大川歯科医院 (東大和市／東大和市駅)
大川 延也 院長、大川 翼 副院長の独自取材記事
院長の大川延也先生が東大和市に1982年に開業し、2012年に移転リニューアルした「大川歯科医院」。移転と同時に、息子である大川翼先生が副院長として診療に加わっている。10台分ある駐車場の横には歯科医院へ続く手すりつきのスロープが設置され、入り口から通院しやすい設計が印象的。院内もキッズスペースつきの待合室、徹底した滅菌システムなど、患者が少しでも快適に過ごせるようこまやかな配慮がなされている。「おもてなしの心」をテーマに掲げ、地域に密着した歯科診療を提供する同院。翼副院長は外来を、延也院長は訪問歯科診療を中心に担当し、特に訪問歯科診療は30年以上前から行われているという。「食べることは生きることです」と、口腔機能の向上にこだわる延也院長。その診療姿勢や、今後の展望などを2人に聞いた。
外来の他、口腔ケアに注力する訪問歯科診療も
貴院では通常の診療に加え、訪問歯科診療にも力を入れていらっしゃると伺いました。
【延也院長】1991年より、歯科の訪問診療を行っています。きっかけは、長年の患者さんが脳梗塞になり、ご家族から訪問の依頼を受けたことです。また、父が80歳の時大病をし、その際に僕が父の口腔ケアをしたことがありました。ようやく食べる意欲を取り戻した後は、94歳まで生きてくれたのです。その過程を間近で見たことも、訪問診療や口腔ケアの重要性を強く意識した出来事です。当院の訪問診療では、単に歯科治療や入れ歯の調整だけでなく、口腔ケアや口腔リハビリテーションも丁寧に行うことが特徴です。患者さんだけでなく、介護するご家族の負担を軽減することも考えてまいります。
訪問歯科診療は、どのような患者さんが対象ですか？
【延也院長】現在は、高齢のために通院をすることが困難、身体に障害がある、ALS（筋萎縮性側索硬化症）といった神経難病があるなど、さまざまな方を診ています。基本的には、私1人か歯科衛生士と2人で訪問しています。在宅で療養されている方の多くは、家族、ケアマネジャー、ホームヘルパー、看護師、医師といった人たちが介護に関わっているので、そのようなルートから当院に依頼があるのが通常です。僕は介護認定審査会の審査員を務めたり、僕が主催する勉強会を企画したりして、介護スタッフと顔が見える関係を日頃から築き、コミュニケーションを取っています。地元の組織づくりをすることも、訪問歯科診療には欠かせません。
貴院で行う訪問歯科診療の特徴の一つが、口腔リハビリテーションですね。
【延也院長】年齢を重ねても口からきちんと食べ、誤嚥性肺炎にならないように、口の周りや喉の筋肉を鍛えることが目的です。口腔リハビリは毎日継続することが大切なので、簡単でなければいけません。そこで私が考えたのが「ブクブク体操」です。これは、水ではなく空気を口に含み、口をゆすぐときのようにブクブクするだけ。無理のないように、いつどこで行ってもかまいません。唇・頬・舌の筋力トレーニングになり、唾液の分泌が促進され、誤嚥を防ぐことも期待できます。60歳以降になると、一般的に口腔機能に老化が見られるので、実は外来でも口腔リハビリが必要な患者さんはいます。わかりやすいサインは、むせやすい、舌や頬を噛んでしまうといった現象。そのような訴えがある方には、口腔リハビリを指導します。
「食支援」をテーマに講演も行い、地域医療に貢献
訪問歯科診療をするにあたって大切にしていることは？
【延也院長】口腔機能が低下した方の改善を図り、口から食べられるようにするための「食支援」が僕の大きなテーマです。胃に穴を開ける胃ろう、鼻からチューブを挿入しているといった方々が、将来的には口から食べられるようにしてあげるのが僕の願い。食べることは、生きることだからです。そのため、地域へ向けての講演会も頻繁に行っています。歯科衛生士、ケアマネジャー、看護師、ホームヘルパー、言語聴覚士、栄養士などあらゆる職種の人たちが聴講に訪れ、チームとなって患者さんの食支援に向けて意識を高めてくれています。
日々の診療で大切にしていることをお聞かせください。
【延也院長】今は歩いて通える患者さんでも、年齢を重ねれば通院できなくなる日が来ます。なので、「歩けなくなったら僕が行くので、心配しないでくださいね」と伝えるようにしています。誰もが一生自分の歯で食べたいですから、この一言が患者さんに大きな安心感を与えるでしょう。かかりつけ医として、患者さんのお口の健康には責任を持ちたいのです。また、訪問歯科診療では、ご家族にも配慮を欠かさず、話をすることを大切にしています。困り事や不安を把握し、ケアマネジャーなどとも相談しながら、患者さんとご家族の負担を軽くする方法を探ります。歯科治療の範囲を超えていることも多いですが、親身になって寄り添う姿勢が大事なのです。
貴院は2012年に移転リニューアルしました。同時に、翼先生が副院長に就任されています。
【延也院長】外来診療は僕も行っていますが、副院長が中心です。一方、訪問歯科診療は僕のみが担当しています。副院長と一緒に働くことになり、とても頼りにしているんですよ。最初の頃は、「この方針は違う」と指摘され、ぶつかったこともありました。しかし今では副院長のやり方を尊重し、クリニックの運営もスムーズです。
【翼副院長】患者さんは、歯科治療以外にも多くの不安を抱えて歯科医院を訪れます。それらの不安を取り除いていくのも、歯科医師の役割だと思っています。そのことを院長と徹底的に話し合ったこともありました。今ではお互いに納得し、良いチームワークができていると感じます。
「おもてなしの心」を大切に、外来と訪問診療の両輪で
貴院は「おもてなしの心」がテーマだそうですね。
【翼副院長】「おもてなしの心」とは、より良い歯科治療技術を提供した上で、患者さんに喜んでもらうために最善を尽くすことです。治療を受けて帰るまでの間に、不安がなくリラックスできるように配慮することを心がけています。2012年の移転リニューアルの際に、車いすやベビーカーがスムーズに入れるように、駐車場から院内まですべてバリアフリーに設計。また、親御さんが治療中は、診察台からお子さんの様子が見られるように、キッズスペースにカメラを取りつけました。その他、大切にしているのが清掃です。院内はもちろん、駐車場周りの掃き掃除は毎朝私自身が行っています。
【延也院長】患者さんのライフサイクルを考えた時、僕は訪問歯科診療で主に高齢者を、副院長は外来でお子さんから中高年世代を中心に診ています。幅広い世代の口腔内の健康を手助けし、1人も取りこぼさないのが僕の考える「おもてなしの心」です。
お二人それぞれが歯科医師になった経緯を教えてください。
【延也院長】母方の祖父が歯科医師だったのですが、歯科医院を継ぐ人がおらず、小さい頃は何も考えずに「継いであげる」と言っていたんです。祖父は地域に根づいた診療をして地元の方からとても慕われていましたから、僕も患者さんの中にいた商店の方にかわいがってもらってもいましたね。そんな良い思いをしたから出た言葉だったのでしょう（笑）。最初は子どもながら自分が言ったことに従っていただけでしたが、祖父の背中を見ているうちに自分の意思で歯科医師をめざすようになりました。
【翼副院長】父から「歯科医師になれ」とは言われませんでしたが、父の背中を見ていて自然に歯科大学に入学しました。最初はまだ迷いがあったのですが、大学で勉強していくうちに、自分は歯科医師に向いていると思うようになり、気持ちが固まっていきました。歯科医師は職人的な部分があると思いますので、そこが私に向いているのかもしれません。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
【翼副院長】私が当院に来てから目標としている診療内容や体制、設備などを徐々に実現していっていますが、今後もさらなる充実を図っていきたいと思います。また、在宅歯科医療に関して豊富な知識と経験を持つ院長が、心身ともに健康で長く活躍し、そして人々が快適に過ごせるよう、その環境を整えるのも私の目標です。
【延也院長】ゆくゆくは副院長に外来をすべて任せ、僕は訪問歯科診療に専念したいと考えています。訪問範囲も地元に絞りながら、周辺地域の皆さんに医療貢献していきたい。40年以上も、この地でお世話になっているので恩返しの気持ちを込めて、歯科医療面での地域づくりに力を注ぎたいのです。
