権丈産婦人科医院 (糟屋郡志免町／須恵中央駅)
権丈 洋徳 院長の独自取材記事
粕屋郡志免町の県道68号線堺田交差点からすぐの場所にある「権丈産婦人科医院」は、親子2代にわたり多くの命の誕生を見守ってきた。院長の権丈洋徳（けんじょう・ひろのり）先生は外科をはじめ、大学病院や総合病院の産婦人科で研鑽を積んできた日本産科婦人科学会産婦人科専門医。副院長の権丈緑先生は日本小児科学会小児科専門医の資格を持ち麻酔科標榜医でもある医師であり、赤ちゃんが元気に育つためのサポートや各手術の麻酔を担当しながら、出産や赤ちゃんの成長に寄り添う。誕生から高齢期に至るまでの女性の健康や生活を支援するクリニックとして、地域に根差した安心できる診療と快適な医療環境の提供をめざす。里帰り出産や無痛分娩にも対応。「満足度の高い出産をしてもらいたいと思っています」と語る院長に、同院の特徴を聞いた。
妊娠・出産、月経にまつわるトラブルなどをサポート
こちらは何年に開院されたのですか？
1971年に私の父が開院しました。私もここで生まれ育ち、幼少期は目の前にある小学校に通い友達とよく校庭で遊んでいましたね。当時は将来について明確なビジョンはありませんでしたが、小さな頃から身近に医療という環境がありましたので、選択肢の中に医師というのは常にありました。最終的には久留米大学の医学部へ進学。大学では部活動を通じて先輩や後輩とのつながりを深められたと感じています。卒業後はいろんな分野を経験し、幅広い知識を持ちたいと思ったことから、聖路加国際病院の外科レジデントとして勤務。外科の分野に興味があり、その中の一つが産婦人科と考えていましたので、まず外科でいろんな経験を積ませてもらいました。
産婦人科ではどのようなキャリアを積まれたのでしょうか？
外科で多様な知識や手術手技を経験した後、九州大学病院の産婦人科で産婦人科医としてのキャリアを積みました。手技的な面では外科領域の目線も持ち合わせており強みになっていたように感じましたが、特にお産に関してはまったく異なる分野ですので一からのスタートでした。大学病院や福岡県内の総合病院で周産期、婦人科腫瘍、不妊内分泌などバランスよく多様な知識や技術を学ばせていただき、その中でも特に、妊娠や出産という女性だけでなく家族にとっても大きなライフイベントをサポートすることの大切さを実感しました。こちらでの診療は2014年頃から九州大学病院での勤務と並行して行うスタイルで始めました。大学病院は紹介状を持って来られる方や重篤な症状の方が多いですが、ここは最初の窓口となる役割を担っていますので、その両方を診ることができたのは医師として貴重な経験をさせてもらったなと思っています。
院長に就任されたのは、いつ頃なのでしょうか？
大学病院での勤務から、徐々にこちらでの診療を増やしていき、院長には2019年に就任しました。当院は分娩に対応していますので、診療は妊娠・出産がメインではありますが、月経にまつわるトラブルや不妊、更年期、がん検診などで来られる方も多くいらっしゃいます。その他、当院で対応できない場合でも、各症状に適した医療機関との連携体制も整っていますので、相談窓口として安心してご来院いただければと思います。また近年は、陣痛の痛みに対する不安が強かったり、前回出産時の陣痛がつらくてトラウマになっているなどの理由で自然分娩ではなく無痛分娩を希望される方や、上のお子さんの世話などを考え、計画分娩を希望される方も多くなりました。希望される分娩方法は多様化してきておりますので、このような希望にもできるだけ応えていきたいと思っています。
妊娠時から子どもを見守り、母親の産後の悩みにも対応
分娩においては、どのようなことを心がけていますか？
当院では自然分娩や里帰り分娩だけでなく、無痛分娩、計画分娩、帝王切開分娩にも対応しています。このような分娩方法の多様化に応えるため帝王切開や無痛分娩など産科麻酔を必要とする場合は、副院長が麻酔を担当しています。分娩と産科麻酔で医師の役割を分担し、看護スタッフとともにより手厚いサポートを行うことで安全面に配慮しつつ、満足度の高いお産をめざしています。出産は人生における大きなイベントですが、出産がゴールではありません。無事お産が終われば赤ちゃんのケアやお世話が始まります。産科医の私だけでなく、小児科の医師も赤ちゃんの状態を確認しながら看護スタッフと一緒にケアすることで、分娩から産後の赤ちゃんのケアまでスムーズにサポートできるようにしています。
産後ケアについて、貴院ではどのような対応をされていますか？
当院には、産後も赤ちゃんの成長を引き続き見守ることで、お母さんに安心感を持っていただきたいという想いがあります。おなかの中にいる時からずっとお子さんの成長を見守ることができるのは、私たちの喜びでもあります。小児科の医師とともに赤ちゃんの状態をフォローし、生後2ヵ月から始まる乳幼児の予防接種にも対応しているため、通常の1ヵ月健診だけでなく、より細かく赤ちゃんの成長やお母さんの悩み、体調に寄り添えるのは、当院ならではの特徴ではないでしょうか。また、産後のお母さんのケアは重要です。産後うつなどメンタルヘルスに支障を来す場合は近隣の専門機関と連携してサポートをしています。さまざまな事情で1日の大半を母親だけで育児しているご家庭も増えているため、状況により、行政の力を借りてサポートすることもあります。今後は地域全体で産前産後を支援することがより求められる時代になってくると思います。
では、妊娠・出産以外ではどのような受診理由が多いですか？
10代から30代の方だと生理痛、月経不順、月経前症候群（PMS）、子宮内膜症など、月経にまつわる困り事で来られる方が多いですね。今は使用可能なホルモン剤が増えてきていますので、低用量ピルや黄体ホルモン、また漢方薬などによるアプローチで症状の緩和をめざします。仕事や学校を休まなければならないなど、普段の生活に支障が出る場合は我慢せずに受診なさってください。もちろんその前の段階で受診いただいても構いません。あとは妊娠をご希望される方も受診されます。当院ではタイミングをとるところから始めて、ステップアップを望まれる方は適した機関をご紹介しています。40代後半くらいになると更年期症状での来院も。そして子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮頸がん、子宮体がんなどの検査で来られる方が多いですね。
子育てしやすい環境づくりで少子化対策と地域活性化を
診療ではどのようなことを心がけているのでしょう。
患者さんは不妊、更年期、月経にまつわる悩みで来院されたり、妊婦さんも赤ちゃんが順調に育っているだろうか、ちゃんとお産できるだろうかなど、皆さん大なり小なり不安を抱えておられます。まずはその不安や悩みに寄り添い安心感を与えられる対応を心がけています。産婦人科は不妊の悩みや外陰部のかゆみ、おりものが多いといった相談しにくい症状で来院される方も多くいらっしゃいます。誰にも相談できず、一人で悩んでおられるケースも多いですから、そういった方の心理面にも配慮しながら、相談しやすい医院であるようにスタッフ一同が心がけています。
実にさまざまな症状を診ておられますが、息抜きされる時間はありますか？
週1回くらいのペースではありますがジョギングをしています。体を動かすとリフレッシュできますのでね。呼び出しがあった時にすぐここへ戻って来られるように近場で走っています。健康のためにも良いと思うので、進んでやるようにしています。分娩は24時間体制ですので旅行をすることなどはできませんが、もしもまとまった休みが取れるとしたら、少し遠出したいですね。
今後の展望をお聞かせください。
父の時代に生まれた赤ちゃんが大人になり、「自分が生まれた病院で出産したいんです」と来られることもあります。2代にわたって携わることができ、心からありがたいことだなと思います。妊娠しやすい、出産しやすい、子育てしやすい環境づくりを少しでも支援することが少子化対策や地域の活性化にもつながると思うので、地域で協力し合える体制づくりにより力を注いでいきたいですね。当院のスタッフは医師や看護スタッフだけでなく、受付事務、環境整備スタッフ、厨房スタッフなど医院全体で話しやすい環境づくりと安全性の確保のための情報共有に努めています。今後も皆さんに安心感を与えられるクリニックでありたいです。ご不安なことなどあれば、お一人で悩まずに相談してくださいね。
