おおくぼ歯科クリニック (京都市左京区/松ヶ崎駅)
大久保 恵子 院長の独自取材記事
地下鉄松ヶ崎駅より徒歩10分の「おおくぼ歯科クリニック」。2001年に院長の大久保恵子先生が開業し、2018年11月に移転リニューアルした。大久保院長の希望を詰め込んだ同院は、インテリアの一つ一つにこだわり、高級感あふれる空間となっている。また、バリアフリーの院内は、北欧型の完全個室の診療室、滅菌消毒設備、キッズスペースなどを備え、動線に配慮。専門性の高い手術に対応できる環境も整えている。診療では虫歯や歯周病の治療はもちろん、健康な口内環境を維持するための予防歯科に注力。ブラッシング指導や、食事に関する指導も特徴の一つだ。「歯を大事にしたいと思う多くの方に来院していただきたいです」と笑顔で語る大久保院長に、予防歯科の重要性や今後の展望について語ってもらった。
虫歯だらけだった幼少期から、予防歯科の重要性を説く
先生が診察で心がけていることを教えてください。
こちらからの一方通行にならないように、患者さんが自ら気づきを得られるような質問をすることを心がけています。なぜなら、言葉にしていただくことで、予防意識の向上につながると考えているからです。そのため、当院で受けていただいた治療や指導を振り返り、口の中にどんな変化が起きたのかを話す時間を設けているんですよ。人と人とのコミュニケーションなので、うまくいかないこともありますが、今後も試行錯誤を重ねて実践していきたいと思っています。
クリニックの診療方針を教えてください。
1つは、検査の規格性を高く保つことです。検査によって得たデータが正確さに欠けていると、適切な診断とその後の治療に影響するという考えから、スタッフ同士で厳しく注意し合いながら取り組んでいます。例えば歯の痛みを訴えて来院されたとしても、エックス線写真は撮るようにしています。患者さんに「自分の歯を守る」という意識を持っていただく点でも、まずは口腔内の写真を撮って、ご自身の歯の状態を理解していただいています。もう1つは、治療前に口腔内のクリーニングをすることです。ブラッシング方法を一緒に練習したり、歯石を除去したりして、口腔内の虫歯菌や歯周病菌が少ない状態にしてから治療を開始します。菌が多い状態のまま治療しても、再発の可能性が高くなるため、この順序は必ず守るようにしています。
予防歯科に取り組もうと思った理由をお聞かせください。
一番の理由は、私自身が子どもの頃から虫歯が多かったことです。毎日歯磨きをしていても何度も繰り返し、同様の家族を見て遺伝かと諦めかけていたのですが、高校生の時に巡り合った歯科医院でブラッシング指導をしてもらったことをきっかけに、自分の歯に興味を持つようになりました。そして、歯科医師になってしばらくして、山形県で予防歯科に取り組んでおられる先生と出会ったのです。それ以降、歯科疾患から歯を守る方法を一生懸命勉強しましたね。予防歯科を始めてから15年以上たちますが、当初は患者さんから「早く治療に移ってほしい」、「いつまで歯磨きを練習させるのか」とお叱りの言葉を受けました。一進一退を繰り返しながらも予防歯科の大切さを伝え続け、今に至ります。ブラッシングに限らず、食事や生活習慣といった根本的な原因を見直すこと、そして長期的な目線で取り組むことが大切だと考えています。
診察前のカウンセリングも予防歯科につながっているのですね。
そうですね。歯を削ることを患者さんが希望されていても、まずは虫歯になった理由や悪くなった原因をきちんと説明して納得していただかないといけません。虫歯や歯周病の原因となる菌を口腔内に残したまま削ったり詰めたりしても、周辺の歯が悪くなるリスクを増やすだけ。ですから、原因を解決してから治療することをお伝えします。患者さん自身が将来的にどのような口内環境をめざすのかという話をしないと予防につながらないため、時間をしっかり設けて話すことが大切です。最初はただ削るだけでいいと思っていても、話を進める中で患者さんの考えも変わるかもしれませんからね。ほかにも、数日内に食べたものを紙に書いてもらうなどして、食生活の指導も行っています。
「行きたい」と思えるクリニックで治療と予防に注力
移転の際にこだわったところをお聞かせください。
以前のクリニックではやりたくてもできなかったことを、できるだけ実現させようと思いました。日本では並列診療が一般的ですが、プライバシー保護の観点から完全個室にして、滅菌消毒設備もこだわって導入しました。また、ベビーカーのまま入れる大きな個室を作ったので、お子さんと一緒に診療を受けていただくこともできるんですよ。あとは、患者さんとスタッフの動線を分けました。動線を別にすることによって、診療中のバタバタした様子が患者さんに伝わらないですし、カルテなども扱いやすくなります。患者さんのプライバシーに配慮しつつ、スタッフが働きやすい環境をつくることにもこだわりました。
治療と予防のフロアを分けたのはなぜですか?
予防を目的に来院される患者さんは治療の必要がありませんから、歯を削る音や、慌ただしい雰囲気から離れていただきたいと思ったからです。そうすることで、自分のお口に集中してメンテナンスを受けていただけますし、リラックスしていただけると思いました。また、「歯が痛いから待ってでも診てほしい」という患者さんとは違い、お仕事の合間に来院される方もいらっしゃいますから、予約時間ちょうどに診察室に入っていただくことが大切です。予約の時間が乱れないように、歯科衛生士が時間管理をしっかりできる環境をつくりたいと思い、「ケア」と「キュア」はフロアごと分けようと思いました。
クリニックの患者層や主訴を教えてください。
小さなお子さんからご高齢の方まで、幅広く来院されます。虫歯や歯周病の治療を目的とされる方に加え、当院が注力している予防歯科を目的に、遠方から来られる方も少なくありません。最近ではセカンドオピニオンを求めて来院される方も増えました。また、お子さんが小さいうちから予防歯科を意識されているご家庭も多く、歯に対する意識が高い地域だと感じています。
幅広い治療で、患者の全身の健康を守りたい
予防歯科のほかに力を入れていることはありますか?
歯周病治療や小児歯科ですね。虫歯に関しては意識が変わってきたと思いますが、歯周病に関してはまだまだだな、と感じています。開業当初は歯石除去やブラッシング指導など、すべて私が行っていたのですが、一連の流れを通して患者さんの口腔内の変化がよくわかりました。それから歯周病治療を学ぶ機会がたくさんありましたし、インプラント治療を行う際にも歯周病の改善は重要なので、設備をそろえて対応しています。予防歯科と聞くと虫歯を連想される方が多いですが、歯周病も対象の一つなんですよ。小児歯科に関しては副院長が担当していて、歯の治療にとどまらず、鼻呼吸を促すトレーニングや離乳食指導などにも注力しています。また、授乳の姿勢が歯並びに影響するともいわれているため、お母さんたちに対するアドバイスも積極的に実施しています。
日々お忙しそうですが、趣味やリフレッシュ方法はありますか?
まだそんなに上手じゃないんですけど、これから頑張りたいのはゴルフですね。時間があったら打ちっぱなしに行こうかなと思っています。あとは、すごく猫が好きで2匹飼っていますが、猫とゴロゴロするのが何よりも楽しくて癒やされます。ペットの食育に関する講座で猫や犬の栄養学や、今のキャットフードの問題点、理想的なごはんなどを勉強して、ペット食育師2級を取得しました。簡単なものですが猫の食事を手作りしたりして、それもすごく楽しいです。
最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
移転して1年。理想のクリニックをつくることができたので、より予防歯科に力を入れていきたいです。そして私個人としては、歯周病治療など、口の中が悪くなってしまった方の治療の精度を上げられるよう、技術を向上させていきたいですね。当院には、自分の歯を大事にしたいと思う方にぜひ来ていただきたいと思っています。悪くなった歯は抜けばいいという価値観は寂しいです。ご自分の歯がある間であれば、治療を経て健康を取り戻し、長く保つことは可能です。予防歯科に興味を持ったら、今の歯の状態に関わらず、気軽に来院してください。