甲斐歯科医院 (大分市/大分駅)
甲斐 大嘉 院長の独自取材記事
大分駅から車で4分ほどの場所にある「甲斐歯科医院」は、約70年前に開業した歴史あるクリニック。現在は3代目を務める甲斐大嘉院長がメインとなり、先代である甲斐嘉六先生と協力しながら、長く通い続ける患者から、新しく相談に来る患者まで、幅広い層の悩みに向き合う。同院が特に注力するのが、インプラント治療と歯周病治療、メンテナンスを含めた予防歯科だ。「いずれの診療にも共通して大切なのは、患者さんとのコミュニケーション。コミュニケーションを取り、患者さんが話しやすく、相談しやすい雰囲気をつくることが、いい治療につながるんです」と話す院長に、同院が取り組む歯周病治療やインプラント治療の詳しい内容、そして今後さらに力を注ぎたいと考える診療などについて話を聞いた。
長い歴史とともに、インプラント・歯周病治療に尽力
先生で3代目になるそうですね。
当院は70年以上前の戦後復興期に祖父が開業しました。父も歯科医師でしたので、2人が一緒に治療をしている様子を子どもの頃に見て育ちましたから、多少の葛藤はあったものの、いつしか自然に私も歯科の道へと進みました。大学卒業後は東京都内の歯科医院などに勤務した後、当院に入職しました。今はメインの診療は私があたっていますが、父と一緒に携わっています。祖父の代から来てくださっている患者さんやそのご家族など、幅広い年齢層の患者さんに来ていただいています。予防歯科、虫歯治療、お子さんのフッ素塗布、歯周病治療、インプラント治療、大人のワイヤー矯正などの幅広い診療や処置に対応していますね。
特に注力されている治療の一つが、今おっしゃったインプラント治療だそうですね。
父が院長だった頃、インプラント治療の黎明期から取り入れていました。私自身、今も勉強会やセミナーに参加して、症例発表なども行っています。当院ではインプラント治療のナビゲーションシステムを導入しています。患者さんの顎の骨の状態を歯科用CTで撮影し、その画像に合わせた精密なナビゲーションを行ってくれる機器で、従来の治療に比べてより安全性に配慮されています。とはいえ、当院は積極的にインプラント治療だけを勧めているのではありません。抜歯になった場合は、ブリッジ、保険診療の入れ歯、見た目に配慮して使いやすさにこだわった自由診療の入れ歯であるノンクラスプデンチャーを比較して丁寧に説明し、患者さんご自身にどの治療がいいかを選んでいただいています。
歯周病治療にも注力されているそうですね。
インプラント治療は、歯周病や虫歯になってしまったり、噛み合わせの力が強すぎて破折してしまったりなどで抜歯に至ってしまった場合の、治療の選択肢の一つです。当院が大切にしているのは歯を残すこと。なので抜歯にならないための歯周病治療にも力を入れています。歯周病治療は歯周病の進行具合によってさまざまで、ごく初期であればメンテナンスと患者さんのホームケアで十分カバーできますが、かなり進行してしまうと歯茎を切開した上で歯の骨の再生治療を行う必要が出てくることも。当院では保険適用の再生治療に対応しています。
患者が気づきを得られるよう、原因から丁寧に伝える
治療で心がけていることは何でしょうか?
なぜその治療が必要なのか、原因から治療のメリット・デメリットまで、患者さんにご理解いただけるまで丁寧に説明することを心がけています。例えば、なぜ抜歯に至ってしまったのかについて。前述したように抜歯に至る原因は患者さんによって歯周病、虫歯、破折などさまざまです。歯がうまく磨けていないことによる歯周病や虫歯であればブラッシングの改善、噛み合わせが強すぎて破折するなら噛み合わせの調節が必要です。また、抜歯まで進行していなくても、「左側で食べ物を噛んでいるようですね」といった患者さんの良くない癖をお伝えするようにしています。すると、患者さんは改善に向けて意識して生活を送るようになるのではないでしょうか。ただ目の前の状態を治療するだけではなく、なぜそうなったかを患者さんに理解していただき、生活での気づきを得てもらいながら、「だからこの治療が必要なのだ」と納得した上で治療を進めるように意識しています。
歯周病で、患者さんが自覚しているよりも進行しているということもあるのでしょうか?
あります。単純に定期的なメンテナンスで歯石の除去をするだけでいいケースもあれば、歯茎を切開して歯石を取るケース、そして再生治療を行うケースもあります。再生治療では歯茎を切開した上で、欠損した骨の部分に薬剤を塗って縫合します。ひと言で「歯周病治療」といっても、歯周病の進行段階によって治療内容がまったく異なりますし、再生治療を行う場合もその前に歯石除去をしたり、歯茎の状態を正常な状態まで治療しておいたりしないといけません。もちろんご自宅でのブラッシングもしっかりとできなければ予後が悪くなり、ひいては再生治療自体の意味もなくなってしまう可能性もあります。
歯周病予防にはメンテナンスが欠かせませんね。
当院の場合祖父や父がいたおかげか、歯磨き習慣が身についている方が多いように思います。ご家族がしっかりと歯磨きをしていると、お子さんにもその習慣が受け継がれていると感じることも多いですね。フッ素塗布に来てくださる方も多いですし、歯磨き方法の助言をするとすぐに覚えて実践してくださるのもありがたく感じています。患者さんが歯科に求めるのは「痛い虫歯を治す」から「痛くなる前にメンテナンスをしてもらう」へとシフトしています。そんな中でいかに患者さんのモチベーションを保ち、メンテナンスを続けていただけるかは、私だけではなく歯科衛生士の腕にもかかっていると感じます。
患者との自然なコミュニケーションでより良い治療へ
歯科衛生士さんには、どのような点に気をつけてほしいとお伝えされていますか?
「患者さんがメンテナンス中に1回は自然に笑ってくださるように、コミュニケーションをしっかり取ってほしい」と伝えています。そういう砕けた雰囲気でないと患者さんも自分の歯のことなどで質問があってもしづらいですし、患者さんとのお話の中からメンテナンスや治療のヒントを見つけるのも、歯科衛生士に任せている仕事の一つです。私も治療を行う際には「きつかったら遠慮なく言ってください」とお伝えしていますし、治療に差し支えない程度で「5分くらい休憩しましょう」「トイレに行っても大丈夫ですよ」と、治療中もなるべく患者さんが自由に動けるように心がけています。どんなに腕が良くても患者さんとのコミュニケーションがうまく図れないと、患者さんの心は治療から離れてしまうように感じます。そうならないように、丁寧に接するよう意識しているんです。
患者さんの心に寄り添っているのですね。
基本的に歯科医院は患者さんにとって、できれば行きたくない場所ですからね。その思いをこちらも受け止め、その上で話しやすく相談しやすい雰囲気づくりを心がけることが大切だと考えています。原因や治療内容を理解していただいたり、気づきを得ていただいたりすることに加えて、患者さんが気づいていない「いつも左側で噛んでいる」といった悪い癖を、こちらが予測できる範囲でお伝えするのもその一環です。気づいていなかったことを投げかけることで、患者さんはご自分でも意識されるようになります。その気づきに喜んでいただけていたらいいなとも思います。それらは次の治療やメンテナンスを行う上でのヒントにもなります。コミュニケーションを取ることでいい治療につなげていく意識は、これからも大切にしたいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
今後はさらに予防歯科に注力していきたいと考えています。当院では、インプラント治療を行う前にしっかりと治療後の定期検診の重要性をお伝えしていますが、もしこの定期受診を怠るとせっかく入れたインプラントが駄目になってしまうということも考えられます。私自身の伝え方はもちろん、スタッフへの予防歯科に関する教育も含め、予防歯科自体をさらに充実させたいですね。予防に対する患者さんのニーズも感じていますので、歯磨きの方法なども気軽にご相談ください。また、勉強会などで先進の治療を学び、ニーズを把握することも続けたいです。何より歯科に対する「怖いイメージ」を払拭して、美容室に行くくらいの気軽さで来院できるようなクリニックをめざしていくつもりです。