転職を考えている看護師の中には、「転職を繰り返していると転職活動に不利なのではないか?」と心配に思う人がいるかもしれません。また、面接で転職回数や転職理由について聞かれたら、どう答えるのが正解なのでしょうか。本記事では看護師の転職状況と転職回数が多い人が新しい職場での面接を受ける際のポイントについて解説します。
<目次>
1 看護師の転職率・転職回数
日本看護協会の「2021年 看護職員実態調査」によると、約5,000人の看護師の50.5%と過半数が「転職経験がある」と答えました。さらに、転職経験者を対象に「これまでに所属した勤務先数」を尋ねた結果から転職回数を算出すると、「2回以上」の合計が25.1%を占めており、転職経験がある人の約半数が複数回転職をしていることがわかります。このことから、看護師の転職は珍しくなく、複数回転職する人も多い職業ということがいえるでしょう。
一般企業では、4回以上の転職は「多い」と思われがちですが、看護師の場合、転職回数の多さだけで転職が不利になるケースは実は多くないと考えられています。
大きな理由の一つとして、看護師が安定して売り手市場であることが挙げられます。例えば、2024年1月時点での看護師の有効求人倍率は2.24倍という高水準(全職業の平均有効求人倍率は1.21倍)。現在クリニックや病院での看護師不足が社会問題になっており、多くの医療機関が看護師の募集に力を入れている状況が続いています。需要の高さから、転職回数が多いからといってマイナス評価をするケースは多くないでしょう。
2 看護師の転職回数が多いことのデメリット
転職回数の多さ自体が転職に不利になることはあまりないですが、デメリットになることはあります。以下、主なデメリットを紹介します。
・デメリット①:忍耐力がない印象を与える
特に、就業期間が短い(3ヵ月や半年など)と、「入職してもすぐに辞めてしまうのではないか」と思われがちです。例えば、同じ4回の転職でも、20年で4回の転職と1年で4回転職するのとでは、どうしても後者のほうが印象が悪くなってしまいます。ただし、転職頻度が高くても、これまで培った技術や経験を新しい職場で生かせることをアピールすれば、「転職したことがメリットになっている」という印象を与えやすいでしょう。
・デメリット②:前職の退職理由に言及される
転職回数が多いと、ほとんどの場合に理由を聞かれます。ネガティブな理由は特に、答えに詰まってしまうことも考えられます。ただし、転職回数や理由を偽って伝えるなどはやめましょう。質問にしっかり回答できるよう、なぜ転職回数が多いのか自分なりの回答を準備しておくことが重要です。
3 看護師の転職回数が多いことのメリット
転職回数が多いことはデメリットと考えられがちですが、転職回数が多い=いろいろな職場を知っているともいえます。
・メリット①:ノウハウが蓄積できる
クリニックや病棟など多くの職場を経験することで、培ったノウハウも多くなり、その経験を次の職場で生かせることが強みになります。
・メリット②:理想の職場選択がしやすくなる
さまざまな職場に触れることで、自分が極めたい分野や伸ばしたい技術が明確になるケースが多いようです。新しい職場における診療方針や理念と照らし合わせることで、自分が理想とする職場を選択しやすくなるといえるでしょう。
・メリット③:将来像が明確になる
転職が多いということは、それだけ自身の適性を考える場面があったともいえます。「仕事の向き不向き」だけでなく、「職場に何を求めているのか」「どう働きたいのか」「勤務条件で譲れないことは何なのか」など自分の働き方に対する要望や条件を見直す機会にもなるため、将来のビジョンや理想像がより明確になります。
4 看護師の面接のポイント
転職が多い人の面接では、一般的に「なぜ転職をしたのか」「転職回数が多いのはなぜか」といったことが聞かれます。それらの質問は「同じ理由で辞めないか?」「仕事に対して前向きに取り組む姿勢はあるか?」などを確かめるためです。ですから、転職理由をはっきりと説明でき、新しい職場で意欲的に働く意思を示すことができれば、マイナスなイメージを与えずに済むといえます。
反対に、たとえ本当のことでも前の職場の不満を感情的に伝えてしまうと、自身の言動や行動をコントロールできないと考えられ、「物事が長続きせず向上心に欠ける人」というイメージを持たれてしまいます。面接では、これまでの職場で得た知識や技術を新しい職場でどう生かしていくかというところにポイントをおいて話すと良いでしょう。その上で次の2点に気をつけて受け答えをしましょう。
5【状況別】看護師の面接での志望動機
転職回数が多い人といってもこれまでの経験や転職の背景など状況はさまざま。以下に面接で志望理由を聞かれた際の回答例を状況別にまとめました。
●気がつけば転職回数が多くなっていたという場合
「少しうまくいかないことがあったから」「何だか疲れてしまった…」とその時の気分で無計画に何となく転職をしているうちに、気がつけば回数が増えていたという場合、「何となく」の部分をうまく説明するのは難しいかもしれません。そういうときは、「今までの自分を振り返り反省し、今は前向きに取り組みたいと思っている」ことを話し、誠実に仕事に取り組む姿勢を示すことが大切です。
【回答例】
今まで3院の回復期病棟に勤務し患者さまの療養上のサポートや医師の診療補助、他職種との調整業務など幅広く行ってきましたが、問題に直面する度にモチベーションのコントロールがうまくできず転職をしていました。ですが、仕事への取り組み方を変え、出来事の事実だけを見るのではなく、客観的な視点を持ってどうしたら次に生かせるかを考えられるよう訓練してきた結果、今では自身でモチベーションをコントロールできるようになりました。患者さま一人ひとりの個別性を重視した支援体制づくりに注力されている御院では、自己研鑽に励まれている方が多いと伺いました。私自身もよりスキルを磨き、一人でも多くの患者さまの生活復帰をお支えできるように、実務だけでなく、資格取得をめざしスキルアップにつなげていきたいです。
●別の診療科へ転職する場合
内科で働いていた看護師が産婦人科を志望するといった、これまで勤めた診療科とは別の診療科へ転職活動をしている場合には、これまでの診療科での勤務経験によって学んだことや身につけたことをアピールし、それを踏まえてなぜ別の診療科に行きたいと思ったかを話せるようにすることが肝要です。
【回答例】
今までに2院の内科で勤務しました。それぞれの内科で看護師として求められることも少しずつ違いがあり、それらに対応することでさまざまなスキルが身につきました。
その中で私がもっと深く関わっていきたいと思ったのが妊婦さんへの看護です。風邪やインフルエンザなどで来院された妊婦さんのほぼ全員が、ご自身よりもおなかの赤ちゃんへの影響を心配されていたことが強く心に残っており、妊娠中・出産の不安に寄り添った看護を日常的に行いたいという思いが強くなりました。
30年以上にわたってこの地域の出産を支えてこられた御院は、先生はもちろんスタッフ皆さんによる患者さまへのメンタルサポートのきめ細かさでの強い支持を受けていると伺い、私がめざす看護師の理想の環境だと思い志望いたしました。
さまざまな年齢層、症状の患者さまに対応してきた内科での経験・コミュニケーションスキルを御院で生かして、しっかりと貢献できるように精進したいと考えております。
●クリニックや病院などの異なる業務形態へ転職する場合
クリニックや病院など違った形態の職場で勤務したことで、経験の幅が広くなり、生かせるスキルが多いことを強みにすることができます。その上で自分に合った働き方を求めての転職であることを伝えましょう。
【回答例】
総合病院の急性期病棟と整形外科クリニックでの勤務経験があります。急性期病棟では、時間の猶予が少ない中で的確な診療補助が求められる状況が多いため、さまざまな症状に即時対応するための知識やスキルを磨くだけでなく、先生や同僚との適切なコミュニケーション・連携の取り方を身につけることができました。
一方で、急性期病棟の役割上、同じ患者さんとの関わりは短期的になりがちだったため、長期的に患者さまを看護したい思いから整形外科クリニックへ転職しました。整形外科では、患者さまに寄り添い一人ひとりとコミュニケーションを取りながら、良好な関係を構築する力が得られました。ケガや病気で苦しい思いをしている患者さまに寄り添うという理念のもと、地域に根づいた診療を行っている御院で、継続的に患者さまと向き合いながら、一人ひとりに最適なサポートを行える看護師として活躍したいと思っております。
●人間関係などの職場環境や労働条件が理由で転職をした場合
人間関係や労働条件のミスマッチが理由で転職を繰り返している場合、そのまま伝えてしまうと、「忍耐力がないのでは?」「コミュニケーション能力がないのでは?」と思われてしまう可能性があります。その場合、退職理由を必要以上に詳しく話すのではなく、今まで培ったスキルを中心に、新しい職場での自分の強みを話すと良いでしょう。
また、給料や勤務時間、休日などの条件面は入職を決める前にしっかり確認をすることで疑問点をクリアにし、入職してから「こんなはずではなかった」とならないようにしましょう。
【回答例】
前職はスタッフの人数が少ない職場で、一人ひとりの業務が膨らみがちでした。仕事とプライベートのバランスを取ることが難しくなり、転職を決意しました。スタッフ1人に対する責任が大きく大変な思いもありましたが、その分やりがいを感じることができました。長時間患者さまと接することも多かったので、看護師としての技術だけでなくコミュニケーション面には自信があります。今後は前職での経験を生かして業務を遂行していきたいと思います。
6 看護師の転職先の見つけ方
転職先を見つける方法には、ハローワークの利用・友人知人の紹介・クリニックに直接応募・転職サイトを利用・転職エージェントを利用などさまざまですが、転職者の状況によって、適した方法は違うでしょう。
例えば、現在仕事を継続しているのか、転職先探しに十分な時間を取ることができるのか、面接日時の他、給与や休日など細かな勤務条件の交渉を自分でできるのかなど、転職者がどういった転職活動を行いたいかによっても異なります。それぞれの見つけ方から自分に合った方法を選ぶことが、希望に合った転職先を見つける近道になるでしょう。
当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」では、看護師の求人を多数掲載しており、エリアや駅、雇用形態はもちろん、「ブランクOK」「子育てママ在籍中」「退職金あり」などこだわり条件でも絞り込むことができるので、優先順位に合わせてさまざまな条件で求人を探し、より有意義な転職活動になるように、ぜひ活用してください。
7 まとめ
以上、転職回数が多い看護師の転職について紹介しました。看護師の場合、転職回数が多いという理由だけで転職の成否が直接左右されることはあまりなく、それよりも新しい職場の面接で、今までの経験をどう生かしていくのかをしっかり伝えることが大切です。
新卒者ではなく経験者を採用する新しい職場の院長や経営者は、経験者に対し、今まで培ったスキルを新しい職場で発揮することを期待しているはずです。その期待に応えられるよう、面接前には新しい職場では何を求められているのかを分析し、自分の看護師としての強みをアピールできるように準備しましょう。このサイトで解説した面接のポイントや回答例を参考に、より良い転職活動を行ってください。(ドクターズ・ファイル編集部)
・ネガティブな転職理由は、なるべくポジティブに言い換える
たとえ本当のことでも転職理由の不満をそのまま話してしまうと、不満を感じやすいと捉えられ、ネガティブな印象になってしまいます。「嫌なことがあったらすぐに辞めてしまうのでは?」と思われないように、新しい職場への期待や頑張りたいという思いに変え、ポジティブな表現を心がけると良いでしょう。
・今までの経験を、新しい職場でどう生かせるかを伝える
転職回数が多いということは、言い換えれば他の人より豊富な経験を持っていることになり、それが面接での強みになるでしょう。過去の経験を踏まえて、自分の強みをしっかり分析し、今まで培った経験を新しい職場でどう生かしたいのかを伝えるようにしましょう。