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梅屋敷森田クリニック (大田区/梅屋敷駅)

森田 桂子 院長の独自取材記事

患者の日常生活の継続を目標に、多彩なアプローチで心の健康を守ることに努める「梅屋敷森田クリニック」。森田桂子院長は地域の特性や自身の経験、周りの人との縁などを大切にしながら、さまざまな疾患・ニーズに日々応えている。森田院長が注力するのは予防や軽症段階での治療。受診や相談におけるハードルにも問題意識を持ち、患者さんはもちろん公認心理師など医療に関わる全員の幸せを考えた取り組みにも積極的だ。そんな人柄もあってか、院長のもとには次々と人が集まるようで、取材で語られた話はどれも興味深いものばかり。現在の診療体制や新たに立ち上げたカウンセリングアプリのことなど、時間の許す限り聞いた。

地域との連携力を生かし、新体制で幅広い疾患に対応

クリニックや患者さんの特徴を教えてください。

当院は、私のかつての勤務先である東邦大学医療センター大森病院をはじめ、総合病院が多い地域にあります。診療時は複数の医療機関にMRI検査や入院を依頼できる体制があり、大学の医局の先生方とも引き続き仲良くさせていただいています。また、この近辺にはお子さんが多く、当院にはママさんもよく受診されます。平日は圧倒的に女性の方、土曜は男女半々と、患者さんは働き盛りや子育て中の方が中心ですね。病気としてはうつ病から神経症、ASDやADHDといった発達障害、統合失調症まで幅広く対応しています。さらに空港が近くにあるため、航空関係者や医療職など夜勤がある職業の方の睡眠障害も多く、睡眠時無呼吸症候群の診療にも対応しています。その場合も呼吸器内科と連携しながら検査・治療を実施し、落ち着いたら当院でCPAP療法を受けていただけるよう体制も整えています。

4月からは非常勤の先生も勤務しているそうですね。

はい、より多くのニーズに対応するため、現在は私を含め4人で診療しています。今まで初診の方にお待ちいただく場面が多く申し訳なかったのですが、新体制となってから早めにご案内ができつつありますね。火曜担当の先生はベテランなので睡眠時無呼吸症候群の治療や栄養・食事に関する指導、ADHDの診療などもお願いしています。木曜担当の先生は、中学・高校・大学の後輩です。寝ぼけのような目立たない症状を伴うてんかんの治療のほか、妊婦さんのうつの診療も可能で「できれば女性医師がいい」と希望される患者さんにも違和感なく診療できる先生です。そして月2回、土曜に来てくださる先生は、特殊なカウンセリングが必要なアルコール依存症の治療の経験に加え、神経内科での臨床経験もあり、専門的な治療にも対応ができます。それぞれ専門も異なるので、より幅広く対応できるのも新体制の強みです。

スタッフさんはどんな方が多いのでしょうか?

公認心理師は全員女性で、人生に関してもベテランです。受付や看護師も女性で、スタッフには患者さんの話をよく聞くことと、聞いた話を正確に伝えることを心がけてもらっています。診療中、私は目の前の患者さんに集中しているため、かかりつけ患者さんから電話でお問い合わせがあった場合はスタッフが聞き取りを行い、私の指示を仰ぎに来ます。そこで内容が変わってしまっては困りますので、相手が何を求めているのかを把握してほしいと伝えています。ただ、初めこそ自分から呼びかけていましたが、今では長年勤務しているスタッフが新人教育の際に代わりに指導しています。几帳面な性格の受付も業務上の抜け・漏れをカバーしてくれて、本当にありがたい限りです。

アプリという相談窓口を設け軽症段階での介入をめざす

先生の得意分野について教えてください。

私はもともと統合失調症の予防の研究に携わっていました。治療を求めているにもかかわらず、「ごく軽症なので受診が不必要と言われた」などさまざまな理由で通院につながらない方をたびたび見かけ、何とかしたいと思いました。少し背中を押して治療すれば、社会で勉強や仕事を頑張れるようになるかもしれない。そんな方を応援するのが好きなんですよね。だからこそ、私が関心を強く感じるのは軽症患者さんで、過去には保健所、児童相談所での仕事のほか、大学医学部で学生相談も行っていました。スーパー救急病棟にもいた時期もありキャリアの振り幅は広いのですが、メインに据えたいのはカウンセリングマインドで、当院でも予防や再発予防に注力しています。日常生活を中断せずに仕事や学業、育児を続けられるよう、最初に不調を感じた時点で介入したいと考えています。

診療で大切にしていることは何ですか?

患者さんが困ったとき、どの相談窓口を利用すれば良いのかを明確に示すことです。例えば無料の電話相談ダイヤルの利用経験のある方も多いとは思いますが、お盆やお正月には需要供給バランスが崩れるようで、当院の患者さんへのアンケートでも「緊急で相談したいときに電話がつながらなかったことがある」と回答した方は予想以上に多かったです。一方、さまざまな窓口がある中で無料のカウンセリングに人が殺到するのも問題で、休日を削って過剰に労働している公認心理師の姿も目に浮かびました。公認心理師は女性が多く、子育てといったライフイベントがある方もいらっしゃいます。そこで、患者さんの安心と公認心理師の負担軽減につながる方法はないかと考え、立ち上げたのがカウンセリングアプリです。

カウンセリングアプリについて、ぜひ詳しく教えてください。

患者さんと公認心理師のいる場所をオンラインでつないで相談できるシステムで、決済機能もついています。公認心理師側は働きやすく、患者さん側は話を聞くプロに交通費不要で相談ができますので、ぜひご活用いただきたいです。家族がうつになると支える側にもストレスがかかりますので、対応の仕方をご相談いただくこともできます。ほかにはお子さんの不登校などでお悩みの親御さんが、メンタルヘルスについてもっと学ぶために利用していただくこともできます。さらに海外にも対応しており、家族の赴任先で出産した方の産後うつや、留学中の適応障害についての相談も可能です。

その人にとって無理のない方法で話をしてほしい

これまでのお話を聞いていると、先生の努力や人脈が節々に感じられます。

不思議な話なのですが、初めは開業する気がなかったのに、勤務医の頃は派遣先で看護師さんに「開業したら呼んでください」とよく言っていただきました。なのでいざ開業した時は、声をかけてくれた中でタイミングが合った方に勤務してもらいました。さらに恵まれていたのは、講演会を機に出会ったある税理士さんが「医療機関を開業する人のコンサルティングのファーストケースになってほしいから」と無償で支援してくださったこと。初期のスタッフも、子育てや介護などの事情でお休みは多くほしいけれど、お給料は二の次という方が多かったですね。借金を背負っている駆け出しの身だった当時の私には、みんなの存在が本当に心強かったのを覚えています。

開業医となり、心境の変化はありましたか?

結論からいうと、開業して良かったと感じています。予防に取り組みたくても、大学病院に他院から紹介される時点ですでに服薬などかなり治療が進んでいるケースが多いのです。具合が悪くなるかならないかくらいの段階で患者さんに出会うには、街中でクリニックを構えていたほうがいいですね。より専門的な検査が必要であれば大学病院に紹介し落ち着いたら戻ってきてくださいねと言える環境もありますので、普段は当院に通っていただいてお話ししたいと思います。一見よもやま話をしているようでも、雑談の中からメンタル的に困っていることやニーズを拾い上げられることもあるんですよ。

今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

機器や治療法を含め、時代に追いついた医療の提供は重要だと考えています。また、一つの分野の専門性を掘り下げることも大事ですが、ある治療の適応患者さんばかりが受診するわけでもありません。クリニックであるからには、今後もなるべく幅広く、可能であればワンストップで対応していきたいですね。もし薬を使うほどではなく受診のハードルも高いと感じるのなら、アプリで公認心理師に相談するのも良いと思います。あと、医療機関の選択は患者さんの権利ですので、ご自身に合わないと感じた場合は気兼ねなく受診先を変更いただいて構いません。具合が悪くて通院しているのに、通院でストレスをためてしまってはいけませんからね。

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