田中 亜季郎 院長、岡本 桃子 さんの独自取材記事

患者の「デンタルIQ」を高める診療をめざす

田中先生は2代目院長だそうですね。

【田中院長】実は高校を卒業してからは、ダンサーを派遣する会社を起こして経営していたんです。しかし永続的にやっていくには難しく、同時に社会貢献性ということを考えた時に、元気よく楽しく歯科医師をやっている父の姿を見て歯科医師になろうと決意しました。それから丸1年間猛勉強して父と同じ歯科大に入学し、卒業後すぐに父のもとに就きました。性格上、好きなことしか長続きしないタイプなので、歯科医師という職業をもっと好きになるために自分が一番勉強できる環境を考えた末の選択でした。歯科業界でもなかなか珍しいケースだと思います。

専門分野の勉強にもかなり注力されているそうですが。

【田中院長】はい。最初の3年間は「石の上にも三年」の覚悟で一日も休まず、家族との時間もつくれないほどでしたが診療と勉強に徹底的に取り組んでいました。卒業と同時にあるスタディーグループに入り、主にインプラントと歯周病の勉強に励んできました。おかげさまで現在は、日々の治療で困ることなく患者さんに貢献できるようになっています。

診療のモットーを教えてください。

【田中院長】患者さんのデンタルIQを高めて、健康で長持ちする口内環境づくりに力を入れています。そのためには対症療法だけではなく、患者さんの噛み合わせや習癖、生活習慣まで把握する必要があります。初診の際に一眼レフカメラで口腔内、顔貌、笑った時の前歯の長さ、口角など首から上の写真をすべて撮影させていただくのもそのためです。そして次回に1～2時間と長めの予約を入れていただいてカウンセリングを行い、患者さんに合った治療計画を立てていきます。その際は、例えば出身地の話から入って歯の磨き方や日頃の癖や習慣まですべてお話していただけるような「対話」を心がけています。 【歯科衛生士・岡本さん】楽しく仕事をすること、また患者さんが歯科医院に来るのが嫌にならないようにすることですね。治療へのストレスや恐怖が少しでも和らぐよう、日常的な会話を取り入れながら患者さんのペースに合わせて少しずつケアを進めています。

スタッフとの連携がよりよい治療につながる

専門に学ばれたインプラント治療について教えてください。

【田中院長】入れ歯の患者さんがよくおっしゃっているのは「自分の歯で噛みたい」と言うこと。その願望に応える手段の一つがインプラントです。しかし多くの経験を積んだ歯科医師でも、数ミリのズレが起きる可能性は十分にあり、それがトラブルにつながることは少なくありません。当院ではインプラント治療専用のシミュレーション解析ソフトを導入し、3D画像を患者さんとともに見ながらインプラントを埋入する位置の決定をしています。そして数ミリのズレさえも極力起きなくするためのガイドを使ったインプラント治療を主としています。重要なのは、シミュレーションを重ねておくことです。

歯周病治療にも注力されているそうですね。

【田中院長】歯周病に対しては、レーザーを使用した痛みに配慮した治療と、歯周ポケットを治療していく歯周組織再生療法に注力しています。特に再生療法は数年ほど前から使用する薬剤などがかなり変わって痛みも少なくなってきました。外科的治療が不要の患者さんは、歯科衛生士さんにケアをお願いしていますが、中でも大事なのは患者さんのモチベーションを上げてもらうことだと考えています。 【歯科衛生士・岡本さん】治療前と治療後に写真撮影をして、歯茎の変化を目で見て確認していただくことも大事なんです。「変化は私たちの力ではなく、患者さんの力なんですよ」とお伝えすると、多くの患者さんは喜んでさらに頑張ってくださるからです。そこは歯科衛生士の腕の見せどころかもしれませんね。

予防歯科で来院される方も多いのですか？

【歯科衛生士・岡本さん】はい。当院の患者さんは予防歯科に積極的で、先生の指示をきちんと守って定期検診にいらっしゃるので、皆さんお口の中はいつもきれいです。これは前院長の時代からのご尽力の賜物だと思いますね。8020達成のために最も大切なのは、自宅で行う歯磨きと歯間のお掃除の習慣化です。私たちはサポートに過ぎないので、そのためにも日頃のお手入れについての指導は重要だと考えています。歯ブラシの硬さ、当て方、磨く強さ、磨く部位など、私自身が患者さんの歯にブラシを当てて丁寧に指導することによって理解が深まり、ご自宅でも正しく実践していただけると思っています。また歯磨き粉はフッ素入りのものをお勧めしています。歯磨き粉がお口の中に残っている状態で歯間ブラシを使い、少量の水で1回うがいをしてからすぐに就寝していただくと、寝ている間にフッ素が浸透しやすくなり歯を守ることにつながりますよ。

未来へ向けてさらなる環境づくりに取り組む

近くに分院がありますね。

【田中院長】同法人で「田中歯科医院　第二診療室」と、小児の予防歯科を専門に行う「キッズデンタルパーク」を運営しています。私自身は本院である当院とキッズデンタルパークの院長を務めており、第二診療室は別で分院長がおります。当院では主に成人の患者さんを診療しますので、インプラントや根管治療、歯周病治療など幅広く対応しています。保険診療の中だけではできないこともきちんと提供できる質の高い医療の提供も重要だと考え、歯科用CTやレーザー、マイクロスコープなど先進の機器も多数取り入れています。キッズデンタルパークでは、そもそもインプラントが必要にならないように、歯をなくさない環境をつくることをめざした診療を行っています。いずれのクリニックでも、口腔内だけではなく全身の健康状態をチェックしてアドバイスし、症状が出る前に未然に防ぐということを意識しています。

全身の状態を診る上で、重要視していることはありますか？

【田中院長】噛み合わせです。適切な噛み合わせでないと、成人になったときに関節に影響が出やすいんです。顎をずらさないと噛めないという患者さんは、顎を適切な位置に戻してあげることで噛み合わせの安定化を図ります。肩こりや腰痛など、本人が関係ないと思っている症状も噛み合わせが関わっている場合もありますので、ユニットまで歩いてくる姿から観察して、必要であればアドバイスを差し上げています。

今後の展望をお聞かせください。

【田中院長】来年3月には父が引退し、私が理事長に就任する予定です。また医療の形態も刻々と変化しています。そうした世代交代の流れの中で、クリニックも現代のニーズに合った形に変えていかなければならないと思うんです。将来的には近隣に移転して、設備ももっと充実している環境を整えたいですね。そして私が胸を張って治療に取り組んでいるように、患者さん側も「私は田中歯科医院に通院しているから安心だ」と胸を張って言っていただけるような環境づくりをめざしていきたいと思っています。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

【田中院長】私は、自分の家族や仲間を診療できる歯科医師になることが医療人としての第一歩だと考えています。ですから当院に一歩足を踏み入れてくださった患者さんもまた、自分の家族だと思って診察しているんです。安心安全な医療のご提案をできるよう尽力いたします。口の中に不具合がなくともぜひご相談ください。 【歯科衛生士・岡本さん】予防歯科では正しいブラッシングや歯間のお掃除などについて丁寧にわかりやすく指導させていただいています。ご自宅でのお手入れと併せて定期検診にいらしていただくことが、歯の健康を長く守る秘訣です。お気軽に足を運んでいただけるとうれしいです。