はるやま医院 (宮崎市/田吉駅)
久 容輔 副院長の独自取材記事
南宮崎駅より車で10分の場所にある「はるやま医院」は内科・外科・肛門外科・心臓血管外科を標榜。2023年に久容輔(ひさし・ようすけ)先生が副院長に就任して以来、診察内容に「下肢静脈瘤」が加わった。久副院長は、鹿児島大学病院、国立病院九州循環器病センター(現・鹿児島医療センター)などを経て、宮崎県立宮崎病院で医長と部長を務めるなど、心臓血管外科一筋に経験を重ねてきたベテラン医師だ。また国立循環器病研究センターで再生医療の研究や、ハーバード大学での研究員といった経験も持つ。同院ではその豊富な実績を生かして下肢静脈瘤の診察と手術を担当している。「医師は患者さんに安心していただくための仕事であり、信頼関係が大切」という考えを根本に持つ久副院長に、これまでの道のりや同院での取り組みについて話を聞いた。
幼少時から「心臓血管外科」一択で邁進
先生が医師をめざしたきっかけを教えてください。
幼稚園の頃に「家庭の医学」という本で人体のイラストを目にした時から、医師という職業に憧れを持っていました。その後、小学生の時にテレビで心臓手術のドキュメンタリー番組を見たのですが、心臓を氷で冷やして止めて手術をしているのを観て、そんなことができるのかととても驚いたんですね。そこからさらに興味を持つようになり、「心臓血管外科の医師になろう」と決意しました。
心臓血管外科一択で進学されたのですね。
外科というのは命に関わるので、常に努力が必要な仕事です。私は生来怠け者のほうなので、そうした厳しい環境に身を置いたほうが良いだろうと思ったのも、心臓血管外科を選択した理由の一つかもしれません。新米医師時代は何日も自宅に帰れず、まったくお金もなくて、お弁当すら買えないこともありましたが、毎日が楽しく充実していました。卒後6年目からは再生医療やブタから人への臓器移植をする異種移植などの研究職に5年間ほど従事しました。その間は手術に携わることがなかなかできませんでしたが、鍛錬を重ねてようやく夢をかなえることができました。
副院長に就任するまでの経緯を教えてください。
大学卒業後は鹿児島大学病院、宮崎県立宮崎病院、国立病院南九州循環器病センター(現・鹿児島医療センター)などの心臓血管外科に勤務していました。国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)で骨髄単核球細胞を用いた心筋再生の研究をしていたところ、再生医療部部長の推薦でハーバード大学移植生物学研究所へ行くことになり、そこでも研究員として約2年間勤務していました。帰国後も関連病院で臨床に携わり、最終的に宮崎病院の心臓血管外科医長と同科部長を勤めさせていただきました。その後は2021年からいきめ大腸肛門外科内科に勤務し、同院副院長を経て、2023年から現職となっています。私は鹿児島県出身ですが、宮崎にはかれこれ18年間在住しています。
患者との信頼関係を重視して下肢静脈瘤の手術を実施
診察の際に心がけていることはありますか?
医師に求められていることは、患者さんに「安心」を与えることというのが私の根本的な考え方です。ですから患者さんとお話しする際は、医学用語や英語を使わずにわかりやすく会話することを心がけていますし、検査の結果であまり良くない状況をお伝えするときも、必ず最後には「大丈夫ですよ」と声をかけることにしています。このクリニックで心臓自体を診ることはほとんどありませんが、病院勤務時代は手術の説明も絵を描くなどしてわかりやすく伝えるように努めていました。やはり心臓手術というのは生きるか死ぬかの一大事で、患者さんにとっては相当きついことですから、医師との信頼関係が必要です。手術前には「元気になったら何をしたいですか」「歩いて帰って元気に遊べるようになりましょうね」と必ずお伝えするなど、コミュニケーションを大切にしていました。
先生は下肢静脈瘤がご専門だそうですね。
病院勤務時代から下肢静脈瘤の手術に執刀していました。こちらではそれに加えて血圧のコントロール、足のむくみの原因となる深部静脈血栓症やリンパ浮腫も下肢超音波(エコー)検査を用いて診断および対応を担当しています。下肢静脈瘤は40歳以上の女性に多い病気です。重力に逆らって足の血液を心臓まで戻す役目を担う静脈には、筋肉によるポンプ作用や血液を逆流させない弁があります。下肢静脈瘤のほとんどは、この弁がきちんと閉じなくなり、足の静脈に血液がたまってこぶのように膨らんでしまいます。良性疾患ですが、進行性の病気なので自然に治ることはありません。痛みなどはほとんどなく、足がつったりだるさやむくみなどがあったりします。放置すると湿疹や色素沈着、重症化すれば皮膚潰瘍にまで進み、治療が難しくなります。治療法は手術がベストですが、手術が嫌だという場合は無理に勧めず、ほかの方法を提案しています。
最近目立つ主訴はありますか?
やはり下肢静脈瘤の患者さんが多いですね。最近の手術の主流は、カテーテルで接着剤を静脈内に注入してふさぐ「血管内塞栓術(グルー治療)」で、当院では幅広い年齢層の患者さんに行っています。足の1ヵ所に痛み止めを打ち、20分ほどで終了する上に手術当日も含め、日常生活にほとんど支障がないのがメリットです。体内に接着剤が残るため、アレルギー反応や赤みが出ることもありますが、ほぼ1ヵ月程度で落ち着きます。静脈の中にカテーテルを挿入して120℃の熱で焼灼する「血管内焼灼術」という方法もありますが、これはグルー治療に比べると少し痛みを伴います。患者さんに「痛い」と言われるととても心苦しくなるので、どちらの手術でも常に「痛いですか?」と患者さんに確認しながら進めるようにしています。
すべての患者との思い出を胸に全力で診察にあたる
これまで印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。
手術や病気の大小に限らず、これまで関わってきた患者さんはすべて印象に残っています。中には私の力不足で亡くなってしまった方もいらっしゃいますし、勤務医時代からいまだにお付き合いのある患者さんもいらっしゃいます。そうした患者さんからは今もお礼の言葉を頂戴することもあって、うれしいですね。どの患者さんとのエピソードも、私の大切な思い出です。
休日はどのように過ごされていますか?
休日は仕事のことは一切考えずにリラックスするようにしています。家庭でも仕事のことなどは話しません。わが家は家族それぞれが多忙で顔を合わせる機会が少ないので、休日に全員がそろえば一緒に外出するようにしています。趣味は特にないのですが、唯一好きなのが「道の駅」を巡って地元の特産物などを買ってくることです。一人で行くこともありますし、子どもや妻に付き合ってもらうこともありますね。
最後に今後の展望とメッセージをお願いします。
これまで培ってきた経験をフルに生かしながら、私ができることで患者さんのお役に立てることはすべてやっていきたいというのが以前からの私の展望です。下肢静脈瘤は、症状が出たら診察を受けたほうが良い病気です。足のむくみや皮膚の変色が気になる、皮膚の表面がぼこぼこしてきた、こむら返りやしびれがよく起きるといった症状があれば、すぐに受診してください。ただ、下肢静脈瘤を放置していると足の血栓が心臓に飛んで……という話をよく耳にしますが、その可能性はほとんどありませんので安心してください。中には症状がわからずに皮膚科や整形外科を受診される方もいらっしゃいますが、専門の医師が診察すればすぐにわかります。お気軽にご相談ください。