皮フ科イガラシ医院 (北区/赤羽駅)
五十嵐 勝 院長の独自取材記事
東京メトロ南北線、赤羽岩淵駅1番出口からほど近い「皮フ科イガラシ医院」。1930年開院の歴史ある同院は、幅広い年齢層の地域住民に親しまれ、家族ぐるみで通院する患者も多いという。「祖父が開院し、私で3代目ですから、世代をまたいで通ってきてくれる患者さんも多いんです」と話してくれたのは、五十嵐勝院長。大学病院で経験を重ねた後、生まれ育ったこの地に戻って来た。日々の診療や休日の往診、勉強会などへの参加で忙しい毎日を送る五十嵐院長に、診療の際に大切にしていることや同院の特徴など、たっぷり話を聞いた。
患者と二人三脚で治療を進める
1930年開院と、長い歴史のある医院なのですね。
祖父の代に開院し、この場所では55年ほどになります。その前はここから少し離れた所にありました。医学生と勤務医の時を除いて、小さい頃からずっと赤羽に住んでいますが、昔とだいぶ変わりましたね。新しい建物が建ち、駅前もガラッと変わりました。どんどん発展して最近は若い家族が増え、子どもの患者さんも少なくありません。もちろん昔からの住民も多いので、患者さんも顔なじみが多いですよ。町内で買い物に出かければ誰かしらに出会います。そんなふうに患者さんと生活背景をともにしながら治療を提供できるというのが、地域医療の最大のやりがいではないかと思っています。
どのような患者さんが多くいらっしゃいますか?
以前から住んでいる人が多く、乳児から高齢者まで幅広い年齢層の方が通ってきています。周辺地域を中心に、埼玉など近県から来られる方も多いですね。お子さんもいらっしゃるのでキッズスペースを設置しています。疾患としては、アトピー性皮膚炎や乾癬などの慢性疾患から、湿疹や虫刺されといった一般の急性疾患まで一通り診ています。赤ちゃんは乳児湿疹やおむつかぶれなどがほとんどですね。皮膚科の症状には季節性があり、冬は乾燥による湿疹、夏は虫刺され、水虫、あせもなどの湿疹が増えます。
診療の際に大切にしていることなどありましたらお聞かせください。
患者さんのお話をよく聞いた上で、わかりやすく説明して理解してもらうことを大切にしています。皮膚科で主役となる塗り薬は、患者さんが自分で塗布しますが、毎日続けるのはなかなか大変です。手がべたべたしますし、場合によっては服を脱がなくてはいけません。広範囲だったり手の届かない場所だったりすれば、なおさら面倒でしょう。特にステロイドは症状や場所に応じた強さがあるため、慢性のアトピー性皮膚炎のように長く使う際には、自分で判断して薬を使いこなし、湿疹をコントロールしていけるような工夫もします。そういう意味でも、患者さんは「何のためにその薬を塗るのか」を理解する必要があります。治療方針の決定に患者さん自身が積極的に参加し、その決定に沿って治療を受けることを「アドヒアランス」と呼ぶのですが、そうした考え方を患者さんと共有し、医師が一方的に決めるのではなく、二人三脚で治療を進めることを心がけています。
地域医療で大きな病院と変わらないレベルの治療を
医師になったきっかけについてお聞かせください。
最初に少し触れたように、祖父が皮膚科の医師で、90年ほど前に当院を開院しました。私は父を2歳の時に亡くしたこともあり、子ども心に祖父を尊敬していました。ですから医師、それも皮膚科の医師になるというのは自分にとって当然の成り行きでした。生まれ育った環境もそうですが適性も祖先から引き継いでいるとすれば、そうした流れに従って職業を決めるというのもあながち間違った話ではないのではないかと思っています。
実際に皮膚科の医師になっての想いをお聞かせいただけますか?
1993年に東京医科大学を卒業し、同大学の皮膚科学教室に入局しました。東京医科大学霞ヶ浦病院や東京医科大学八王子医療センターなどでの勤務を10年ほど重ね、この地に戻ってきました。通常、内科であれば大学病院とクリニックとでは扱う疾患の範囲や重症度が異なります。大学病院ではクリニックにはない大がかりな機器を駆使して診断することがよくあります。しかし皮膚科というのは医師の目がしっかり鍛錬されていて、確かな「診断眼」を養っていれば、クリニックでも重篤な疾患の早期診断につなげられます。そういった意味では、これまで学んできたことを糧として、現在の診療に生かせているといえます。
診療で力を入れていることなどありますか?
医学は日進月歩といわれますが、診療の基本が急に大きく変わることはありません。ただ、新しい機器が出たら導入を検討するなど、建物は古くても、できる限り機械は新しくするようにしています。当院が注力する分野の一つとして、皮膚外科手術があるでしょうか。ほくろや粉瘤、それ以外の良性の腫瘍などが手術で除去可能です。診療の際には、ダーモスコープというほくろや悪性腫瘍などを見極める拡大鏡を使っています。保険適用ということもあり頻繁に活用しており、悪性や重症のものを見つけたらスムーズに大学病院などにご紹介します。そのためにも普段から研究会や勉強会、地域の皮膚科同士、また他科の医師の集まりなど、さまざまな会合に参加してつながりを持つようにしています。「皮膚は内臓の鏡」という言葉があるとおり、内臓疾患の症状が皮膚に現れ、重要な病気が見つかることも珍しくないため、内科をはじめ、他科の医師と交流を持つことは大切です。
予約システムや院内処方など、さまざまなニーズに対応
紫外線療法を行っているそうですね。
紫外線療法は、皮膚疾患への作用が確認された波長域の紫外線を患部に照射します。乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑、掌蹠膿疱症、円形脱毛症などに対して行う保険適用の治療です。当院では、ナローバンドUVBに加え、最近エキシマライトも導入し、2つの機器を用途に応じて使い分けています。ナローバンドUVBは広範囲に数分単位で当てられ、エキシマライトは狭い範囲に数秒単位で集中的に照射していきます。両方とも、塗り薬や飲み薬に加え、第3の治療法としてお勧めしています。まずは週1~2回程度から始め、徐々に期間を空けて照射していきます。1つの強い薬で抑えこむと副作用が強くなる恐れがあるため、弱い作用のものを複数重ねることで、それぞれの副作用も少なくて済むというのが、治療の基本的な考え方です。薬と紫外線療法を併用することでより良い作用が見込め、副作用は少ないとなれば、安心して長期間継続できるのではないでしょうか。
その他、こちらの医院の特徴などありましたら教えてください。
近年はさまざまなアレルゲンに反応する方が増え、複数のアレルギー検査を希望される方が多いです。当院では約20分でアレルゲンを調べることが可能な検査や、重要なアレルゲンを一度に測定する検査などを行っています。アレルギーには、すぐに反応の出る即時型と、時間をおいて発現する遅延型があり、遅延型アレルギーもパッチテストで調べています。また、巻き爪や陥入爪の患者さんも多いですね。ワイヤー法、ガター法、アクリル人工爪装着法など多様な治療法があり、できるだけ痛みが出ないように工夫しています。他には、診療面で可能な限り行っているのが往診です。ずっと通ってくださっていた患者さんがご高齢で来院できなくなることがあり、ご家族の相談を受けた時などできるだけ対応しています。なお、当院では院内処方を行っていますので、会計時に薬も出すことができ、患者さんには便利だと思います。
最後に、読者にメッセージをお願いいたします。
当院はご家族で通われる方も多く、お子さんが診察を受けたついでに、親御さんやごきょうだいを診ることもできます。思春期のニキビや女性の大人ニキビの悩みも気軽にご相談いただきたいですね。薬を出すだけでなく、なぜニキビができるのかを一緒に考え、化粧品の相談にも乗っています。合わない化粧品が原因で、肌質が脂性の人であれば吹き出物ができたり、乾燥肌の人だとかぶれたりすることがあります。ただ、「化粧品を変えてください」と言われても、どうしていいかわからないと思いますので、一人ひとりの症状や肌質に合わせたわかりやすいアドバイスを心がけています。皮膚科は塗り薬が多いですが、具体的に正しい使い方をお伝えできるベテランの看護師がおり、患者さんをサポートしているのも当院の強みです。予約システムを導入して待ち時間の軽減にも努めていますので、どんなことでもご相談いただければうれしいです。