金子医院 (蕨市／蕨駅)
金子 健二 院長の独自取材記事
蕨駅より徒歩8分、50年ほど前に開院した「金子医院」がある。1年前に1階部分をリニューアルし、自動ドアとバリアフリーを導入。中庭も手入れが行き届き、広々とした造りだ。院長の金子健二先生は、65歳という年齢を感じさせないバイタリティーあふれる医師で、現役として走り続ける。放射線科での経験が長く、画像診断を得意とした診療を行っているのも同院の特徴といえるだろう。画像診断は医療の一部ではなく、医療の基礎と金子先生は考え、診断精度を維持するため他院でフィルムの画像診断も手がけ、日々研鑽を積んでいる。正確な診断には、患者も正直に語ってくれることが大切とし、患者と信頼関係が築けるように努力も惜しまない。日々の診療や同院について、金子先生に話を聞いた。
訪問診療や往診にも駆けつける忙しい日々
こちらの医院はお父さまから継承されたそうですが、経緯などをお聞かせください。
前院長の父が開院したのは、今から50年前でしょうか。私には兄がいて、小児科の医師なので兄が継承する予定だったのですが、白血病を主に扱っていたこともあり、放射線科で画像診断ができる私のほうが開業に向いていると継承の話が来たことがきっかけです。継承したのは1989年で、本当は3〜4年勉強を積んでからと思っていたのですが、その前に父が亡くなってしまい、急きょ引き継ぐことになりました。私は父が医師として働く姿をよく見ていたので、同じような仕事をしてもいいかなという思いもあり、もともと自分の特技だった画像診断を生かした診療をやっていこうと決意したんです。
1年前にリニューアルされたそうですね。
1階だけリニューアルしました。当院は、2階に点滴室が2つあり、子どもの予防接種や待合室として使っています。1階は診察室やレントゲンといった検査室があります。リニューアルで導入したのは、バリアフリーと自動ドアです。それから、以前はガラス張りの仕切りだった受付をオープンにしています。照明も明るめにしてありますし、冬でもガラス越しに暖かい日差しが差し込みますから、風をシャットダウンできて温室のようです。椅子で眠ってしまう方もいるくらいですよ。中庭は患者さんにも好評で、父と母がきれいに手入れして来たので、もう少し手を加えたいなと思っています。患者さんが花を持って来てくださることもあるんです。リニューアルしたかったのは、ものを整理して処分したいという思いもあったからです。
患者層などをお聞かせください。
近隣の方が中心ですが、引っ越しされた方も継続して来院されます。父のときからの患者さんもいますし、蕨市自体が高齢化が進んでいることもあり、高齢の方も多いです。父が亡くなりだいぶたちましたが、今でも私の声を聞いて、「大先生はどこですか？」とおっしゃる方もいますね。声が父と似ているというだけで、私に親しみを持ってくださる方もいるようです。また、現状どうしても通えない患者さんに対しては、往診や訪問診療も対応しており、個人宅に訪問したり、民間老人ホームから依頼されることもあります。
画像診断の技術精度を維持するために勉強を続ける
診療時に心がけていることはありますか？
なるべく話を聞くようにしています。患者さんからも話を聞いてくれる先生だと言ってもらえます。ですので、どうしても話が長くなり、お待たせしてしまうこともあります。ですが、せっかく来院くださった患者さんに対してしっかりと話を聞きたいと思っています。患者さんは私と話すときは緊張してしまい、予想外の病気の話をすると混乱してしまうこともあります。ですから、話が頭から消えないように、理解してもらえるまで何度も同じことを説明しています。わかりやすく伝えなければ、患者さんは理解できませんよね。帰ってから何だかわからなかったと電話が来ることもありますから、なるべく紙に書くようにしています。最近は外国人の方、特に中国やフィリピンの方が増えて、言葉がわからなくて困るケースもあるんです。レントゲンを見せてもどこが病気がわからない。それを絵に描いて、白くなっているところが病気ですよとお伝えするんです。
先生が得意とする画像診断についてお聞かせください。
画像診断は、あくまでも医療の中のごく一部ですが、すべての科の先生が関連している医学の基礎です。診る・音を聞く・触る・データを見るといった診察をし、そのあと画像診断を考慮して総合的に診断します。画像診断が診断の決め手となることも非常に多いです。ですから、画像診断ができないと困ると思いますし、できない先生であれば、他の先生と連携して診療することも大切だと私は考えます。子どもは胸の画像を撮るのは難しいのですが、撮り方は普通とはちょっと違ってそれなりの工夫が必要です。私はそのあたりが得意ですね。
蕨戸田市医師会の会長を務められ、診療以外でもご活躍ですね。
会長職に就いて10年以上たちますね。医師会では、地域の先生同士で協力して地域住民の健康をサポートできるよう努めています。先生方によって専門にしていること、得意にしている診療領域が異なりますから、上手に連携していきたいですね。
正確な診断には正直に語ってもらうことが大事
お忙しいと思いますが、休日はどのように過ごしていますか？
今はなかなか休みが取れないので、時間があるときはゆっくりしていますね。大学卒業後は、テニス・ヨット・スキーなどをやっていましたが、自分も年を取ってきたせいもありますし、どれも友人が集まらないとできないことばかりなので。医師会にも運動サークルはあるんですが、時間が許さなくてなかなか行けなくなりましたね。休日は普段行けない訪問診療や、土曜に行っている病院が行けなかった場合は日曜に画像診断をしに行っています。訪問診療を始めてから、医師会の旅行や会議以外ではほとんど休みはないですよ。1時間の訪問診療のために午前か午後に時間を取らなければなりませんから、みんなと遠くへ出かけるといったことは難しいです。
どのようなクリニックでありたいと考えていらっしゃいますか？
困ったときに相談したくなるようなクリニックでありたいですね。病院はサービス業で、患者さんはお客さまといった考え方をする病院もありますが、サービス業といっても、医療は少し意味合いが違うと思うんです。患者さんの「弱いところ」を見せてもらうわけですから、診療では、言いにくいことでも正直に話していただく必要があります。たくさんの情報があれば、間違った診断を下す可能性も低くなりますし、どんな些細なことも話してくださることで、正確な診断につながるのです。私たちは個人情報保護を念頭に置き、プライバシーを保護しています。ですから、安心して何でもお話しください。そして、こちらも専門家としてお話しするので、しっかり耳を傾けてみてください。そうすれば、患者さんと医師の関係はうまくいくのではないでしょうか？
今後の展望をお聞かせください。
このクリニックが地域の方々にとって、頼れるクリニックとして認識されるよう今後も努めていきたいと考えております。そして、私が専門としている画像診断を生かしていきたいですね。町のかかりつけ医として診断の基盤となるのが画像診断だと考えます。適切な診断、そして治療をこの町で提供しつづけていきたいと思います。
