「看護師のボーナスの平均はいったいどれくらいなのだろう?」「転職先を考える上で、ボーナスの高い職場が知りたい!」というように、多くの看護師にとって、「ボーナス」は大きな関心事。
とはいえ、ボーナスの支給の有無や支給額は人それぞれです。ボーナスは仕事に対する意欲やモチベーションアップにつながりますし、転職先を決める際にも重視されやすい要素の一つ。今の自分のボーナス受給金額は多いのか少ないのか、周りはどれくらいもらっているのか、あるいはボーナスのあるクリニックに転職するにはどうしたらいいのかなど、気になっている人もいるかもしれません。
この記事では、看護師のボーナス事情がテーマです。看護師のボーナス平均額や、ボーナスのある転職先の探し方を紹介します。自分のボーナス額がほかと比べてどうなのか、転職先を考える上でボーナスの水準を知っておきたいなど、気になっている人はぜひチェックしてみてください。
<目次>
1 ボーナスってどういう制度?
ボーナスとは、毎月の固定給とは別に労働の対価として支払われる給与のことで、「賞与」や「特別手当」とも呼ばれます。法律で義務づけられている制度ではなく、あくまで福利厚生制度の一つなので、ボーナスのない職場も珍しくありません。
●看護師のボーナスの時期
一般的にボーナスは年に2回、夏期(6〜8月頃)と冬季(12月頃)に支給されますが、支給の回数や時期、支給額についても雇用主が自由に決めることができるため、ひと口にボーナス制度といってもその内容は職場によってさまざまです。支給額はクリニックや病院の経営状況に左右されるケースがほとんどで、毎年決まった額が支給されると約束されるものではありません。
求人票に掲載される年収はボーナスも含まれた金額のため、複数の求人を比較した際、ボーナスの有無や支給額によって年収が大きく変わってくる場合もあるでしょう。
●看護師のボーナスの手取り額
ボーナスは毎月の給与と同じように、所得税や社会保険料などが天引きされて支給されます(住民税の天引きはありません)。求人票に書かれている「総支給額」と実際の「手取り」が異なる点に気をつけましょう。
手取り額の目安は、総支給額の約8割。詳細の金額は、扶養の有無・人数などによって異なります。手取り額の計算方法は、以下の通りです。
人によって、手取り額は総支給額の75%~85%と幅があるため、手取り額の目安を知りたい人は「8割」と考えておけばよいでしょう。
2 看護師のボーナスの平均額
今の自分のボーナス受給金額は多いのか少ないのか、周りはどれくらいもらっているのか気になる人も多いのではないでしょうか。そこで、厚生労働省が公表している「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、2021年の看護師の平均ボーナス支給額を紹介します。
●看護師の平均ボーナス額は?
厚生労働省の調査では、10人以上在籍しているクリニックや病院で働く看護師について、2021年の1年間のボーナスの平均額は約86.2万円という結果でした。
※出典:厚生労働省「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」
年に2回支給されるのが一般的なことから、看護師のボーナス額は1回につき約43.1万円となります。
●看護師の平均ボーナスの手取り額は?
年間の平均は約86.2万円、1回のボーナスは約43.1万円ということが分かりましたが、ボーナスは社会保険料と所得税が引かれるため、実際の手取り額はこの金額の8割ほど。よって、年間のボーナスの手取り額は約69万円、1回のボーナスの手取り額は約34.5万円といえるでしょう。
3 クリニック・病院の規模(職員数)による看護師のボーナス平均額の違い
クリニックや病院の規模によって看護師のボーナスの平均額に差はあるのでしょうか。「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」では職員数ごとのボーナスの平均額も調べているので、この結果から比較してみました。
クリニック・病院の職員数別での看護師のボーナス平均額(2021年)
※出典:厚生労働省「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」
看護師なら誰でも同じくらいボーナス額を支給されるというわけではなく、その規模が大きくなるほどボーナス額も増える傾向にあるようです。特に1000人以上の職員がいるような大規模な病院のボーナス額はその傾向が顕著に表れています。
なお調査年度は異なりますが、医療機関の開設者別(国立、公立、医療法人など)での収益や賃金を調査した「第23回医療経済実態調査(2021年実施)」(厚生労働省)でも、行政機関や市・県立病院といった地方自治体の運営する大規模病院の看護師について、2020年度のボーナス年間平均額は約99.7万円という結果でした。
この結果からも、大学病院など高度な医療レベルを持つ大規模病院は、ボーナスの水準が高い傾向にあると読み取れます。
4 看護師のボーナスの額を上げるには?
看護師のボーナス支給額は、勤務先の取り決めやルールによって異なります。先述のとおり「経営状況」も指標の一つ。そのほか一般的には、勤続年数、役職、勤怠状況、資格の有無のほか、ノルマがある場合はその成績が影響することも。また勤務先が独自の査定方法を取り入れている場合もあります。
ここでは、一般的に個人でできるボーナスアップの方法を紹介します。
・役職の昇格をめざす
ボーナスの金額を「月給の○ヵ月分」と決めているところは、看護師長や主任などの「役職」に就いて基本給が上がる場合、それに比例してボーナスのアップが見込めます。
・専門の資格を取得する
看護師の専門知識や技術を高めることを目的とした認定看護師や専門看護師、またニーズのある助産師や医療コンサルタントの資格などを取得すると、ボーナスが上がる制度を取り入れている職場もあります。
・転職をする
転職も看護師がボーナスを上げる一つの手段だといえます。ボーナスが支給されないクリニックや病院に勤めている人や、今のボーナス支給額が低いと感じている人は、思い切って転職を視野に入れてみてもいいかもしれません。その際は、ボーナス以外にもしっかりと目を向けた上で、総合的に転職するかどうか決断することをお勧めします。
5 看護師がボーナスのある職場を探すには?
「ボーナスが出る職場で働きたい」という場合は、求人サイトなどの求人情報で「ボーナス(賞与)」があるかを確認しましょう。当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」では、ボーナス(賞与)のあるクリニックや病院を「こだわり条件」から探すことができるので、ボーナスのあるクリニックをチェックしたいときにぜひ活用してください。
ただし、ボーナスの有無や金額だけで職場を選ぶのはお勧めしません。仕事への満足感はボーナスだけでは測れないからです。
例えば「ドクターズ・ファイル ジョブズ」で求人を調べる際は、ボーナス以外の項目をチェックしたり、「先輩インタビュー」の記事を読んで実際に働いている人がどこに満足感を抱いているのかを知ったりするなど、「自分と合うか」をしっかり確認した上で応募することで、長期的に働ける職場と出会いやすくなるでしょう。
6 転職活動で役立つ!看護師のボーナスQ&A
実際の転職活動の際には、ボーナスについて気になる点はあらかじめ解消しておきたいもの。ここでは転職に関連したよくあるボーナスの疑問をQ&A形式で紹介します。
Q 転職したばかりでもボーナスはもらえる?
A もらえなかったり減額されたりするのが一般的です。
転職して半年足らずといった在籍期間が短い場合、まだ実績がないためボーナスを支給しないというルールとしている職場は少なくありません。また勤務期間が短い場合は寸志や、満額ではなく在籍期間に応じて減額して支給するというケースもあるようです。
在籍期間に関係なく常に満額を支給するところもありますが、入職直後はもらえないことは決して珍しくないと覚えておくと良いでしょう。勤務先の規定を確認することをお勧めします。
Q 求人票に記載されている年収は、ボーナスも含まれた金額なの?
A 年収とはボーナスも含まれた年間の総支給額のことです。
年収は「職場から支払われるお金の総額」を指すので、ボーナスも含まれます。
ただしボーナスは毎月の給与とは異なり、必ず支払わなければならない義務はありませんので、ボーナス支給のない職場もありますし、「去年は出たけど今年は出ない」という場合もあります。
Q 求人票には「月給」が書かれていますが、ボーナスも別に支給されるの?
A 「賞与あり」の記載があれば基本的にはボーナスは別途支給されます。
ボーナス(賞与)の有無は、月給制かどうかだけでは判断できません。ボーナス制度を導入している場合、給与欄や福利厚生欄に「賞与あり」「賞与:月給の○ヵ月分」などと書かれていることが一般的なのでチェックしてみましょう。
なお、年俸制の職場の場合、年単位で決められた年収を分割した額が毎月支払われますが、14分割してボーナスが別途支給されるケースと、12分割してボーナス分を月給に含めて支給されるケースなどがあります。年俸制を採用している職場に応募した場合、年俸制の詳細を教えてもらう流れで、ボーナスの扱いがどうなっているのか確認してみると良いでしょう。
Q 面接時にボーナスのことを聞いてもOK?
A ストレートに金額を質問するのは避けたいところです。
採用担当者に「給与のことばかり気にしている」と思われてしまう可能性があるので、「ボーナスはいくらですか?」と、ストレートに質問するのは避けたほうが無難です。
仕事内容や院長の理念といった「業務への理解を深めたい・関心がある」と相手に伝わる質問をメインに据えて、給与面の話題となった際に「御院の賞与制度についても差し支えなければ教えていただけますか?」「御院の年俸制では賞与はどのように扱われていますか?」と控えめに確認するなど、質問の順序や聞き方を工夫してみてはいかがでしょうか。
なお、「ボーナス」という言葉にはカジュアルな印象を与えてしまうため、採用担当者とのやりとりでは「賞与」を用いることをお勧めします。
Q 産休・育休中でもボーナスはもらえる?
A ボーナス査定期間に働いた分が支給されます。
ボーナスは、一般的に査定の対象となる期間中の勤務実績をもとに決まります。そのため、査定期間に通常どおり勤務していれば、その後の支給のタイミングで産休・育休に入っていたとしても、満額支給されるでしょう。一方、もし査定期間の途中から産休・育休に入った場合は、休暇分を差し引いて支給されます。
Q 休職中でもボーナスはもらえる?
A 職場の就業規則や賃金規程によります。
休職制度のルールについては各企業に委ねられているので、休職中でも制度として支給する職場もあります。ただし、ボーナスは仕事の成果に応じて支給される性質があるので、産休・育休と同様に、ボーナスの査定期間と休職期間をもとに減額や不支給となることもあります。
なお、保健所などで公務員として勤務する看護師の場合は、そのルールは国や自治体により規定されているので、休職日数に応じて支給割合が変化します。
Q ボーナスが減らされたりカットされたりすることもあるの?
A 法律上は違法ではなく、状況によって可能性はあります。
減額やカットは労働基準法の上では違法ではありません。ただし、雇用契約書に賞与支給について明記されている場合は、契約内容に伴わない「ボーナスカット」は違法です。
とはいえ、賞与支給の明記がある場合は「業績悪化などの理由がある場合は支給されない」という不支給になるケースについても書かれていることが一般的。このような記載があれば違法にはならないため、契約上「賞与が出る」場合でも、理由によってボーナスカットはあり得るといえます。雇用契約の内容をしっかり確認しておくといいでしょう。
Q 非正規雇用だとボーナスが出ないって本当?
A 勤務先の規定やルールによります。
パートやアルバイトなどの非正規雇用の場合、現在はボーナスが支給されることは少ないかもしれませんが、同一労働同一賃金の考え方が広まり、今後変わっていく可能性もあります。また寸志や、少額ながら支給するというケースもあるようで、勤務先によって差があるようです。
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以上、看護師のボーナスに関して、さまざまな角度から紹介しました。ボーナスの実態は、職場によってかなり異なります。働く上でボーナスを重視したい人は、求人情報や条件をよくチェックしましょう。
ただし、ボーナス以外にも仕事内容や職場の雰囲気などが自分に合うかどうかを見極めることが、満足感や充実感を持って働くためには大切なポイントです。自身が幸せに働き続けられる職場を、広い目を持って探してみてください。