正岡眼科 (今治市/今治駅)
正岡 佳樹 院長の独自取材記事
1994年に開業し、30周年を迎える「正岡眼科」。正岡院長は、東京で培ってきた進歩した眼科医療を地域に還元したいとの思いから地元今治での開業を決意したという。「患者の負担になるようなことはしない、親切な医療」をモットーに、一人ひとりの症状の背景をひもとき、極力薬や手術に頼らない診療に努めている。とはいえ、院長は数多くの白内障手術に携わってきたその道のスペシャリスト。「QOV(見え方の質)」にこだわり、それぞれの患者に適した眼内レンズを選択することで、患者のQOL(生活の質)向上をめざしている。「今後もアップデートを重ねて、患者さんのためになる良質な医療を提供し続けたい」と語る院長に医業40年の思い、診療において心がけることなどについて聞いた。
原因療法に努める、患者に親切な眼科医療
クリニックのコンセプトについて教えてください。
当院を開業した1994年頃は、まだ白内障の手術が全国的に進んでいなかった時代でしたから、私が東京で学んだ進歩した眼科治療を地元の患者さんに提供したいという気持ちからこの地で開業しました。それから30年がたち、今は眼科にもさまざまな分野があります。どの分野に対しても新しい知識を入れて、常にアップデートを重ねて患者さんのためになりたいと願ってきました。どんなことで受診していただいても、対応できるように今も勉強を重ねています。
医師を志したきっかけについてお聞かせください。
正岡家は3代続く医者の家系なんです。祖父は軍医、父は産婦人科医でした。私は進学した昭和大学医学部で眼科を選びました。卒業後は昭和大学病院で研鑽を積み、沖縄の病院へ1年出張し、次に御代田中央記念病院で2年、浜松の県西部浜松医療センターで4年勤め、1994年に今治へUターンして開業に至りました。故郷での開業を決めたのは、中央での経験を生かし地域医療に貢献したいという思いからでした。今の時代はどこにいても同じように情報は手に入りますが、30年前はそうはいかなかった。東京や浜松で実際にアップデートされた医療を目の当たりにし、現場で得た知識を持っている自分だからこそ地域でできることがあると思ったんです。
診察の際に心がけていることはどんなことでしょう。
無駄なことはしないということですね。「医は算術なり」という言葉がありますが、医療を使ってもうけるにはさまざまな手段があります。しかし医師がもうけることは、患者さんに負担をかけることです。私が考える無駄のない医療は、患者さんのためになることだけを行う「親切な医療」です。診察において心がけているのは、目の前の患者さんの症状、その原因に寄り添うこと。ただ薬を出すだけでは根本的な解決は望めません。なぜその症状が起こったのか、何に気をつけたらいいのかということまで話をしないと、親切な医療とはいえませんよね。どの病気に対しても原因はあるわけですから、その根本的なことを説明しないといけない。それが親切な医療だと思います。
見え方の質を高め患者のQOV・QOL向上をめざす
有水晶体後方眼内レンズ(眼内コンタクトレンズ)手術を手がけるようになったきっかけを教えてください。
近視矯正の治療として、以前はレーシックも扱っていたのですが、角膜を削るため、一度手術をしたら元の状態には戻せないというデメリットがありました。小さく薄い眼内コンタクトレンズを目の中に埋め込む方法なら、万が一不具合が生じた場合は、レンズの抜去や取り替えもできますが、基本的に白内障手術に至るまでは、埋め込んだままになります。また、レーシックは強度近視の人や角膜が薄い人には適していませんし、近視が強いと角膜を削る量が増えるため強い近視の患者さんの場合、視力の改善が見込めても見え方の質が悪くなるといった問題がありました。眼内コンタクトレンズは、そうした強度近視にも対応できる治療です。
印象深い患者さんとのエピソードを教えてください。
医師になって40年になりますが、最初に手術をした患者さんは忘れられませんね。あれは医師免許を取得した1983年の12月、患者さんのお名前もはっきりと覚えています。誰だって、初めて手術をする医師にはあたりたくないはずですが、それでもその患者さんは私を受け入れてくださいました。本当に感謝しています。初手術を終えると、眼科医局のメンバーが集まって私の手術映像の鑑賞会をしたんです。そうしたら、手術に厳しい教授が褒めてくれたんですよ。このことがきっかけとなり、患者さんにとって安全かつ負担の少ない手術をめざすようになり、1997年9月より「プレチョップ法」で白内障手術を行っています。ホームページにも詳しく載せています。
眼内コンタクトレンズや白内障の治療の際に挿入するレンズにもこだわっているそうですね。
眼内コンタクトレンズも白内障手術も見え方をどう改善へ導くか。そのためには眼内に挿入するレンズの度数や種類の選択が肝心です。当院の白内障手術では単焦点、多焦点の遠近両用、乱視矯正など30種近くのレンズを取り扱っています。術前に行うさまざまな検査結果をもとに、どんなレンズが合うのかをカウンセリングします。お客さまの好みに合わせてワインを選ぶソムリエのようなものですね。当院には非常に優秀なレンズソムリエが在籍し、患者さんの目の状態と希望する見え方を踏まえて提案しています。人間は外界からの情報の8割が視覚情報といわれていますから、見えないことは相当なストレスになりかねません。やはり、こだわっているのは見え方の質。これがQOLの向上にもつながってくると思うんです。
他に注力されている診療について教えてください。
一番は屈折矯正ですね。要するに見え方にアプローチする治療です。開業以来注力している白内障の手術はもちろん、小さいお子さんであれば遠視による弱視などの治療、小学校に上がる頃になると今度は近視の子が増えてきてその対応もあります。学校健診で引っかかったことで初めて眼科を受診されるお子さんも多いのですが、当院ではなぜ近視になるかという仕組みをまず説明します。メカニズムをわかっていないとどう気をつけたらいいかわかりませんよね。「もう少し悪くなったら眼鏡を作りましょう」と伝えるだけでは不親切です。現状とどうしてそうなったか、今後はどうしていけばいいかをしっかりと解説するようにしています。その上で近視が進んでしまった場合は、眼鏡やコンタクトレンズなどを提案する流れですが、大人の方で眼鏡やコンタクトレンズの装着を避けたい患者さんに対しては眼内コンタクトレンズをお勧めしています。
幅広い年齢層の治療へのこだわり
患者さんの年齢層はいかがですか。
赤ちゃんから上は90代の方まで幅広いですね。特に私はこれまでに数多くの白内障手術を担当してきました。白内障の手術は全身的な負担が少ないので、何歳になっても可能です。「もう年だから手術はしたくない」という方も多いのですが、見えないことで脳への刺激が減り、認知症が進行するという研究報告もあるように、何歳になっても見えることは大切なことなのだと思います。認知症の方が白内障手術の後、見違えるように表情が変わったというケースもあります。ご本人の希望があれば何歳でも遅いことはありません。
近年、お子さんに多い主訴や注力されている治療はありますか?
最近はドライアイと近視のお子さんが増えていますね。スマホが普及したことが一因として挙げられます。まばたきは本来は10秒に1回くらいするものなんですが、画面を集中して見ているとまばたきを忘れてしまい、目が乾いてしまいます。子どもの大切な目を守りたいですから、きちんと原因に寄り添い、症状が進行しないようアプローチしていけたらと考えています。当院では、子どもの近視の治療としてオルソケラトロジーを提案しています。これは夜寝ている間に特別なハードコンタクトレンズを装着することで近視を一時的な回復に導き、日中は裸眼で過ごすことが期待できるという治療方法です。
最後に、患者さんへのメッセージをお願いします。
とにかく親切な医療を心がけています。病気についてわからないことがあれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。セカンドオピニオンをご希望の方も、お困り事があれば気兼ねなくご来院ください。しっかりと診察、検査を行い、自分なりの考えをお伝えできればと考えています。