看護師として転職を有利に進めるために、資格取得を考えている人も多いのではないでしょうか。転職の際に資格を取得しておくと良い理由は、①職場選択の幅が広がる、②キャリアアップにつながる、③ワークライフバランスを重視した働き方につながるという3つです。この記事では、看護師の転職やスキルアップに役立つ資格をご紹介していきます。
今回のテーマは「保健師」です。
<目次>
1 保健師とは?
保健師は、国家試験の合格者に与えられる資格です。養成機関(大学、短期大学、専門学校、保健師養成所など)で専門教育を修めて保健師国家試験に合格することで、厚生労働大臣から保健師の免許が与えられます。
看護師免許を持っていることが保健師免許の取得条件となっているので、看護師国家試験と同時または合格後に保健師の免許を取得する流れとなります。
保健師の主な役割は、地域住民や所属企業の社員といった幅広い人たちへの健康サポートです。保健指導や健康診断、健康増進のための啓発活動を行ったり、健康に関する相談に対応したりします。
なお、保健師の仕事内容は勤務先によって異なります。以下4つが保健師の主な種類です。
2 保健師の資格を取得する転職のメリット
保健師の資格を持っていることは、自身のキャリアアップや活躍だけでなく、転職のシーンでも役立ちます。
●職場の選択の幅が広がる
看護師の職場はクリニックや病院が中心ですが、保健師の場合は保健所や保健センター、民間企業などが主な職場となります。看護師では選択肢に挙がりにくい職場を勤務先の候補に加えることができる点が大きなメリットといえるでしょう。
●看護師としてのキャリアアップにつながる
保健師の資格を生かして看護師として働き続ける場合、病院勤務が主になるでしょう。「看護師としての経験が浅いまま保健師になったけど、医療現場についてよくわかっておらず勝手を理解するのに最初は苦労した」といった声が現役の保健師から上がるように、保健師は看護師としての経験や知識が重宝されます。
看護師の資格を保有することで、看護師としての経験や知識を生かしながら、保健師業務と兼任するキャリアの道が描けます。他の看護師とは異なる豊富な経験、キャリアを積むことができるので、転職の際にも有利に働くでしょう。
3 保健師の資格を取得するためには?
保健師の資格を取るには保健師の養成学校で学んだ上で、国家試験に合格する必要があります。受験資格や試験内容を見ていきましょう。
●保健師国家試験の受験資格
以下すべての要件を満たしていることが前提となりますのでよく確認しておきましょう。
<主な保健師養成学校>
・保健師課程がある大学院(2年制)
・大学専攻科・別科(1年制)
・短期大学専攻科(1年制)
・専門学校(1年制)
・保健師課程がある大学(3年次編入)
保健師養成学校には入試があります。試験内容は学校によって異なりますが、筆記試験(看護学)、小論文、面接の3つが一般的です。希望する学校のホームページなどで入試要項を確認して、試験に向けた準備にとりかかりましょう。
また、学校を決める際にはカリキュラムについてもしっかり確認しておくことをお勧めします。例えば、行政保健師を希望する場合、公務員試験に合格しなければなりません。そのため、公務員試験対策のセミナーを実施しているかどうかを学校選びの際に重視するのもポイントです。
●保健師国家試験の内容
保健師国家試験の受験費用や試験方式などについては以下を参考にしてください。
●保健師国家試験の受験スケジュール
保健師の養成学校に通いながら受験する人は学校側で受験スケジュールを管理してもらえますが、卒業後に一人で受験に臨む人は早めの情報収集、計画的な受験勉強が重要です。試験要項は厚労省ホームページで公表されるので必ずチェックしてください。
なお、在籍していた学校によっては、卒業後でも出願手続きを代行してくれる場合があるので、学校側に問い合わせてみると良いでしょう。
※スケジュールは目安です
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地域医療の充実化を図る上で保健所や保健センターの取り組みがますます重要になっています。また、企業においては従業員のメンタルヘルス対策が盛んに報じられるようになってきました。どちらも保健師の活躍の場であり、そのニーズの高さがうかがえます。
保健師と看護師の仕事内容自体は異なりますが、保健師は原則的に看護師免許を持っている人しか就くことができない職業です。新たなチャレンジの場を求めている人は、保健師の免許取得も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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①行政保健師
行政が管轄する機関で働く保健師のことで、具体的な勤務先は保健所や保健センターなど。地域住民への健康診断や疾病予防の啓発活動を行ったり、国や自治体が策定した保健政策を実行したりします。公務員に該当するので、就職の際は公務員試験に合格しなければなりません。
行政保健師は保健師の中で最も多い保健師です。「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(厚生労働省)の調査では、保健師のうち約72%が行政保健師だという結果が出ています。
②産業保健師
民間企業で働く保健師で、産業医や人事部と協力しながら所属する従業員の健康診断を実施したりメンタルヘルス対策に取り組んだりします。ただし、産業保健師を設置しているのは大企業が中心なので、求人は少なめ。また、給料が高水準、福利厚生が充実しているといった傾向があり、求人への応募が集中しやすいです。
③学校保健師
大学・短大・専門学校、私立の小学校・中学校・高校といった教育機関で働く保健師。生徒や職員の保健指導、けがの応急処置などの健康管理を行います。「保健室の先生」をイメージしやすい仕事内容ですが、保健室の先生とは養護教諭のことを指し、学校保健師とは別物です(養護教諭になるには養護教諭の免許が必要)。
けがや病気、性にまつわる授業を実施したり、生徒と密にコミュニケーションを取って心身の健康を支えたりする養護教諭のサポート役に近い位置づけといえるでしょう。なお、学校保健師は公立の小学校・中学校・高校への設置は認められておらず、それ以外の学校での設置も任意とされているため求人は少なく狭き門といわれています。学校保健師をめざす場合は求人サイトに登録しておくなど情報をキャッチできるよう努めましょう。
④病院保健師
病院やクリニックなどの医療機関で働く保健師。患者だけでなく医療従事者に健康診断を実施したり健康に関する相談に乗ったりします。健康診断や人間ドックに力を入れている医療機関では、保健師の求人が多い傾向にあります。
保健師は看護師免許も持っているので、看護師の業務を兼任する場合も。また、保健師は仕事柄、患者の診療から距離を置くことになりがちですが、病院保健師であれば看護師との両立が図れるかもしれません。