整形外科河村医院 (大阪市港区/朝潮橋駅)
河村 禎人 院長の独自取材記事
大阪市港区のみなと通に面し、遠方から訪れる人も少なくないという「整形外科河村医院」。5階建ての外観と待合室のにぎわいで、クリニックであることを忘れてしまいそうな印象を受けた。院長の河村禎人先生はスポーツ整形外科のジャンルを早期から学び、その診療と研究に注力する一方で、高齢者のリハビリテーション・介護予防に対応した体制づくりにも尽力。どちらにも共通するのは、「困っている人のニーズをくみ取り、安心できる環境をめざすこと」。患者に優しくわかりやすい解説を心がけていると話すとおり、穏やかな語り口の河村院長に、クリニックの診療内容や理念について、じっくりと話を聞いた。
港区の地域に根差した整形外科クリニック
整形外科に特化しているそうですが、規模の大きさに驚きました。院内の構成について教えてください。
はい、診察室の他に、エックス線やMRIなどの検査室、手術室、リハビリ室、19床を備えた入院設備もあります。手術は、大規模病院で行う必要がある場合にはご紹介していますが、当院でも靭帯形成術、人工関節置換術など、5年間で1050件(2015年1月~2019年12月)の手術を行っています。また、リハビリには特に力を入れ、複数設けたリハビリ室には機器類も取りそろえています。さらに、要介護の方にリハビリを行っているデイケア(通所リハビリテーション)も併設しています。骨や関節、筋肉など運動器の問題でお悩みの、子どもから高齢者まですべての方に対して、しっかりと対応することをめざしています。
開院されてから、どのくらいたちますか?
父が1979年に開院したので、40年を超えました。父は大阪大学で脊椎を専門とする整形外科の医師でしたが、大学から地域医療への貢献を使命として、当時整形外科の医師が数少なかった港区で病院勤務を経て当院の開院に至ったそうです。私も大学卒業後、大阪大学の整形外科教室に入局し、複数の病院で勤務しましたが、父が半生を捧げる港区の地域医療を引き継げればと思い、1997年から当院で勤務し、2010年に院長に就任しました。父の代から地域に根差したクリニックとしてご信頼いただけることが誇りです。現在、大阪市港区医師会の会長も務めており、港区の医療にも広く貢献できればと思っています。
お父さまの影響で、早くから整形外科の医師を志していたのですか?
いいえ、医師はめざしていたのですが、実は整形外科とは考えていませんでした。ただ、医学部に入って専門とする科をどうするか迷う中で、整形外科は治療によって病気を治したり、状態を改善させたりすることで、患者さんが日常生活を快適に過ごせるようにできる医療だと気づいたのです。その気づきによって卒業前にようやく心を決めましたが、今も患者さんの生活のお役に立てると日々実感できることが仕事の大きなやりがいとなっています。また、整形外科の中では、「スポーツ整形外科」に特に関心を持ち、勉強と研究を始め、大阪警察病院では1997年から専門に診療を担当していました。
いつまでも安全にスポーツを楽しめるように尽力
最近ではスポーツ整形外科も身近になりましたが、昔は知られていなかったのではないですか?
はい、20~30年前の当時は一般の方はもちろん、整形外科の医師の間でもあまり知られていませんでした。スポーツによって肩や肘、膝などを痛めてしまった場合、一律に「練習のしすぎ」とみなされて休養を勧められ、症状が治まってから再開すると、また同じ部位を損傷してしまう、その繰り返しが一般的な時代でした。結局、そのスポーツを続けたいと願いながらも、断念せざるを得ない人も少なくなかったと思います。私も学生時代にサッカーをしていたので、その無念な気持ちはよく理解できましたし、一人でも多くの人がスポーツを諦めずに済むよう、整形外科の医師として精力的に取り組んでいきたいと考えました。
スポーツ整形外科とはどのようなものですか?
なぜその損傷を起こしてしまったのかという原因を探り、どうしたら安全に行えるかを突き詰めるのが、スポーツ整形外科の考え方です。そのため、治療を行うだけでなく、再発させないための体の動かし方の指導をはじめ、原因や全身の状態に合わせたアプローチが必要になります。私はまずサッカーによって起こる外傷・障害について研究し、十字靭帯や半月板などの膝や足の治療を専門とし、サッカーの団体で医師として助言を行ってきました。また、5~6年前からはゴルフ障害の研究を始め、大阪大学大学院医学系研究科のスポーツ医学特任研究員として国立スポーツ科学センターと共同で、スイングと障害の関係について分析・研究しています。
クリニックでのスポーツ整形外科の取り組みを教えてください。
当院では私の他に、野球の障害が専門の宮﨑義雄先生や膝の障害に詳しい鳥塚之嘉先生も在籍しています。例えば野球の投球動作による障害が起きた場合、当院では投球フォームを確認して原因を明らかにし、正しいフォームを指導します。ただし、そのままの状態では正しいフォームで投げられず元のフォームに戻ってしまうことが多いため、まず必要な筋力を強化したり関節の可動域を広げたりして、正しいフォームで楽に投げられるように、理学療法士が中心となって支援しています。スポーツ整形外科では遠方からご来院いただく場合もあり、子どもからアスリートまで、野球、サッカー、ダンスなどさまざまな競技に対応しています。
寝たきりにさせないための体制を整備
スポーツ整形外科の他に注力されていることはありますか?
高齢者の介護予防、リハビリに力を入れています。近年よく聞くのは、病院で入院中にはリハビリができたけれど、退院してから地域で通院してリハビリを行える身近なクリニックがないという問題です。高齢者の場合、そのまま機能が低下して、寝たきりになってしまう恐れもあります。当院では通院でリハビリを行っていただく環境を整備しており、当院以外で手術を受けた方も対象としています。リハビリを担当する理学療法士等は26人在籍しており、スペースや機器類だけでなく、スタッフ体制も含めて、安心してリハビリに集中していただける環境になるよう心がけました。
地域の高齢者の介護問題についても配慮されているのですね。
日常動作に関わる整形外科と介護は切っても切り離せない関係にありますが、医療と介護で分断されてしまうと、必要なケアを受けられずに自立した生活を送ることが難しくなってしまう可能性があります。例えば圧迫骨折で入院した場合、退院してからまずは在宅でリハビリを行い、少し動けるようになってから通院介助(送迎)つき、あるいは可能なら自力で通院リハビリという流れが理想的です。私はこうした一連の仕組みがつくれるように、2000年に介護保険制度が実施されてから、ケアマネジャーの資格も取得し、医療と介護のスムーズな連携について考えてきました。そして当院を含め、訪問看護・介護・リハビリや通所リハビリまで担えるグループ体制を整備しました。
最後に読者にメッセージをお願いします。
当院は地域の皆さまに「整形外科の問題なら何でもこのクリニックに相談すれば安心」と思っていただけるよう、約20年をかけて、スポーツ整形外科から高齢者のリハビリまで、できるだけワンストップで対応できる体制・環境に整備しました。また、治療においては、「スポーツに早く復帰したい」「できるだけ手術は避けたい」など、患者さんのご希望を大切に考え、一人ひとりに最適な医療をご提供できるよう、スタッフ一同努めています。平日は学校や仕事帰りに立ち寄りやすい19時半まで診療していますので、けがや足腰などの痛み、関節の変形、術後のリハビリなど、どんなことでもまずはお気軽にご相談ください。