美容に対する関心が高い、新しい情報をキャッチすることが好き、コミュニケーション能力に自信がある……。さまざまな理由から、「美容看護師」に興味を持つ人は多いでしょう。しかし、一般的な病院やクリニックの看護師とは異なる点がさまざま。この記事では、他科との働き方の違いや美容看護師の仕事内容、メリット、デメリットを紹介します。
美容看護師として働くことに興味がある人はもちろん、美容看護師の仕事について知らなかったという人も、看護師としての選択の幅を広げるヒントにしてみてください。
<目次>
1 美容看護師とは?
美容看護師とは、美容皮膚科や美容外科など、いわゆる美容医療を提供する美容クリニックで働く看護師のことで、美容ナースと呼ばれることもあります。まずはその役割と一般的な診療科との違いなどについて解説します。
●美容医療とは?一般診療科とは何が違うのか
一般診療と美容医療では処置の目的が異なります。一般診療の場合、疾病の治療や身体的な機能の回復支援、健康になることが目的です。美容医療の場合は主に、外見、容姿の美しさを追求するためのものです。美容医療は原則として自由診療であり、保険は適用されません。そのため診療費が高額になるケースがあります。
●美容看護師の役割
美容看護師の役割として、外科的手術の介助や美容処置のサポートはもちろんのこと、サービス業や接客業としての要素を求められることが多いという特徴があります。
美容医療においては、患者がより美しくなりたいという願望に応えたり、コンプレックスを軽減させたりすることが目的になるため、美容看護師はより高いレベルでの提案力や、きめ細かなコミュニケーションによって、患者の悩みや本心を引き出すことが求められるのです。
働く施設にもよりますが、これまで病棟やクリニックでは「患者さま」と呼んでいた看護対象者を「お客さま」と呼ぶようになることも。「お客さま」としての患者に対して、より繊細な対応が求められるといえるでしょう。
2 美容看護師の仕事内容
美容医療は大きく2つに分けられます。基本的には外科的な処置を行わず、レーザー機器などを使って脱毛や肌質改善などを行う「美容皮膚科」と、脂肪吸引や豊胸手術、鼻やまぶたの整形手術など、外科的な施術・手術を行う「美容外科」です。
美容皮膚科(皮膚科系)と美容外科(外科系)のいずれか、あるいは両方など施設ごとに提供内容はさまざまです。そのため、美容看護師の具体的な仕事内容は、医師の診療補助や受付・予約管理などの一般的な業務に加え、就職先の専門分野や担当する領域によって異なります。
以下に、美容看護師の主な仕事内容についてまとめます。
●美容クリニック全般の一般的な看護師の業務
・受診者のカウンセリング(悩みや要望のヒアリング)
・カルテ記入
・電話受付、予約管理、クレーム対応
・備品や薬剤の管理
・美容機器や院内設備の管理
・ケア用品、ドクターズコスメなどの物販営業
●美容皮膚科での看護師の業務
・医療脱毛や皮膚治療に関するレーザー照射
・ピーリングなどの薬剤塗布
・美容に関する注射や点滴
・皮膚に関する処置の施術や補助業務
●美容外科での看護師の業務
・術前説明やカウンセリング
・手術の準備や後片付け
・オペ中の介助、診療補助
・術後のお客さまのケア
3 美容看護師の1日のスケジュール
実際に入職した際のイメージが湧きやすいように、美容皮膚科・美容外科での一般的な美容看護師の1日のスケジュール例を紹介します。
美容クリニックは比較的診療開始が遅く、終了時間が20時以降になるケースも多くあります。また、学生や仕事帰りの人の需要が高いため、夜遅くや土日祝日、大型連休も診療しているケースがほとんど。勤務形態は、週休2日でシフト制を導入しているクリニックが多く、早番・遅番と分かれているところもあります。繁忙期は希望どおりの休みが取れないこともあるので、休みが取りづらい時期があることを認識しておきましょう。
4 美容看護師の勤務条件、収入
美容看護師はどのような勤務形態で働いているのでしょうか。勤務時間や給与事情を以下に紹介します。
●勤務時間について
美容クリニックの場合、ほとんどが予約制で、急患が入る可能性が極めて低いため、夜勤がなく残業はほとんどありません。また、仕事終わりに受診できるよう朝の開院時間を10時や11時からと比較的遅めに設定し、20時頃まで診療しているケースもあります。クリニックの規模などによって異なりますが、比較的ゆとりのある働き方ができるといえます。
●給与面について
一般診療科のクリニック勤務に比べ、美容看護師の収入は全体的に高めの傾向といわれています。一般的に夜勤や特殊業務などの場合、給与は高い傾向にありますが、夜勤のない美容クリニックの給与が高いのはなぜでしょうか。以下に主な理由を紹介します。
・自由診療を中心に行っている
保険が適用されない自由診療を行っているため、診療代をクリニックが独自に設定でき、収益が上がった分をスタッフの給与面に反映しやすいです。
・物販の販売ができる
美容看護師として化粧品やサプリメントなどの物品販売が可能なため、治療・診療以外でクリニックの売上をのばすことが可能です。
・インセンティブの仕組みがある
売り上げ目標やノルマが定められている場合、貢献額に応じて自身の給料に上乗せされるインセンティブ制度を導入しているクリニックも多くあります。
・その他
年俸制を導入しているため、賞与の支給がない、あるいは少ない分基本給を高めに設定しているケースもあるようです。また、社員割引を活用して商品の購入や施術の利用ができるため、その分お得に感じる場面が多いといえます。
5 美容看護師として働くメリット・デメリット
美容看護師として働く上でメリットがある反面、デメリットもあります。メリットとデメリットの両方を念頭に置くことで自分自身の思いや条件と照らし合わせながら、就職や転職を検討しましょう。
●美容看護師として働くメリット
・ワークライフバランスが保ちやすい
前述の通り、夜勤がなく、突発的な残業の可能性が低いことから、生活のリズムを整えやすいといえます。
・給与水準が高め
自由診療であり診療代をクリニックが独自に設定していることから、夜勤や残業がないにもかかわらず、一般のクリニックに比べて比較的給与水準が高めといわれています。
・美容に関する最新情報が入手しやすい
新しい知識や技術をサービスへ還元するために、看護師間での情報交換や日頃からのインプットによって 最新の情報を得やすい環境にあるといえます。美容に興味がある人にとっては、看護師としての勉強が自分自身の美容に直結するという点で一石二鳥といえるでしょう。
・社員割引でドクターズコスメの購入や施術ができる
クリニックによっては、販売しているドクターズコスメを社員割引で購入できるケースも。また職員は低コストで美容機器を使用できるなど、社員特典を設けているクリニックもあります。
●美容看護師として働くデメリット
・土・日曜日や祝日の出勤がある、大型連休が取りにくい
サービス業の要素が強いため、クリニックの営業形態によっては、土・日曜日や祝日の出勤がある可能性もあります。また一般企業が大型連休に入るG.Wなどは美容医療の需要が高いため連休が取りにくく、友人や家族、恋人と休みを合わせ難いことが考えられます。
・看護師としてのスキルやキャリアが偏る
特に、美容医療の専門クリニックで働く場合、一般診療科や病棟で行うような、技術や疾患に対する知識に触れる機会が極めて少なくなります。そのため看護師としての専門的なスキルが美容医療に偏りがちに。もし、いずれ一般診療科や病棟へ戻ることを視野に入れて美容看護師にチャレンジする場合には、医療全般へのアンテナを張り、日頃から治療法や機器に関する勉強を独自に継続しておくことが大切でしょう。
6 美容看護師になるためには?
美容看護師専用の免許があるわけではないので、看護師免許か准看護師免許があれば、美容看護師になることができます。
美容看護師の採用は従来、3年程度の臨床経験のある看護師の中途採用が主流でした。しかし近年は、需要の高まりもあり、大手の美容クリニックなどを中心に、新卒採用も増えています。
新入社員への指導制度や経験の浅い入職者への研修制度を設けているクリニックも多いため、看護師としての基本的なスキルがあれば、美容業界に関する専門知識や必要な技術は、入職後に学ぶことができるでしょう。
ただし、クリニックの業務内容によっては、新卒看護師や経験の浅い看護師が担うことのできる業務は限定的であり、臨床経験のある看護師にしか任せられない業務も多々あります。そのため、看護師としての経験が豊富な人であれば、より一層、自信とやりがいを持って臨むことができるでしょう。
7 美容看護師に向いている人の特徴
どんな人が美容看護師に向いているか特徴をまとめました。
●美容への関心が高い人
医療面だけでなく、美容への関心が高く、日進月歩の美容に関する情報収集を楽しみながらできる人が向いています。美容クリニックを訪れるお客さまは当然ながら、美容への興味がある人がほとんど。美容情報に関する質問や会話にしっかり応じられることも、サービスの質を高めるために大切です。
●手術介助に関する経験・知識を有する人
美容外科の現場の場合には、オペ室に入ることが多いため、手術介助に関する経験や知識を持っている人は、 活躍が期待できるでしょう。
●人と関わることが好きな人
美容看護師は、化粧品やサプリメントなどを販売することが業務に含まれるので、一般診療科に比べて、お客さまとのコミュニケーション能力や接遇スキルが求められます。人と関わることが好きな人、柔軟なコミュニケーションに自信がある人は向いているといえます。
8 美容看護師のやりがい
美容医療を通して、生き生きと明るさを取り戻したり、商品(ドクターズコスメ)の良さが伝わり喜びを感じたりするお客さまの笑顔は、看護師としての大きなやりがいにつながります。
人生100年時代といわれ、身体の健康状態を保つことはもとより、美しく充実した時間をより長く過ごしたいと願う人が増えています。そのようなお客さまの願いを叶えるお手伝いができることは、美容看護師という仕事の魅力ともいえるでしょう。
9 美容看護師の志望動機
志望動機は、漠然とした内容ではなくそのクリニックに合わせて考えるのが前提です。クリニックごとの特色や魅力をしっかりと把握した上で、自分の思いや経験に関連づけてアピールすると説得力が増します。
また、美容クリニックとひと口に言っても、大手の系列クリニックか個人のクリニックかというだけでも働き方が違います。また、行っている施術内容や処置、得意な分野などもクリニックによって大きく異なります。
以下にいくつかのケース別に、志望動機の例文を紹介します。例文を参考にしながら、自分自身の気持ちや言葉をしっかりと盛り込み、熱意が伝わる志望動機を考えましょう。
●総合病院から美容クリニックへ転職を希望するケース
●一般診療科のクリニックから美容クリニックへ転職を希望するケース
小児科のクリニックで7年の看護師経験があります。子どもは、痛みや苦しさを言葉にすることができないため、一人ひとり表情やしぐさなどの様子をしっかり観察し、ご家族ともコミュニケーションを深めながら、ケアにあたることを心がけてきました。
転職のきっかけは自分自身のライフステージの変化ですが、学生時代に美容クリニックへ通院していたこともあり、新しい分野へ挑戦してみたいと考えています。
私自身、学生時代は自分の容姿にコンプレックスがあったのですが、美容クリニックで感じた施術後の晴れやかな気持ちや、通っていた時の安心感が忘れられなかったからです。
貴院の「お客さまのあらゆるニーズに真心を持って応える」という診療方針に強く共感しており、これまでの看護師経験で培ってきた患者さまに寄り添う姿勢や接遇力を生かして、私のように苦しみや悩みを抱える多くの方を笑顔にしたいと考え、志望させていただきました。
●美容業界での経験があり、美容クリニックへ転職を希望するケース
美容皮膚科で3年間勤める中で、より幅広い視野でお客さまの多彩な要望に応えたいと考えるようになりました。そんな時、貴院を知り、美容皮膚科のみならず美容外科も含めてさまざまな施術や処置を行っていることに惹かれ、転職を決意しました。
お客さま一人ひとりの悩みを解決し、願いを叶えることで、輝く笑顔に出会えることが看護師としての私の一番のやりがいです。そして、美容看護師としてのスキルや知識を磨き、キャリアアップをする中で、貴院の重要な戦力として活躍したいと願っています。
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今回は、美容看護師の仕事内容や働く環境などについて紹介しました。美容クリニックの増加に伴い、美容看護師の需要が高まっています。同時に、ワークライフバランスが保ちやすいこと、人を幸せにするというやりがいなど、魅力的な仕事であり、人気の職場でもあります。
看護師として、新しいステージでの挑戦を考えている人や、美容業界に興味のある人は、ぜひ当記事を参考に、自分自身の経験や適性、希望する働き方などと照らし合わせながら、選択肢の一つとして美容看護師の仕事について検討してみてください。
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貴院のホームページで目にした、「美容を通して笑顔あふれる幸せな人生を届けたい」というコンセプトに共感し、志望しました。
これまで私は総合病院の外科病棟で5年勤務しており、多数の手術補助を行ってきました。手術の介助や診療補助の面では、これまで培った経験を生かせると考えています。手術に臨む患者さまのメンタル面でのケアや術後のフォローなど、美容クリニックで求められるきめ細かな接客についての意識をより一層高めながら、貴院の一員として活躍したいです。