おおとファミリー歯科室 (大垣市／大垣駅)
大音 博之 院長の独自取材記事
県道50号線沿いに位置する「おおとファミリー歯科室」は開業以来、クリニック名にあるとおり「家族を丸ごと診る」を追求し、「地域とともに」をめざすクリニックだ。院長を務める大音博之院長は、開業前の20年以上にわたる勤務医時代は、治療リスクの高い有病者や入院患者の治療に深く従事してきた。そして長きにわたる経験の中で地域医療の重要性を強く感じ、開業を決意したという。「二次医療機関との橋渡し役を担いつつ、地域の中でできる限りの診療を実践していきたい」と語り、将来的には訪問歯科診療にも取り組んでいきたいと意欲を示す大音院長。取材を通して、診療でのこだわりや地域医療にかける思いを語ってもらった。
病院勤務の経験から感じた、地域医療の担う役割
長らく総合病院の口腔外科で研鑽を積まれてきたそうですね。
愛知学院大学歯学部を卒業後、名古屋第一赤十字病院や碧南市民病院で研鑽を積み、大垣市民病院には10年ほど勤務していました。父が口腔外科を専門としながら歯科医院を開業していましたから、自然と同じ道に目が向いたのでしょう。医療に携わる以上は患者さんの全身を含めて診られるようになりたいと考え、口腔外科の道を進みました。勤務医時代は入院中の患者さんの手術や有病者の口腔内の治療に加えて、救急科外来で外傷の治療に携わるなど、外科治療に特化した経験も積んできました。また、病院によっては一般歯科治療にも携わることがありましたから、歯科と口腔外科を横断してスキルを磨けたのではないかと思います。時には内科などと連携して治療を行ったり、診療中に耳鼻咽喉科領域の疾患を見つけたりと、医科と連携して診療する機会も多かったですね。さまざまな疾患や、治療で用いる薬の知識が身についたのは、口腔外科ならではと思います。
開業に至った経緯を教えてください。
実は、もともと開業するつもりはなかったんです。ただ、勤務医を続ける中で「退院後の口腔内の管理をどこへお願いしたらいいかわからない」「持病があるから歯科医院にかかりづらい」といった患者さんの声を多く耳にしていました。また病院へ送られる患者さんの中には、持病があるにせよ町のクリニックでも十分治療できると思える病態の方も少なくありませんでした。確かに有病者の治療は配慮が必要な点も多々ありますが、今後高齢化がさらに進めば何かしらの持病を抱えている方の治療や口腔内のケアも、地域医療が担っていくことと思います。そんな将来を見据えた際、可能な限り地域の中で治療を完結し、必要に応じて患者さんを迅速に二次医療機関へ送り届ける「采配役」が求められるのではないか。そして長く病院勤めをしてきた自分だからこそ、できることがあるのではないか。そんな思いに至り、開業を決めました。
クリニックづくりでこだわった点は何ですか？
クリニック名にあるとおり、小さなお子さんからご年配の方まで、誰もが足を運びやすいようにと、堅苦しさのない雰囲気づくりを意識しました。また診療スペースは、あえて半個室仕様にしています。プライバシーの観点で言えば個室が良いのかもしれませんが、治療中の患者さんの異変に気づきにくくなってしまいます。ある程度オープンな環境であれば、ご年配の方がむせかえったり、有病者の方であれば急変が起こったりした際すぐに気づいて応対できますからね。僕が治療やカウンセリングをしている最中も院内の診療の様子が感じ取れるようにしています。
客観的な見解をわかりやすく解説し患者の理解を深める
院長が得意とされていることは何ですか？
患者さんのお悩みを客観的に評価しつつ、患者さんの全身状態に目を向けながら適切な治療を検討する、といったところでしょうか。治療は通り一遍なものではありません。患者さんが他の疾患の治療中だったり、妊娠中だったりと、全身状態も含めて「今、すべきことは何か」を判断し、対応を検討していかなければいけないと考えています。時には、主治医とやり取りして休薬や減薬なども含めて相談する必要もあるでしょうから、医科との連携も欠かせないものでしょう。こういった広い視野は、これまで有病者の方や病気の度合いがさまざまな患者さんをたくさん診てきた中で培われたものの一つですし、診療における僕の強みですね。
診療ではどのようなことを心がけていらっしゃいますか？
じっくりと悩みに耳を傾け、丁寧に解説して患者さんの理解を深めることですね。「診察」と聞くと治療台をイメージされるかもしれませんが、当院ではまずカウンセリングルームでお話をお伺いして、その場で簡単に口腔内を診させてもらってから、必要があればエックス線検査や口腔内診査に移ります。患者さんそのものを捉えるためには、お話を聞くことが非常に大切なんです。そうすることで次にどんな対応が必要かを判断できますからね。初診では45分～1時間程度かけてカウンセリングを行っています。また、お子さんのお口の中を診る際はお母さんと僕が膝を突き合わせて、その上にお子さんに寝転んでもらうこともあります。
ご家族で同じクリニックにかかれるのも、安心感につながるものと思います。
そうだとうれしいですね。僕にとってかかりつけ医とは「家族みんなを診るもの」ですから。そして家族を診るからには、治療の正確さももちろんですが、できるだけ皆さんに安心してかかっていただけるよう努めなければいけないと心にとめています。例えばお子さんの治療時の様子を親御さんにお伝えするなど、ご家族の橋渡しをするのも大切だと思っています。親御さんにとっては「子どもが泣いたらどうしよう、迷惑をかけていないだろうか」と悩まれることもあるでしょうし、そこで「大丈夫でしたよ」「おりこうさんでした」とお伝えできたら、安心につながるのではないでしょうか。最近ではご家族でかかられる患者さんや、ご親類や親しいお知り合いを紹介してくださる患者さんも増えてきつつあるように感じていて、ありがたい限りです。
口腔内の悩みに向き合う「町のよろず屋」をめざして
改めて、どんなクリニックに成長していきたいとお考えですか？
お口のことなら何でも相談できる「町のよろず屋」として、皆さんに頼っていただけるクリニックになっていきたいですね。僕にとって治療の第一歩は悩みを打ち明けてもらうこと、そしてその悩みを取り除いてあげることだと考えています。過去にも、お悩みに対して考えられる原因をお伝えし、経過観察しましょうとお話ししたところ、安心感からか症状が改善に向かったケースがありました。客観的な視点から「大丈夫ですよ」と伝えることも、大事ですし、それがよろず屋の役割ではないでしょうか。もちろん、がんなど大きな病気が見つかったら信頼のおける医療機関へ送り届けますし、その際の不安をなるべく減らし、次の医療機関にかかってもらえるよう優しく、かつ、しっかりと背中を押してあげたいと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
ゆくゆくは訪問歯科診療に取り組んでいきたいと考えています。実は初めに開業を意識したのは、訪問診療をしたいと思ったからなんです。退院後のお口の治療やケアに対して不安をこぼす患者さんをたくさん目にする中で、寝たきりや通院困難な方など、クリニックに通うのは難しいけれど歯科診療を求める方は少なくないと感じました。それもあって開業を考えたわけです。そういった意味ではまだ当初のきっかけには着手できていませんが、ファミリー歯科室と銘打って開業したからこそ、ご家族を丸ごと診られるようになり、地域のかかりつけクリニックとしての診療に非常にやりがいを感じています。
読者へのメッセージをお願いいたします。
歯科医師の親のもとで育ち、今は地域の中で診療に携わる僕が言うのもなんですが、実は小さい頃から歯医者さんはすごく苦手なんです（笑）。だからこそ患者さんが嫌だな、抵抗感があるな、と思う気持ちはすごくわかりますし、そのお気持ちを軽くできるような診療をめざしていきたいと思っています。どこへ相談したらいいかわからない、こんなことで相談しても大丈夫か迷ってしまう、といった場合にも、どうぞお気軽にご相談ください。
