松岡歯科医院 (逗子市/逗子駅)
松岡 友輔 院長の独自取材記事
逗子駅の西口から徒歩10分ほどの住宅街にある「松岡歯科医院」。松岡友輔院長の父が1977年に開業し、地域住民の口腔内を見守り続けている。2020年に移転した同院は、患者が安心して通院できるように感染症対策も行いつつ、虫歯や歯周病などの一般的な診療の他に、小児歯科や高齢者歯科にも力を入れる。「歯の生え始めた0歳から人生の最期まで、ご自分のお口でおいしく食事ができるようにお手伝いがしたい」と話し、患者と生涯の付き合いができる歯科医師をめざす松岡院長に、診療へのこだわりや患者への思いを聞いた。
40年以上の歴史を持つ地域密着の歯科医院
貴院の歴史について教えてください。
当院は40年以上前に父が開業し、2020年に今の場所に移転しました。移転と言っても以前の場所に隣接しているので大きな移動ではありません。ただ、以前はわかりにくい袋小路にあったのが、今は通りに面しているので、通いやすくなったと思います。院内は以前よりもゆとりのあるレイアウトで、車いすやベビーカーでもスムーズに移動できます。プライバシーに配慮した半個室で、車いすのまま入れるユニットもあります。タブレット型のコンピューターを使って患者さんと一緒にレントゲン画像などが見られるように、ネット環境も整備されています。
設備について教えてください。
父の代から大切にしているのが、なるべく歯を抜かずに残していく診療です。当院ではインプラント治療をしていない分、それ以外の歯を残すための知識や技術が必要です。その工夫の一つとして、歯科用CTとマイクロスコープを導入し、精密な根管治療を行っています。詰め物やかぶせ物をする前に、土台となる歯の根をしっかりと治していくことが大切です。ですから、マイクロスコープを使って肉眼では見えない細かな部分までしっかり確認しながら、治療を進めているのです。他にも、従来行っている治療の質や効率を上げるために、メンテナンス時に用いるエアフローや口腔内スキャナーを導入。口腔内スキャナーを活用した、成人向けのマウスピース型装置を用いた矯正も始めました。
現在の患者層を教えてください。
近隣にお住まいの方が多いですね。開業時から通院されている患者さんもいらっしゃるので、高齢の方も来院されています。ですから患者さんにも、そのご家族にも、安心していただけるように「もし通院が難しくなっても、ご自宅に伺ってお口の中のケアができますからね」とあらかじめお伝えしているので、必要に応じて訪問診療に移行する方もいます。訪問診療では、虫歯や歯周病の治療から入れ歯の調整など、できる限り院内で行うのと同じレベルの治療を提供できるようにしています。また、飲み込みが難しくなってしまった患者さんへの摂食嚥下リハビリテーションも行っています。通学路に面した場所に移転したことで、最近はお子さんの来院も増えていますね。
患者とその家族との関係も重視し、あらゆる世代に対応
お子さんを診療する際に気をつけていることはありますか。
怖がらせないこと、泣かせないことです。幼少期に歯科医院に怖いイメージを持ってしまうと、それがトラウマとなり大人になっても歯科医院嫌いになってしまいますからね。私自身3人の子どもの父親ですので、親御さんの気持ちがわかります。やっぱり親御さんに心配をかけたくありませんね。治療を怖がる子でも、一人ひとりのペースに合わせてゆっくりと歯科医院やスタッフに慣れてもらうことから始めています。中には診療室に入れない子もいますので、待合室で少し口の中を診せてもらったり、一緒に遊んだり。持久戦になることもありますが、1回の診療時間を短くして、その都度褒めてあれば、次第に怖さや緊張感はなくなっていくでしょう。私は、お子さんの健康を地域で守っていきたいと考えています。治療にとどまらずちょっとした親御さんの悩みにも寄り添える歯科医師でありたいですね。矯正治療も行っているので、歯並びに不安がある場合もご相談ください。
ご高齢の患者さんについてはいかがですか?
患者さんのご自宅に伺う訪問診療は、患者さんやそのご家族との信頼関係が築けていなければ成立しません。ですから医療の提供だけでなく、一人ひとりの人間としての関係性を重視しています。また健康寿命と寿命との間に10年間、介護が必要な期間があるといわれていますが、その期間をできるだけ縮めたい。ご自分で食事ができて充実した生活をする時間をなるべく長くしていくために、お役に立ちたいと思っています。最近はオーラルフレイルなど加齢に伴う口腔機能の衰えが問題視されていますので、「食事に時間がかかったり、むせてしまったりするのだけど、どうすればいいの?」という方は、ご相談ください。
どのようなときに、歯科医師としてやりがいを感じますか?
私は昔から人と接することが大好きで、将来は人と深く関わっていける仕事がしたいと考えていました。歯科医師の道を選んだのも、患者さんとの関係性を大切にしている父の姿を見て育ったからです。いずれは後を継ぐつもりでしたので、少しでも地域の患者さんと長くお付き合いをしていきたいと、大学卒業後はすぐに当院で働き始めました。初めにお口の中全体の治療を任されたのは卒業して2ヵ月くらい。その患者さんには、もしかしたらご迷惑をかけたかもしれないけれど、今でも通ってきてくれているんです。そういうふうに長く通ってもらえると、「自分のやったことは、ある程度評価されたんだな」という充実感があります。幼い頃も歯科医師になってからも地域の皆さんにお世話になってきたので、恩返しという意味でも一度診た患者さんは最後まで責任を持って治療をしたい。訪問診療をしているのも、継続して診ることにこだわっているからです。
なんでも気軽に相談できる、身近な歯科医院でありたい
日々の診療で、心がけていることを教えてください。
始めに治療計画を決めてしまわないことですね。治療計画ありきだと融通が利かなくなり、患者さんにとって不満の残る治療を強いられることもあります。ですから治療を進める中で、「今この歯はこんな状態ですが、どうしましょう?」と、いくつかの選択肢をご提示した上で、コミュニケーションを取りながら治療方針を決めています。当院には「他では駄目だと言われたけれど、歯を抜きたくない」と来院される患者さんもいらっしゃいます。「あと何年使えるかわからないけれど、ブラッシングやクリーニングを頑張れば、今は抜かなくて済むかもかもしれない」。そんな患者さんの思いを重視して、なるべく最小限の治療で、なるべく幸せな人生を送っていただくために、どうすれば良いかを一緒に考えて、患者さんが納得できる方向を選んでいただきます。インフォームドコンセントというより、インフォームドチョイスですね。
お忙しい毎日だと思いますが、何かリフレッシュ法はありますか。
勉強会で地域に出向くことも多いので、街を散策して、その土地ならではのおいしいものをいただくことを楽しんでいるのですが、料理を作るのも好きなんです。休みの日に家族のご飯を作ることも、リフレッシュの一つです。ご高齢の方に調理法を教えることもあるんですよ。例えば保健師さんに「お肉を食べなさい」と言われると、焼肉やステーキをイメージしてしまって、「肉は固くて食べられない」と困っている。そこで「お肉もいろいろ種類があるでしょう。ひき肉を使えばどう?」と、コロッケや、ひき肉を使ったキーマカレーの作り方を教えてあげるんです。自分が調理をするので、なるべく簡単な方法でね。そういう意味では私の料理好きが、少しは患者さんの役に立っているのではないかと思います。
新しく取り組みたいことなど、今後の展望をお聞かせください。
0歳児からの歯磨き練習やフッ素塗布、高齢者のオーラルフレイルなど、各世代の予防にもっと時間をかけたいです。そのためにマンパワーを増やして、私だけではできないこともスタッフの力を借りながら、歯科医院としてのスキルアップを図りたいと考えています。この辺りは海にも山にも近く、その環境が好きで住んでいる方も多いです。地元ならではのマリンスポーツなどを楽しむためにも、健康でなければ意味がありません。健康に気をつけて人生を楽しむことにシフトできるよう、お口から健康を守るお手伝いをしたいのです。私も地元民なのでプライベートでも、患者さんとお会いしますしね。あまり壁がないというか、ハードルの低い歯科医院ですので、気楽に来ていただきたいですね。