ライオン歯科医院 (名古屋市中川区／ささしまライブ駅)
高橋 知多香 院長の独自取材記事
名古屋高速臨界鉄道あおなみ線の開通に伴い、開発が進み街が様変わりした中川区百船町。ホテルや大学、マンションが立ち並び、「ライオン歯科医院」もマンション1階にある。この地区で生まれ育った高橋知多香（たかはし・ちたか）院長は、「地域に貢献したい」との思いから、開業を決めたという。大学院時代から訪問歯科診療に携わり、その必要性とやりがいを感じているという高橋院長。自分の歯で噛めることは、体の健康のためにも大切なことだからこそ、地域の高齢者からの要望に応えようと奔走する毎日だ。一人ひとりの診療時間を十分に確保することで、患者の話をしっかり聞き、納得できる治療をと心がける毎日。訪問診療にかける思いや診療時に心がけていることをたっぷりと聞いた。
誰もが通いやすい歯科医院に
歯科医師になったきっかけと、開業までの経緯を教えてください。
子どもの頃から医療に関係する仕事に就きたいと思っていました。人が生きていくためには、衣食住の3つが必要なわけですが、歯科医師というのはその中でも食の部分に大きく関わり、人の健康に重要な役割を果たしています。自分が子どもの頃、歯科医院にお世話になることが多かったのも、進路を決めるきっかけになっていると思います。僕は中川区出身なので、地域に貢献したいという思いもあり、ここでの開業を決めました。「ライオン歯科医院」というクリニック名は、実は開院前から決めていたんです。動物が好きで、その中でもライオンに惹かれるんですよね。訪問診療用の車にもライオンのイラストが描かれているので、わかりやすいと思います。
来院されるのは、どのような患者さんが多いのでしょうか？
この周辺は最近ずいぶん変わった地区で、マンションが多く建ったこともあり、近隣の方をはじめとする成人の患者さんが多いですね。それから、先ほどもお話ししたように、木曜と診療日の昼休みを使い訪問歯科診療を行っているので、そちらは高齢者の方が中心です。日曜には平日忙しい学生さんも来院されますね。最近名古屋駅にオフィスビルが建ったこともあり、仕事帰りの方の来院も増えているように思います、平日は19時30分まで診療しているので、就業後でも十分間に合うと思います。それから、以前通院していて今は遠くに引っ越された患者さんで、「名古屋へ来る用があったから」と今も通い続けてくださる方もいて、変わらず頼ってもらえるのはうれしく思っています。
日曜診療を始めたきっかけをお聞かせください。
初めは日曜診療は対応していなかったんですが、患者さんからの要望もあり、現在は第二・第四の日曜日9時～13時まで診療をしています。患者さんが予約を取る時に「日曜は休診だよね」という残念そうなお声を聞くことが多かったんですね。開業した当初は休診だったんですが、僕自身の中でも「これで良いのかな」という思いがあり、日曜診療を始めました。結果としては、やはり日曜診療を希望される患者さんが多く、現在は予約がいっぱいになってしまう傾向にあり、次回予約が少し先になってしまうことがあるんです。ですから、今後は休診日や日曜の診療時間を延長することも検討中です。患者さんがより予約を取りやすく通いやすいようにしていければと思っています。
積極的に訪問診療を行い、高齢者の口腔ケアに注力する
先生が得意としている治療について教えてください。
僕は大学院で歯内療法科に属していたんですが、これは歯の神経の治療に関係する科です。虫歯が進んでしまった時に神経を取ったり、一度治療した歯の根の部分に膿がたまった時に治療したり、そういうことを専門に学んでいました。ですから、歯の根の治療には、特に気を配り丁寧な治療をするように心がけています。具体的な方法として、歯の根の治療をするときは、治療する歯に金属のバネをひっかけ、その上にゴムのマスクをつけて治療しています。患者さんは、治療の間ずっと口を開けているのは疲れてしまい、どうしても途中で口を閉じてしまうことがあるんです。そうすると、せっかくきれいにした歯の根の部分に唾液が入り細菌が入ってしまう。このマスクをつけることで歯の根に細菌が入るのを極力防ぐことができるので、治療精度を上げることにもつながり、患者さんのつらい思いも減らすことができると思います。
訪問診療にも注力されていますが、始められたのはどのようなお考えからでしょうか？
大学院時代から訪問診療には携わってきました。先輩から「手伝ってほしい」と言われたのがきっかけですが、僕自身もすごくやりがいを感じ、当院では開業と同時に始めました。これから高齢化が進むにつれて、訪問診療はますます必要になると思います。実際に訪問し、口の中を診せていただくと、患者さんによっては「しばらく歯磨きをしていない」という状態の人もいて、どのくらい放っておくとこんなに悪くなってしまうんだろうと思うほど口の中が崩壊してしまっている方もいらっしゃいます。入れ歯も合っていないから外してしまい、歯がない不自由な状態で食事をしている方もいらっしゃるんです。僕が訪問診療することで、そういう患者さんを少しでも減らしていければと思います。
実際に訪問診療に行き、感じることがあれば教えてください。
現在、高齢者の死亡原因で多いのが誤嚥性肺炎だと言われています。口の中の食べかすや汚れが間違って肺に入ってしまうことが誤嚥性肺炎につながることも多いんです。ですから、僕たち歯科医師が口の中をきれいにして差し上げることで、少しでもそういう危険が改善されればと思います。院内で入れ歯を調整するのに比べ、訪問先で行うのは機械や材料などの運搬も含めて大変なんですが、お口の中がきれいになり、しっかり噛めるように導くことで、患者さんから「ありがとう」と言われると、すごくうれしいですしモチベーションも上がります。高齢の患者さんは自分で歯磨きを行うことも難しい場合があるので、施設のスタッフの方たちに歯磨きの仕方などの口腔ケア講習も行っています。
患者の話をじっくり聞いた後、丁寧な説明と治療
先生が診療の際に心がけていることは何ですか？
当院では、一人の患者さんの予約枠を最低でも30分取るようにしています。やはり患者さんとじっくりお話をすることで、患者さんの希望などいろいろわかることもありますし、治療方法についてもきちんと説明させていただき、納得して治療を受けていただけると思います。時間に追われて流れ作業のようになって治療が雑になることはあってはならないですし、僕自身も急かされるのは嫌なので、じっくり時間をかけて治療するように心がけています。ですから、診療中に治療以外のお話をすることも多いんですよ。中には僕の体調を気遣ってくれる患者さんもいて、親しみを持っていただけてるかな、と感じています。
院内の感染対策にも注力されていますね。
開業前は大学病院で勤務していたので、当院でも基本的には大学病院でやっていた処理の方法と同じやり方で滅菌対策を行っています。今は、院内の滅菌に注意を払っている歯科医院が多いと思いますが、僕も「自分がされたら嫌だと思うことはしないようにする」をモットーに滅菌・感染対策を行っています。患者さんのお口に入るものは、一人ひとり滅菌をかけますし、グローブなどは使い捨てにしています。ですから、グローブの消費量はとても多いですね。患者さんごとに使い捨てるのはもちろんですが、「ドアノブなどに触った時もグローブは取り換えるように」とスタッフにも伝えています。スタッフ全員が共通認識を持って、院内全体で感染対策をしっかり行っています。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
患者さんとお話していると、「歯科医院に行くのは苦手」と思っていらっしゃる方が多いんですね。皆さんの中に「歯科医院は痛いことをする」というイメージがついてしまっていて、それで行きたくないんだと思いますが、早い段階で来院していただければ、麻酔の必要もないですし、神経を触る治療もなく、痛い思いをすることはほとんどありません。「歯科医院が嫌いじゃない」という方は、お口の中がとてもきれいで、痛い治療をする必要がないんですね。ですから痛みや不具合がなくても、3ヵ月～6ヵ月に1度は来院して、定期検診を受けてほしいと思います。歯の治療は重ねれば重ねるほど、高齢になった時に自分の歯を残せる確率が下がってしまいます。「痛くなる前に歯科医院へ行く」という習慣をつけてもらえるといいですね。
