ふじえだファミリークリニック (四国中央市/伊予三島駅)
藤枝 俊之 院長、藤枝 育世 副院長の独自取材記事
四国中央市にある「ふじえだファミリークリニック」。日本小児科学会小児科専門医である藤枝俊之院長と、院長の妻で日本皮膚科学会皮膚科専門医の藤枝育世副院長という2人体制により、小児科と皮膚科が連携して診断・治療を行う。「みんなの健康のために、みんなの笑顔のために」をモットーとして患者に寄り添う二人は、病気の診療にとどまらずかかりつけ医として産まれて間もない子どもの成長を見守り、思春期のケアや大人の健康相談などにも注力。今回はそんな両医師に開業の経緯や地域医療への思い、今後の展望などをたっぷりと話してもらった。
地域のかかりつけ医をめざして
お二人のこれまでの経歴を教えてください。
【俊之院長】もともとわが家は3代続く小児科で、祖母がこの地域で半世紀以上前に開業し、父の代には有床の小児科専門病院として入院患者さんも受け入れていました。私自身もそんな家族の背中を見て医師を志し、日本大学医学部を卒業後、同大学の附属病院で研鑽を積みながら、市中病院で勤務していました。その後急逝した父の後を継ぐため地元に戻り、2003年に皮膚科医師の妻とともに、今の場所に改めてクリニックを開院した形となります。
【育世副院長】私も父が内科医で、その姿を見て育ったので医療に携わることには関心がありました。皮膚科を選択したのは、自身が幼い頃から皮膚のトラブルが多く、一番身近だったのがきっかけだと思います。皮膚は目に見える部位ですから、自分の手で治療を行った経過がはっきりわかる。そこに面白味を感じますね。私も院長と同じく日本大学医学部を卒業して東京で研鑽を積み、一緒に愛媛に移住してきました。
診療において大切にしていることとは?
【俊之院長】子どもの風邪と思われる症状には、実は大きな病が隠れている可能性があり、それを見抜くのが小児科たるところ。ベースとなるのはしっかりとした診療です。当院ではより精密なスクリーニングができるように検査機器もそろえ、早期発見に注力。重大な疾患や成長に影響を及ぼす症状を早く見つけて支援をする、手を差し伸べるのがわれわれ小児科の仕事だと考えています。また、小児科というのは、成人に至るまでサポートする場です。最近は不登校やストレスなどの問題を抱えている子どもが多いので、そんなつらい状況に置かれている思春期の子どもたちのケアをすることも小児科の役割と考えています。
育世先生は診療においてどんな点を心がけているのでしょう。
【育世副院長】皮膚の疾患は見た目でわかりますから、心のケアも大切。なかなか良くならないときでも治療のモチベーションを保ちながら、一緒に頑張っていきましょうという姿勢で寄り添いたいと思いますし、それが皮膚科医師としてのやりがいでもあります。またアトピー性皮膚炎の治療においては、症状をコントロールして、患者さんにストレスのない人生を送ってもらうこと。それが大きな目的です。見た目が気になる方、かゆみがつらい方、悩みやつらさの種類は人それぞれ違うので、まずはそこを取り除いていく。それから保湿剤やお薬を塗ることなど患者さんご自身のケアも重要ですが、忙しい日々を送る皆さんにあれもこれもとお願いしては負担に感じてしまうかもしれません。治療がプレッシャーになってはいけませんから、できることから少しずつ。一人ひとりに合わせた治療計画のご提案を心がけています。
2つの科による連携で子どもや周囲の家族もサポート
小児科と皮膚科が連携することでのメリットはどんなところでしょうか?
【俊之院長】新生児の受診理由で多いのは湿疹ですが、生まれた後のスキンケアが将来のアレルギー疾患に対して重要になってくるといわれる昨今ですから、小児科と皮膚科がタイアップしているのは当院のキーとなる部分です。
【育世副院長】アトピー性皮膚炎の患者は子どもの割合が高いので、小児科の観点から栄養指導や体重管理、健康管理などを一緒に診てくれるのは大きいですね。皮膚科単体だと、どうしても皮膚だけしか診られないところもありますが、連携していることでより奥深く診療できることは強みだと思います。またアトピー性皮膚炎をきっかけに喘息を起こし、そこから鼻炎や花粉症の発症につながるというアレルギーマーチを断ち切るためにも、両科で連携した診療に注力しています。
院内には病児保育施設も併設しているとお伺いしました。
【俊之院長】小児科として子どもたちの健康を支えるのはもちろんですが、子どもたちの健康は何より周囲の家族や地域の人々の支えあってこそ。そういった点を踏まえ、当院では仕事や急な用事が入ってしまった保護者の代わりに、病気のお子さんを預かる病児保育ルーム「エミリア」を併設しています。小児科医院の中にある施設のため、医師や看護師、保育士が常駐してお子さんの看護・保育を行えるのが大きなメリットでしょうか。万が一の時も、病気の子どもたちのエキスパートがすぐ対応できる環境なので安心してお子さんを任せられそう、と保護者の方からうれしいお言葉を頂くこともありますよ。大変な子育てを保護者だけが抱え込まないようにするには、地域全体でのサポートが必要ですからね。
今回のコロナ禍においても、より患者さんの負担を減らすための設備を新設したそうですね。
【俊之院長】以前から院内での待ち時間を減らし、患者さんがそれぞれの車内で待機できる待合システムなども導入していました。今回新型コロナウイルスの流行を受けて院の建物1階部分に新しく簡易診察室を設置し、患者さんが院内に入らずとも診察が受けられる「ドライブスルー診療」の形式も新たに取り入れています。駐車場で待機いただいている患者さんのもとに医師のほうから出向き診察することで、患者さん同士の接触はもとより、場合によっては医師本人も患者さんとの直接接触を防ぎながら診療できる形を導入しました。もともと小児科という場所は、病原菌の感染という事象は非常になじみの深い分野でもあります。新型コロナウイルスに限らずさまざまな病気の患者さんを診ていく上で、このドライブスルー診療は大きなメリットのあるスタイルではないでしょうか。
家族や地域を丸ごと支えるファミリークリニックに
院内の至るところに出没している「リス先生」が気になります。
【俊之院長】これは開業5周年の記念に当院のスタッフがつくってくれたオリジナルキャラクターです。私に似ているからリスになったようですよ(笑)。子どもたちが「リス先生」と呼び始めて、その名が正式名称になりました。キャラクターというのはすごい力がありますね。
医師としてやりがいを感じる瞬間はどんな場面でしょうか?
【俊之院長】一番の魅力はね、子どもの若いエキスを吸い取ること(笑)。子どもたちの笑顔は最高ですよ。病院というのは病気を治すところですが、治しても日々の生活が笑顔で送れないのは悲しい。ですから、子どもとご家族の健康と笑顔のために、私たちがいます。
【育世副院長】小児科に通っていたお子さんが大きくなったら皮膚科を受診されて、次は子どもが生まれて小児科に受診して……とご家族とのお付き合いがつながっていくのはとてもうれしいですね。また母親としての悩みは私にご相談いただくこともあります。母乳や離乳食のこと、家事や仕事と子育ての両立の大変さですとか……。母親だからわかることもあるので、そういったことは実体験をもってご相談に乗るようにしています。院長がお父さん、私がお母さん的な立ち位置で患者さんに寄り添えたらいいなと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
【俊之院長】医療機関というのはただ病気を診るところではなく、地域の健康や安心のよりどころでもあります。小児科・皮膚科という専門性に加えてかかりつけ医としての役割も担うことを意識しています。また当院では基幹病院に加え、保健センターや障害のある子どもの施設などの施設とも連携。地域で子どもと家族を支えるファミリークリニックになる。その水先案内人として地域貢献できたらと思います。
【育世副院長】皮膚科の専門医師として、地域の方々の皮膚のお悩みを一緒に解決していきたいと考えています。西日本のほうが紫外線が強い傾向にあるといわれることと関連してか、皮膚がんになる前の段階である、前がん状態で受診される患者さんも多いです。しみと思っているものが実は皮膚がんだったという可能性もありますから、長年農作業をされている方、海などに行くことの多い方など気になる症状のある場合はお気軽にご相談ください。