いくま整形外科 (西宮市/洲先駅)
伊熊 孝紘 院長の独自取材記事
西宮市上田西町。団地やマンション、戸建て住宅などが並ぶ町で、30年以上の長きにわたって地域に根差した診療を続ける「いくま整形外科」。今年4月に理事長である伊熊貢秀先生から同院を継承し、院長に就任したのが、息子の伊熊孝紘先生だ。日本整形外科学会整形外科専門医の資格を持ち、兵庫医科大学病院、西宮回生病院、聖和病院、宝塚市立病院などでの勤務医としての経験を生かし、患者一人ひとりのニーズに寄り添った質の高い医療を追求している。その穏やかな話し方から、裏表のない真摯な姿勢で患者と向き合うドクターであることがうかがえる。プライベートでは2歳の子どもを持つ父親でもある伊熊院長に、診療に対する思いや力を入れている分野について、たっぷりと語ってもらった。
西宮地域の人たちが気軽に集える医院をめざしたい
まず、こちらの医院の成り立ちについて教えてください。
ここはもともと父が1988年に開業をした医院です。ちょうど武庫川団地などが近隣に建ち始めた時期で、町の整形外科医院として受け入れていただき、長年にわたって地域に根差した診療を続けてきました。今年4月には私が2代目として医院を継承したかたちです。小さな頃から父の背中を見て医師になりたいと思っていて、早い段階から父の後を継ぎたいと思っていたので、自然な流れだったと思います。私は生まれも育ちも西宮なのですが、この地域には明るい方が多く楽しく診療させていただいています。昔からある団地の他に、住宅街やマンションなどもできてきて、高齢の方から若い方まで幅広い年齢層の方が当院に通ってくださっています。
新院長になって、思い描く医院のかたちなどはありますか?
地域の方々の寄合所のような存在になりたいと思います。当院は標榜科目の整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科の他にも、切創(きり傷)、挫創といった外傷の治療を行う一般外科、各種健康診断や新型コロナウイルスワクチン、インフルエンザや肺炎球菌などの各種予防接種にも対応しています。また、高血圧や高脂血症などの一般内科も診察・治療しています。当院で対応できない場合には適切な専門の医療機関をご紹介しています。「こんな症状のときには何科へ行けばいいのだろう」と悩むこともあると思うのですが、そのような時にも気軽に相談していただけるような場所でありたいですね。
患者さんと接する際に先生が大切にしていることは何ですか?
できるだけわかりやすく説明をするということですね。私は特にデータを出すということを重要視していて、画像や数字、模型などを使いながら患者さんに説明をします。そのほうが患者さんも理解がしやすいと思うんです。また、どんな患者さんに対しても自然体で接するということを心がけています。当院には、看護師、放射線技師、理学療法士、看護助手、リハビリ助手、受付など多数のスタッフがいますが、その点についてはスタッフたちもとてもよく理解していて、特に私から何かを伝えなくても、安心して任せることができるので心強いですね。小さなお子さんから高齢の方まで幅広い年齢の方が来院しますが、皆さんに対して心のこもった質の高い医療を提供していきたいと思います。
骨粗しょう症の予防・治療に注力、健康寿命を延ばす
先生は骨粗しょう症の予防・治療に力を入れていると伺いました。
高齢者が寝たきりになってしまう原因のかなりの割合が、骨粗しょう症など整形外科領域に関することで起こっているといわれています。私はもともと外傷を専門にしていたのですが、高齢者の外傷骨折の主な原因は、骨が弱くなっていることでした。勤務医時代にそのようなケースを数多く診てきて、予防と治療の必要性を強く感じていました。日本には骨粗しょう症の患者さんが1200万人ほどいるのに対し、実際に治療を受けているのはわずか20%ほどだといわれています。当院に長年通っている患者さんの中にも、骨折をしたことが原因で通院が困難になってしまう方も多くいらっしゃいました。骨粗しょう症はきちんと治療を行えば、骨折のリスクを半分以下まで抑えることが期待できるので、一人ひとりの健康寿命を延ばすためにも、積極的に予防と治療に力を入れていくことが大切だと考えています。
骨粗しょう症を予防するために大切なことは何でしょうか?
やはり検査によって早期発見をすることだと思います。ところが、その検診率も日本はまだまだ低く、関西も決して高くありません。検査自体は最短5分程度で負担の少ないものです。閉経を迎えた女性や、60歳以上の女性で一度も骨密度を測ったことがない方、男性の場合は70歳以上の方は一度検査を受けることを推奨しています。当院の骨密度検査ではDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)を用いた骨密度測定装置を導入していて、腰椎と大腿骨近位部の両方を測定することができるため、足首や肘で測定するよりも適切な測定が可能です。ご家族に大腿骨骨折歴のある方がいる場合や、患者さん本人が喫煙・飲酒歴のある方、関節リウマチ、糖尿病、栄養失調、早期閉経、甲状腺機能亢進、副甲状腺機能亢進、ステロイドを内服中の方も、骨密度が低下している可能性がありますので一度検査を受けていただきたいです。
骨粗しょう症の予防と治療についても教えていただけますか?
当院ではWHOが出している骨折リスク評価を使い、今後10年間での骨折率が何パーセントくらいなのかを患者さんにお伝えしています。その上で、骨密度検査と血液検査の結果と併せて、骨折リスクの高い方には治療をお勧めしています。当院では骨折率の高さに応じて複数の薬を使い分けていて、患者さんと相談しながら治療を行います。また、ビタミンDをはじめとするビタミン系やカルシウムをどれくらい摂取できているのかを見ながら、薬だけでなく食生活や運動の指導も並行して行います。骨粗しょう症の方は、転ばないように注意が必要なんですが、だからといって家の中で安静にしていれば良いかというとそうではありません。体を動かさないでいると、かえって骨折を起こしやすくなってしまうので、外に出て歩くことをお勧めしています。当院に通うときにも、ぜひ歩いて通ってくださいとお伝えしています。
患者にとって親しみやすく良き相談相手でありたい
お忙しい毎日だと思いますが、プライベートではどのようにお過ごしですか?
娘と妻と一緒に出かけることが多いです。娘は2歳なのですが、少しずつおしゃべりも上手になって、とてもかわいいです(笑)。新型コロナウイルス感染症の感染拡大前は運動をしていましたが、最近は全然できていませんね。整形外科の医師というのは、結構運動をバリバリやっている先生も多くて、サッカーをやったり、自転車のチームをつくって六甲山を登ったりする方もいるんですよ。僕はもともと水泳やスキューバダイビングをやっていたんですが、将来子どもが大きくなって、新型コロナウイルス感染症の流行も落ち着いてきたら、ぜひ一緒にやりたいですね。
今後の展望について教えてください。
基本的には父の代からそのまま引き継いだ状態で、いろいろと手を加えていきたいと思っているところはあるものの、実際にはまだそこまでできていない段階です。今後はエックス線撮影装置を新しいものにするなど、設備面でもアップデートしていきたいですね。今後は、スタッフを増やして、理学療法やリハビリ環境をさらに強化していきたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
医院を継承して半年ほどがたちました。今後も、これまでの経験と整形外科専門医としての知識を生かし、小さなお子さんから高齢の方まで幅広い年齢の患者さんに、質の高い医療の提供に努めていきたいと思います。患者さんには、整形外科の領域に関わらず、どんな些細なことでも気軽に相談していただきたいですね。当院では兵庫医科大学病院や西宮回生病院、西宮協立脳神経外科病院といった病院をはじめ、近隣の医院とも連携をしていますので、症状を聞いた上で適切な医療機関へ紹介させていただきます。地域のかかりつけ医として、親しみやすく、良い相談相手となれるような診療をめざしていきたいと思います。