内田こどもクリニック (練馬区/地下鉄赤塚駅)
内田 寛 院長の独自取材記事
「内田こどもクリニック」は、国立国際医療センターなどで診療経験を積んだ内田寛院長が2010年に開業。地域の子育てファミリーの“医療の入り口”として、多様化する子どもの悩みに向き合い、トラベルワクチンや家庭内感染など、家族の健康相談にも応じている。内田院長は、患者の様子を観察することを重視している。診察室だけでなく、待合室から聞こえる声や、診察室に入るまでの様子まで丁寧に観察し、診断に生かしている。時代の変化にも柔軟に対応し、地域の子どもたちを見守り続けている内田院長に話を聞いた。
心と体の両面から診る、多様化する子どもの悩み
こちらには、どのような症状で来院する方が多いのでしょうか?
ちょっとした風邪から赤ちゃんの肌トラブル、便秘など、本当にいろいろな症状の患者さんがいらっしゃいます。ミルクを飲まない、夜泣きが続くといった子育てのお悩みについての相談も多いです。診療の中心は小児科ですが、「子どもが生まれたのを機に禁煙したい」「子どもの風邪がうつってしまったかもしれない」など、親御さんのお悩みにも対応しています。また、僕は日本感染症学会感染症専門医の資格も持っているので、海外に行く際のトラベルワクチンや感染症に対するワクチンの相談を受けることも多いです。2010年の開業以来、移転を挟みながら長く練馬区で診療していますが、この間だけでも子どもの悩みは変わってきていると感じます。小児科に求められるものの幅も広がってきました。
時代の変化によって子どもの悩みも多様化しているのですね。
そうですね。ひと昔前の小児科診療といえば、患者さんの大半が発熱や咳などの風邪症状でした。現代でもその割合が多いのは変わりませんが、その他にも頭痛、不登校、夜更かしなど、聴診器を当てたり数値を見たりするだけでは診断できない症状の方が増えています。この15年ほどでもデジタル化やライフスタイルの変化など、世の中は大きく移り変わってきましたから、その影響も大いにあるでしょう。対する僕たち医師も、その変化に応じていかねばなりません。そのための一つとして、日本小児科医会が取り組んでいる、子どもの心の相談に関する勉強会に参加するなど、症状を多角的に診られるように努めています。複雑化する症状の原因を明らかにするために、一人ひとりに丁寧に向き合って、適切な治療を行うとともに、必要に応じて専門の先生におつなぎするのも僕の役目です。
子どもの診療時に心がけていることはありますか?
親御さんだけではなく、お子さんにも話しかけるように意識しています。「今日は保育園で何をしたの? ごはんは何を食べたの?」などと問いかけると、小さなお子さんでも、言葉が話せる年齢であればいろいろと答えてくれるのです。その受け答えの様子も大切な診察の一つと考え、お子さんの反応などを見るようにしています。また、ワクチンなど注射をする時は、「痛くないよ」とは絶対に言わないようにしています。注射は子どもにとって痛いので、痛くないと言ってから注射をしてしまうと、その後、余計に怖がらせてしまうからです。痛くないとは言わずに、例えば「怖い病気にならないためにチックンするね」と伝えるようにします。泣いてしまう子ももちろんいるでしょうが、大事なことだとわかると子どもはちゃんと注射を打たせてくれるのです。大人が思っているより、子どもは賢いなと思います。
子育てファミリーに向き合って優しい医療を提供
クリニック全体の診療ポリシーなどはありますか?
ここは地域の子育てファミリーにとって“医療の入り口”ですから、お子さんとご家族が気軽に相談できるような、優しく向き合う医療を提供していきたいと思っています。特に当院をかかりつけ医に登録してくださったご家族に対しては、診療時間外の急な対応も含めて、かかりつけ医としてできる限りのサポートをしていきたいですね。また、予約システムとしても活用しているメッセージアプリを使って、医療ニュースやご自宅で気をつけてほしいポイントなどを発信しています。
その他に、意識していることがあればお聞かせください。
大切にしているのは、「事故を起こさない誠実な医療」をめざすことです。これは僕の恩師が常に言っていたことで、当院でもポリシーにしています。僕は小学校に入る前に病気をして、1年遅れて小学校に入学しているのです。実家の岩手県では治せる病院がなくて、まだ6、7歳ぐらいの時に東京の病院に1人で入院していました。当時の主治医がこの恩師で、偶然にも僕が大学卒業後に研修した病院の医長でもあったのです。この先生に教わったことを今でも大事にしています。
事故を起こさないために、どのようなことに気をつけていますか?
基本的なことですが、患者さんをよく見ること、観察することです。診察中の様子はもちろん、場合によっては、待合室での泣き声や咳の様子、部屋に入ってきた時の歩き方、そういうことから、僕の中ではもう診察が始まっているのです。耳をそばだてて患者さんの声や足音を聞く、目の前の患者さんをよく見る、触って自分の手で感じるなど、五感を働かせて患者さんの様子を観察することを大事にしています。その上で、思い込みを排除して、しっかり考えることが、正確な診断をめざす上で重要だと思っています。そして、それは「事故を起こさない医療」の実現につながるはずです。スタッフに対しても、「事故を起こさない医療」の実現のために、患者さんをよく観察するようお願いしています。子どもは予測できない動きをするので、ちゃんと見ていないと危ないのです。特に小児科では、患者さんをしっかり観察するというのは、いろいろな面で大切だと感じています。
誠実な医療を通じて得てきた信頼関係
小児の在宅医療にも目を向けていると伺いました。
練馬区では在宅医療に対応する小児科の医師が不足しており、子どもの在宅医療のニーズはすごくあるのですが、それに応えきれていない状況が続いていました。現実問題として、小児科の医師が単独で対応するには無理があるのです。そこで練馬区医師会で有志を募って、小児科の在宅医療に対応できるようなネットワークをつくり、勉強会を始めました。これは行政や訪問看護ステーション、ご家族の会などの協力があって実現したものです。地域の医師として、今もこのネットワークには参加しています。通院が難しいお子さんへの往診や、専門的な処置に対応することに加え、障害のあるお子さんやご家族が災害時に困ることのないように備えていければと思います。
医師としてのやりがいを感じるのは、どのようなときですか?
練馬区で開業して、15年以上がたちました。産まれたばかりの赤ちゃんが中学生・高校生に成長するだけの年月です。当院に来ていた赤ちゃんがお兄さんお姉さんになっていたり、小学生だった頃に来院していた子が大学に受かったというのを親御さんから聞いたりすると、感慨深いものがあります。小さかった子がお父さんやお母さんになって、お子さんを連れてくることもあるのですよ。親子2代にわたって受診されたり、ごきょうだいともに当院をかかりつけ医として通ってくださると、患者さんやご家族が頼りにしてくださっているのだなと、僕が医師としてやってきた仕事を再確認できるのです。医師としての信頼は、誠実に適切な医療を続けてこそ得られるものです。そういう医療をお届けできたのかなと思えたとき、大きなやりがいを感じますね。
最後に、地域の方々へのメッセージをお願いします。
子育てをしていて、普段の生活の中でちょっとでも困ったことがあれば、いつでもご来院ください。すべて即座に解決できるかどうかはわかりませんが、困った時に思い浮かべる場所の一つに当院がなれればうれしいですね。お子さんの診療では、患者さんだけでなく、家族構成や生活スタイルなどの背景を知ることも大切です。これからも気軽に相談できるかかりつけ医として、ご家族とともにお子さんの成長を見守っていきたいと思います。