山本 祐介 院長の独自取材記事

視能訓練士も在籍。小児眼科をはじめ幅広い診療に対応

どのような患者さんが来院されているのでしょうか。

この辺りは住宅とオフィスが共存しているエリアで、しかも当院は商業施設の2階ですから、それこそ乳児から90代の高齢の方まで、幅広い年代の方がさまざまな主訴で来院されます。特に目立つのは子どもの患者さんです。地域の傾向としてお子さんが多いことはわかっていましたので、開業当初から、眼科検査や小児眼科のスペシャリストである視能訓練士が在籍しています。これまでの病院が遠方だったり、予約が取りづらかったりして、治療が中途半端な状態で止まってしまっているお子さんの助けにもなれたらうれしいですね。

楽しい雰囲気の院内で、お子さんも受診しやすそうですね。

子どもが怖がらずに検査をしてくれる親しみやすい雰囲気になるようにと、明るさを意識し、外壁などは海をイメージしています。また、この地域は電柱がなく、どこからでも空が抜けて見えるので、検査を行う部屋の天井も高くして空を描きました。子どもの検査を行うスペースに関しては、子どもと接するのが得意な視能訓練士にお任せしているんですよ。かわいらしいイラストで注意を促したり、キャラクターの顔を切り抜いて持ち手につけたボールペンを使ったりと、「さすがだな」と思わせるアイデアが光りますね。見せてくれそうであれば優しく手早く、嫌がるようであれば早めに切り上げるといった切り替えや説得も上手です。子どもが怖がってしまっては検査も治療も進まないので、非常に助かっていますし、信頼しています。

どのようなきっかけで受診するお子さんが多いのですか？

弱視、斜視の疑いで小児科からの紹介や学校での検診の後に来られる方が多いです。あとは小学生になってからの近視ですね。結膜炎など別の症状で来院された時に視力検査をして見つかるケースも多いです。お子さんは見えていないことを自覚できません。特に片目が弱視や近視の場合は気づきにくく、検診でも見過ごされてしまう場合があります。弱視の治療は4歳から始めるのと7歳から始めるのとでは結果がまったく違ってきますから、4歳までに一度は眼科で検査を受けたほうが安心です。小児眼科は、お子さんが自覚していない症状を見つけてあげるのが重要だと思っています。

近視や、緑内障の早期診断・早期治療に注力

近視の患者さんでオルソケラトロジーを選択する方は増えていますか？

増えていますね。2017年12月に日本コンタクトレンズ学会のガイドラインが改訂され、20歳以上とされていたオルソケラトロジーの年齢制限がなくなったこともあり、お子さんから30～40代の方までいらっしゃっています。オルソケラトロジーは寝ている間に特殊なコンタクトレンズを装着する近視矯正法で、日中は裸眼で過ごせますし、レーシックと違い治療が合わなければすぐにやめられるというメリットがあります。ただ、年齢制限はなくなりましたが、未成年には慎重処方とされていますので、当院では安全性に配慮するとともに、レンズを2種類用意して角膜のカーブの度合いなどによって選択肢を増やしています。そのほか、最近の報告で太陽光の紫の光が近視を抑制することがわかっていますので、外遊びが重要だというお話もしています。

年配の患者さんも多いそうですね。

白内障や緑内障、もしくは「見づらい」と来院される方が多いです。失明原因第1位とされている緑内障は、悪くなってから完治させる治療法はなく、しかも末期近くになるまで自覚症状はないため、緑内障に罹患している人の9割はそのことに気づいていません。ほかの治療のついでにたまたま検査をして緑内障が見つかったという人はたくさんいます。今や40歳以上の20人に1人は緑内障だといわれていますから、40歳を過ぎたら一度は検査することをお勧めします。当院で導入している光干渉断層計（OCT）であれば、来院したその日のうちに診断がつけられるので、検査をしたことがない方にはご相談いただきたいですね。治療は点眼薬がメインですが、眼圧が下がらない場合などは専門の病院をご紹介しての手術も可能です。たとえ当院ではできない治療法であっても提案できるものは提案し、適切な病院をご紹介する方針は緑内障に限りません。

ドライアイの新しい治療にも取り組む予定だとか。

働き世代に多いドライアイについては、従来、患者さんごとの涙のタイプに応じた点眼薬による治療や、涙の排出口である涙点を閉じて涙の流出を抑えるための涙点閉鎖という治療が行われてきました。最近注目されているのが、マイボーム腺の詰まりにマイルドな光を当てて涙を流れやすくする治療で、当院も導入予定です。自費診療になりますが、今までの治療では治らなかった方も改善が見込める可能性があります。どの治療が適しているかは専門的な診断が必要ですのでご相談ください。

知識と技術を磨き、ライフスタイルに合った治療を提供

大学病院では角膜移植に携わっていらしたそうですね。

中高一貫のカトリックの学校に通っており、聖書の授業で「人はそれぞれの能力に合わせて社会貢献しなければならない」と教わりました。僕はキリスト教徒ではありませんが、その教えが心に残り、自分にできる社会貢献の一つとして医師の道を選びました。角膜移植の分野に進んだのは、まさに失明寸前の状態だった方を助けることができるという貢献度の高さに意義を感じたこと、患者さんやドクターに加えてドナーの方がいて成り立つ「助け合う医療」であることに感動したからです。当院は近隣の大学病院と連携しており、症状に応じて適切な医療機関への紹介も行っています。非常に優秀な先輩、後輩、同僚に恵まれ、さまざまな分野で相談できるドクターがたくさんいますので、病診連携が充実し、非常勤医が高い専門性を持った先生方であることも当院の強みだと思っています。

ところで、休日は何をなさっていますか？

開業当初は、電子カルテのファイリングシステムの構築や、治療法などの知識を得る勉強が趣味のようなものでしたが、最近は料理と食べることが楽しみで（笑）、本格的なカルボナーラなどいろいろ挑戦しています。あとは新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、勉強会などがオンラインで受けられるようになりました。「もっと良い治療法があるのに、自分の勉強不足のために提案できない」というのは患者さんの不利益になりますから、知識を常に最新のものにアップデートし続ける努力は怠らないようにしたいですね。

今後の展望についてお聞かせください。

人間は外からの情報の多くを視覚から得ているといわれ、目は生活に欠かせないものです。そのため、治療にあたっては、車を運転するか、よく本を読むかパソコンを使うかなど、患者さんが重視しているものを知る努力をしなければなりません。併せて、根本的に治療したいのか、そこそこでいいのか、患者さんが求めている医療を聞き出すことも重要です。患者さんのライフスタイルに合わせた治療を提供し続けるため、知識と技術の向上に努めていきたいと考えています。

読者へのメッセージをお願いします。

新型コロナウイルス感染症の流行が続く中で、受診を控える方も多いようですが、何か症状があればもちろん、何もなくても定期的な眼科検診は大事です。お子さんの場合は特に、お母さんが自己判断せず、何かおかしいなと感じたら気軽に相談してほしいです。「これを聞いちゃ駄目かな」とか、まったく気になさらず、気になることがあればぜひなんでも聞いてください。また自覚症状のない緑内障は、発見の遅れる方が増えているように思います。早くから兆候を見つけて予防や治療を始めれば比較的コントロールができる病気ですので、40代以上の方は、ぜひ眼科を受診してください。