佐田岬半島の瀬戸町というところの出身なんですが、日本大学松戸歯学部を卒業し、愛媛大学医学部附属病院歯科口腔外科に4年間勤務してから、ここで開業しました。もともと僕は他人と競争するのがあまり好きではなかったんですが、開業当時ここには他に歯科医院が見当たらず、それなら他の歯科医院と競争せずに済むなと思ったのもこの場所を選んだ理由の1つでした。当時はなじみのない土地に突然やってきた若造でしたが、たくさんの患者さんが来てくださって、必死で診療に没頭していましたね。

歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が内科の医師だった影響もありますが、大学の歯学部に入っても歯科医師になるという意思はあまり強くありませんでした。とはいえ元来生真面目な性格なので、遊んでいたわけではなく、文化人類学など歯学以外の学問を一生懸命勉強していました。だから他の学生からは一風変わった奴だと思われていたでしょう(笑)。図書館にこもり、歯学部の教授も知らないようなことを発見しては、密かな優越感に浸ったりしていました。例えば人間の犬歯は、チンパンジーなどに比べるととても小さいんですが、何故そうなったかというと、直立歩行することで手が使えるようになり、威嚇や攻撃のために犬歯を使う必要がなくなったからなんです。そういった知識を学ぶうちに、歯学の面白さがわかるようになりました。これは同業者にも声を大にして言いたいところでもありますね。「歯科は面白いですよ」と(笑)。

文化人類学を通して歯科の魅力を再認識されたのですね。

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院2

そうですね。他にも例えばイヌイットの歯の形状や、赤ちゃんが呼吸しながら嚥下できる理由と言語との関係など、僕の知識のバックボーンには、文化人類学から学んだ面白いことがたくさんあり、現在はそれをエッセーやコラムに書くことで楽しんでいます。数年前から当院のホームページにも少しずつ書いています。そう言えば以前、父が面白いことを言っていました。「首から上の器官には歯科、眼科、耳鼻科、脳外科と、それぞれ専門の科があるのがすごい」と。首から上の器官は、それだけ脳と直結した重要な働きがあるんですね。口腔内の感覚は、ミクロン単位の異物が入っても気がつくほど鋭敏なので、かぶせ物や義歯の噛み合わせは、本当に丁寧に調整する必要があります。口腔内の刺激が脳を活性化させているという話もよく聞きますし、歯科治療と認知症との関係も注目されています。歯科は口の中だけでなく、心身の健康にも密接なつながりがあるんです。

これまで培ってきた知識と経験から柔軟に対応

患者さんの層や診療の内容に特徴はありますか?

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院3

患者さんは昔からずっと通われているご高齢の方が多いですね。そしてそのお子さん、お孫さんと、3世代で来られる方もいてすごくありがたいです。診療の特徴として、水曜と土曜の午後は、寝たきりなどで通院が困難になった患者さんへの訪問歯科診療にあてています。歯科医師の場合、一般診療では患者さんの死というものを意識することはあまりありません。ところが訪問歯科診療をしていると、お付き合いの中で患者さんが亡くなられることもあります。頻繁にそういう経験をしていると、自分に投影して考えるようにもなります。「今は元気に診察できているけど、それにも限りがあるんだな」などといろいろ考え、学生時代に勉強した哲学書などを引っ張り出しては「昔の人もなかなか良いことを言っていたなぁ」と再確認したりしています(笑)。

事象を表層的にではなくすごく深く捉えておられる印象です。

たまたまだと思います。でも文学はもともと好きで、高校時代は文芸部に所属していました。ここ数年は明治時代の作家の書籍が好きですね。その小説などを絡めた話をコラムに書いたところ、それを読んだ先生から、講演をしてくれと依頼されたことがあります。講演の受けも良く、人生にはこういうこともあるんだなと愉快な気持ちになりましたね。

診療の中で心がけていることはありますか?

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院4

患者さんの訴えにしっかりと耳を傾けるようにしています。患者さんの中には、治療よりも僕に話を聞いてほしくて通われていた方もおられましたね。ただ、普段はむしろ僕より歯科衛生士さんをはじめとするスタッフが、本当に素晴らしい働きでフォローしてくれています。チーム医療体制を確立させ、歯科衛生士さんなどのスタッフがそれぞれの分野でしっかり補佐してくれることで、診療がよりスムーズに進められるようになりました。それ以降患者さんへより良い医療提供ができるようになっていると感じています。

子ども患者に対してはいかがですか?

開院したての頃は、暴れまわってしまうお子さんやどうしても診療チェアに座れないお子さんに苦労していた部分もありますが、今では「暴れてもいいじゃないか」と受け入れて見守っています。これは経験という面もありますが、小児診療について勉強をしたことが生きていますね。勉強会で知ったことを実践し、それがうまくいくことでより深く学びを得てきたのだと思います。治療が終わってもキッズスペースで遊んでいる子もいますし、治療を頑張ったご褒美のおもちゃをうれしそうに手に取る姿を見るのは楽しみの一つですね。

訪問歯科診療で見えてくることもたくさんある

これまでの中で、特に印象的なエピソードはありますか?

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院5

くも膜下出血で寝たきりとなっている女性の歯科治療のためにご自宅へ訪問歯科診療をしていました。献身的に介護していた旦那さんも足が不自由でおられたのですが、工夫して家事をすべてこなすんです。そのために部屋の中がコックピットのように整理整頓されていたのも印象的ですね。その後奥さんが亡くなったと旦那さんが報告にいらっしゃいましたが、その時は僕ももらい泣きしてしまいました。そしてその1週間ほど後に旦那さんも亡くなったということを、しばらくたってから伝え聞きました。そのご夫婦のことは、なんだか今でも強く印象に残っています。

エッセーやコラムなど執筆活動も続けられていますね。

歯学についての書物は山ほどありますが、自分なら少し違う観点から書けるのではないかとは思っています。以前、餅を喉に詰まらせて亡くなる高齢者についてコラムに書いたところ、刑事さんから詳しく教えてくださいと問い合わせが来たことがありました。というのも、僕は警察に協力をしていて、身元不明のご遺体の歯を調べたりすることもあります。さまざまな経験をしていますので、今後も可能な範囲で何か書いていきたいと思います。

今後の方針についてお聞かせください。

佐々木典彦院長 佐々木歯科医院6

先日たまたま東京都内のある歯科医師が書いた記事を読んだのですが、「昔は虫歯が多かったが、現在は歯を白くしたいとか歯ぎしりを治したいという患者さんが増えた」と書かれていました。地方でも数年先にはそのような傾向が強まることでしょう。ただ、自分がそういう方向に特化していこうとは思っていません。訪問診療も含め今までどおりの診療を続け、そのために必要な勉強をしていこうと思います。訪問診療では、その人の家庭に入ることで見えてくることもたくさんあります。その一方で患者さんもこちらを見ている。それもまた文化人類学の領域に通じるものがあります。本当に歯科は面白いですね。

最後に患者さんへメッセージをお願いします。

特に長く通ってくださっている方々は、僕の歯科医療を受け入れてくださり、支えてくれていると、心から感謝しています。また、僕は皆さんのお口を診る立場ですが、僕も自分の体に関しては患者の立場でもあるわけです。僕と患者さんの間に敷居があるわけではなく、あくまで地域と共生しながら皆さんの健康に貢献していきたいと思います。

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