八王子矯正歯科クリニック (八王子市/八王子駅)
真柄 貴弘 院長の独自取材記事
JR線の八王子駅、京王八王子駅からそれぞれ徒歩5分。市の中心部を通る桑並木通り沿いのビルの9階にある「八王子矯正歯科クリニック」。広い院内は、患者からの手紙や、ミニチュアのおもちゃなどが飾られた温かい空間になっている。ロゴマークのくじらは、革びいどろ作家である母に描いてもらったもの。その作品も院内にいくつも飾られており、温かい雰囲気をもたらす。院長の真柄貴弘先生は、「患者さんが何を希望しているか」を的確に把握し、治療方針とうまく融合させるために、よく話して説明することを重視。自身が小学生の頃に矯正をしたことから矯正を行う歯科医師になることを決意し、初志を貫いた。無料の初診相談への思いや最近の矯正事情、イベントとして行っている夏の縁日などについて話を聞いた。
患者の中心は子どもたち。縁日を催し、楽しみながら
どんな年齢層の患者さんが多いですか?
やはりお子さんが中心ですね。全体の3分の2は20歳以下で、小学校3年生ぐらいから大学生ぐらいの方が多くいらっしゃいます。山手線圏内なら、もっと大人の方が働きながら通ったりするケースも増えますが、ここでの矯正治療の患者層というと、歯が動きやすい若いうちにやられる方が多いです。もちろん大人の方もいらして、20代の方から一番上で50代ぐらいです。矯正治療の対象年齢ということでは、一応、日本の矯正歯科学会が患者さんに向けて公告を打っているのは、7歳までには専門の歯科医師を受診するようにということもあり、心配されるお母さんは6歳ぐらいで連れて来られる方もいます。また、学校の歯科検診で指摘されて来る子も多いですね。虫歯と同じように、歯並びというチェック項目もあるんですよ。来ていただければ、いつ頃から始めようか、というお話をするようにしています。
人によると思いますが、治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
年数は、永久歯が生えそろうのがだいたい11歳ぐらいですから、そこから始める場合は、金具(ブラケット)をつける期間が1年半から2年ぐらいです。そのあと、必ず保定といって押さえないといけないんですけど、これが歯を動かすのと同じぐらい1年半から2年ぐらいかかります。なので、計3年半から4年ぐらいは短くても通っていただいています。もっと小さいうちに始めて、準備矯正というのをしなくてはならない場合は、延べ期間はもっと長くなるので、患者さんと正に長いお付き合いになりますね。
こちらのクリニックでは、夏に縁日をされるそうですね。
院内で縁日をやるというのは、付き合いのあるコンサルタントの提案で始まりました。開業当初から続いているイベントでもう10回以上開催しています。3ヵ月前から準備を始め、1ヵ月前にチラシを作って患者さんに配ります。 内容はだいたい定番なのですが、ヨーヨー釣り、射的、ビンゴ、かき氷、焼きそばなど。近所の居酒屋のスタッフが手伝いに来てくれてカレーなども出しています。天気にもよりますが、毎年50人から100人ぐらい来てくださって、夏の恒例行事となっていました。ここ数年は感染症の蔓延の影響で開催はできていませんが、また再開できる日を心待ちにしていますね。
患者の要望と治療方針を融合させる話術を重視
クリニックの特色を教えてください。
当院では無料で初診相談をしています。例えば6〜7歳で、今は心配ないけれども将来どうなるか不安でというような人は来づらいでしょうから。開業してからは延べ3500人ぐらいの方が無料相談を受けられました。一人計30分から1時間をかけてじっくり説明します。こちらで矯正すると決めた方は、保険診療じゃないだけに、皆さん慎重になられていますので、患者さんに納得のいくように、治療のことや、費用の面でも明朗にご説明しているからだと思います。他には、スタッフが長く勤めてくださっていることも当院の特色です。スタッフ同士の連携も抜群。ソフトで明るい対応が患者さんにも好評です。
診療で心がけていることはありますか?
心理的要素が大きいことなので難しいんだけれども、患者さんの要望と、こちらがやろうとしていることを一致させるために説明することです。歯医者が思う「これ」と患者さんが思う「これ」が違ったりするじゃないですか。正常咬合といっても、正しいものと違うものをイメージする人もいる。芸能人などの削ってかぶせてある歯を、正しい状態と思っている人がいたり、いろいろな人がいる。矯正治療とはそういう治療ではなく、あくまでも自分の歯を使って健康な噛み合わせをめざすこと。何を希望されているのかを把握するために根気よく説明し、もちろん知識とか、技術も大事だけど、それを理解してもらうための話術というか、そういう力のほうが大きいのではないかと思います。オペをするだけ、研究しているだけではなく、臨床医としてはそのほうが大事だと思います。
矯正歯科医師を志されたきっかけを教えてください。
家族には医師や歯科医師は誰もいなかったのですが、私自身が小学校5年生のときに矯正治療を行ったことが直接のきっかけでした。実際に自分自身の歯並びが整っていくのは感動的でした。なので、大学で歯学部に入った時点で矯正科へ行こうと思っていましたね。今思い返すと進路には悩むこともありましたが最初の思いは貫いた感じです。
もともと細かい作業がお好きだったんですか?
どちらかというと器用なほうかも知れません。院内に飾ってあるこの模型も私が組み立てました。趣味というか、大学4年ぐらいまではプラスチックモデルキットを作ったりもしました。今は、やっていませんが、もし子どもがやるって言ったらやろうかなって思います。でも歯科医師としては器用さより、患者さんとしゃべる能力のほうが重要だと思います。治療に関して、きちんと理解をしてもらうために、特に話し方には気をつけています。
自身の経験から矯正歯科に。歯並びの悩みはまず相談を
歯科業界も日進月歩ですが、矯正に関してはどういう現状ですか?
昔はメタルブラケットが使われていて、少し前の映画や海外ドラマで、たまに前歯も全部メタルだったじゃないですか。現在でもメタルを使われていますけど、ここでは前歯6本は透明というかプラスチックの、目立たないレジンブラケットと呼ばれるものを使用します。ワイヤーも昔は固い針金だったので凹凸のあるところに入りませんでした。それで前後にバネを作って曲げて入れたりしていましたが、今は形状記憶合金で、ある程度しなりのあるのがあります。あと、今は歯の裏側から行う矯正があることはもちろん知っていますが、当院ではやっておりません。あれは、成人で見えてはいけない、モデルさんなどが対象となります。歯磨きも普通の歯ブラシと歯間ブラシを使って、慣れるまでは通常の3倍ぐらい時間がかかるでしょうね。よほどモチベーションがないとお子さんは磨けないと思います。
今後の展望をお聞かせください。
これからもこの地で頑張ろうと思っています。当院も開院19年目となり、患者さんが連れて来られた赤ちゃんが、成長して来院してくださるようになりました。矯正は広範囲から患者さんが来られるので、地域の子どもたちへの医療というのとは少し違うけれど、その子の兄弟などが紹介で来てくれることも多いんです。ときどきお手紙をくれる子もいて、本当にうれしいですね。そのひとつを院内に貼っていたら、その子のいとこが来て、「その手紙、患者さんだったいとこの子がくれたんだよ」って言ったら、びっくりしていました(笑)。もう10年近く前かな。成長したでしょうね。本人には会ってないけど。そんなふうに、当初縁あって来られた患者さん本人はもちろん、その子の兄弟、親類、友達などの歯も見守っていけたらいいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
矯正を迷われているのであれば、今は無料相談を実施しているところも増えていますので、悩みがあったら、近隣の矯正歯科を早めに受診されることをお勧めします。噛み合わせがよくなれば、歯磨きもしやすくなりますし、歯並びについてのコンプレックスもなくなり、笑顔が増えるのが何よりうれしいことです。でもやるかやらないかは自分の意志が大切。金具をつけているのはだいたい2年。その間違和感があるし、治療中の歯磨きも大変なので、患者さん本人のやる気、モチベーションがなければうまくいきません。治療後は、歯磨きが楽になりコンプレックスがなくなると思います。もちろん、私たちも全力でサポートしていきます。