看護師として転職を有利に進めるために、資格取得を考えている人も多いのではないでしょうか。転職の際に資格が役立つ主な理由は、①職場選択の幅が広がる、②キャリアアップにつながる、③給料アップにつながるという3つです。この記事では、看護師の転職やスキルアップに役立つ資格をご紹介していきます。
今回のテーマは「日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)」です。
<目次>
1 日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)とは?
運動器に関する看護にあたる人の中でも、日本運動器看護学会が認定する看護師のことを「日本運動器看護学会認定運動器看護師(英語表記:Japan Society for Musculoskeletal Nursing Certification /略記:JSMNC)」と呼びます。通称、運動器看護師です。
日本運動器看護学会認定運動器看護師制度は、「運動器看護の分野において、熟練した看護知識及び技術を用いて、水準の高い看護実践を行える者を育成し、実践の場における看護の質の向上を図ること」を目的に2012年より開始されました。
運動器看護師の役割は、以下のように定められています。
2 日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の資格を取得する転職のメリット
日本運動器看護学会認定運動器看護師の資格を持つことは、自身のスキルアップや活躍につながるのはもちろん、転職のシーンでも役立ちます。
●職場の選択の幅が広がる
日本運動器看護学会認定運動器看護師として認定されると、運動器に関する知識を有することの証となり、自信を持って看護にあたれるのはもちろん、周囲から任されることも増えて看護の幅が広がります。
また、患者やその家族に対する質の高い看護の提供、所属する組織や医療機関のリスクマネジメントに関する能力などが証明されるので、転職時にも有利に働くでしょう。
こうした幅広い素養や専門性を有すると認められる日本運動器看護学会認定運動器看護師の活躍の場は多岐にわたります。具体的には、整形外科の病棟や外来、脳神経外科やリハビリテーション科などさまざまな診療科の病棟や手術室、多様な部門の看護の現場。また、訪問看護ステーションや地域包括支援センター、長期療養施設、デイサービスといった福祉のフィールドや、スポーツ医療の現場でも能力を発揮できるでしょう。
●キャリアアップにつながる
日本運動器看護学会認定運動器看護師に認定されることで、直接的な看護の実践・提供にとどまらず、多職種間の連携、人材育成にも携わるなど、総合的に看護の質を高める役割を担うことになります。
他分野との橋渡し役としてのコミュニケーション能力、リーダーとしてのけん引力などの評価を得ることは、管理職などへのキャリアアップを考える上でも有効です。今後さらなる飛躍をめざす上で、日本運動器看護学会認定運動器看護師の資格取得は転職のシーンでも役立ちます。
●給料アップにつながる
医療機関ごとに規定は異なりますが、日本運動器看護学会認定運動器看護師に認定されることで業務内容の幅が広がり、専門性が認められ、給料アップにつながるケースも考えられます。また転職時には、待遇面の交渉に役立つでしょう。
3 日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の認定資格を取得するためには?
日本運動器看護学会認定運動器看護師の認定資格を取得するには、日本の看護師免許を有し、日本運動器看護学会の会員になる必要があります。要件を満たした上で日本運動器看護学会認定運動器看護師育成講座を受講し、書類審査や認定試験に合格して、ようやく認定されるという長い道のりになります。
以下に、申請資格や養成講座、認定試験など、認定までの流れについてまとめたので見ていきましょう。
●日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の書類審査・認定試験申請資格
日本運動器看護学会認定運動器看護師の、認定試験を受験するためには、以下の要件を満たす必要があります。
●日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の育成講座
日本運動器看護学会認定運動器看護師をめざすための育成講座について、手順を以下にまとめます。
①「日本運動器看護学会認定運動器看護師申請の手引き」をダウンロードの上、記載にしたがって申し込み。
②全コース(コースⅠからコースⅣの4コース16講座)を受講。受講を終えると認定試験の申請要件である500ポイントが獲得できる。
③受講後、レポート課題である看護師を対象とした指導案を作成の上、提出をもって受講終了となる。
育成講座の内容と獲得ポイント数
Ⅰ.学会認定運動器看護師基礎コース(4講座)
Ⅱ.臨床看護基礎コース(診断・治療5講座、看護5講座)

Ⅲ.臨床看護実践コース (1講座)
Ⅳ.看護実践事例報告コース (1講座) 
育成講座の受講費用
※出典:JSMN 日本運動器看護学会「育成講座のコース概要」
育成講座の受講完了までのスケジュール ※2024年度の場合

●日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の書類審査・認定試験の受験概要
必要要件を満たし、上記の講座の受講を終えると、書類審査と認定試験の受験資格が得られます。以下に受験費用や試験方法などをまとめました(2024年度の例)。
書類審査と認定試験の結果に基づいて、「日本運動器看護学会認定審査委員会」が判定し、「日本運動器看護学会理事会」が承認した人が合格となります。学術集会期間中に認定式が実施されます。
●日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)書類審査・認定試験のスケジュール
試験は年に1度なので早めの情報収集、受験勉強が重要です。試験要項は日本運動器看護学会ホームページで公表されるので必ずチェックしてください。
※2024年度の場合、2023年度以前に育成講座を完了した者が対象なお、資格取得後は、5年ごとに更新が必要です。更新には、学会が定める承認基準に基づいた活動実績ポイントを300ポイント以上有することなどが条件となります。(※更新申請・登録料計30,000円)
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今回は、日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)について紹介しました。
日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)の認定を受けるためには、時間や費用を要するだけではなく、取得したからといって希望通りの業務に従事できる、あるいは理想の職場や職位で働けるとは限りません。
しかし、日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)として認定をされることで、患者や家族のケア、多職種連携のハブとしての役割、人材育成など、運動器に関する現場に従事する看護師としての活躍の場を広げることができるでしょう。
キャリアアップはもちろん、周囲からの評価を高めて看護師としてのやりがいを感じたいという思いがある人、看護師としての可能性や選択肢を広げたいと考えている人には、きっと役に立つ資格です。
今後ますます高齢化が進む中、医療や介護の分野を中心にニーズが高まり、社会の役に立つというやりがいを持って働く基盤となる資格でもあります。また、運動器の分野は患者層の幅が広く、スポーツ医療など専門性を有する分野でも重宝される資格です。新たなフィールドへ転職することも視野に入れて、看護師としてのキャリアアップをめざしてはいかがでしょうか。
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(日本運動器看護学会認定運動器看護師の役割)
①【実践】運動器の障害に関する専門知識に基づいて的確にアセスメントし、専門的な技術に基づいた看護の実践を行う。
②【連携】運動器の障害を抱える患者のQOLを高めるために、必要な職種と連携を図り、患者・家族を指導しサポートする。
③【指導】運動器看護に関わる看護師に対して、教育・指導を行う。
※出典:JSMN 日本運動器学会「学会認定運動器看護師の役割」