鈴木整形外科 (横浜市泉区／中田駅)
鈴木 正比古 院長の独自取材記事
中田駅からほど近い「鈴木整形外科」は、診療を待つ患者が院外まであふれるほど人気の高いクリニック。スポーツ整形にも力を入れているのが特徴で、鈴木正比古院長のテーピング技術を頼りにスポーツ選手も多く訪れる。テーピングはケガの回復を早め、筋力アップにもつながるといわれ、大事な試合や練習のタイミングに同院を訪れる選手もいるのだとか。また横浜市泉区医師会の活動で地域医療の向上に取り組み、病診連携や診診連携の重要性を痛感したという鈴木院長。健康寿命を延ばすために、高齢者のサルコペニアやフレイルの予防、現役世代の骨粗しょう症やロコモティブ症候群にも注力する。子どもから高齢者まで地域の健康を支える鈴木院長に話を聞いた。
多くのアスリートにも慕われる整形外科の医師
まず医師を志したきっかけや整形外科を選んだ理由を教えてください。
実は、もともと獣医師になりたかったんです。神奈川県で授業料が安い大学は横浜国立大学か横浜市立大学でしたが、どちらにも獣医学部がなかったので、動物も人間も一緒かなと思い、横浜市立大学医学部に入りました。また中学・高校時代には、陸上の幅跳びの選手で、疲労骨折をしたことがありました。試合前だったにもかかわらず、外科医師にギプスを2ヵ月半にわたって巻かれてしまいました。当時はまだスポーツ整形外科という分野がなく、ケガをしたら試合には出れないという時代だったのですね。この時の悔しい思いも、医学部や整形外科を志望するきっかけになったかもしれません。
では、こちらで開業されるまでの経緯を教えてください。
横浜市立大学の整形外科には、卒業してから最低でも7年間は修行を積まないと開業してはいけないという慣習があるんです。さまざまな手術に携わり、経験を重ねることによって、技術だけでなく、手術が必要かどうかの判断もできるようになるという考えからですね。私も、小児科、麻酔科、外科、整形外科の研修を受けた後、横須賀共済病院、町田市民病院、横浜市立港湾病院（現・横浜市立みなと赤十字病院）など各地の病院に勤務し、先輩のクリニックを3年ほど手伝ってから、1987年に開業しました。横須賀共済病院は股関節に関する診療が盛んですし、町田市民病院は手の治療、港湾病院はスポーツ外傷を得意としていましたから、10年間で多様な分野の勉強をして、開業に至りました。
スポーツ整形外科やテーピングに取り組むようになったきっかけは？
1992年のバルセロナ五輪の際、金メダルをとった柔道の選手にテーピングをしたのが、母校の先輩で、テーピングの可能性に強い興味を持ちました。一般の整形外科では、患部に湿布と包帯を巻き、運動を禁止します。それに対して選手をなるべく試合に出させる方法、休む期間をなるべく短くするための方法を考えるのがスポーツ整形外科です。試合や大切な練習のある日を「Xデイ」と定め、逆算して治療計画を立てていく中で、テーピングは、とても重要な役割を担います。テーピングからサポーターへの移行の時期や、トレーニングのプログラムを細かく計算し、うまくいった時はとてもうれしいですね。さらに治療だけでなく、負荷をかけるための巻き方をすれば、効果的な筋力トレーニングを進めることも可能になっていきます。テーピングは巻き方によって、さまざまな利用法があるんですよ。
健康寿命を延ばす、予防やリハビリテーションにも注力
診療の際に、大切にされているのはどのようなことですか。
最も気をつけているのは、診断を誘導してはいけないということですね。患者さんには、症状をはじめ、いろいろなことについてお話を聞きますが、常に客観的な可能性を念頭に置きながら診察するようにしています。例えば腰痛にも、大動脈瘤が破裂しているおそれもありますし、膵炎（すいえん）の初期症状にも腰痛が起こるケースがあります。女性の場合には子宮の病気の場合もあります。それらを踏まえた上で、患者さんに対しては、想定される可能性についてわかりやすく説明します。またその際、専門用語を並べ立てるような話し方はしないようにしています。診察室に入ってこられた時の歩き方や動作でだいたいの症状は予測できますし、その方の性格などについては表情でかなりの部分がわかります。そこで、患者さん一人ひとりに合った言葉や話し方を選ぶようにしています。雑学を学んで会話のウィットを意識することも心がけていますよ。
最近、力を入れられている分野などがありますか？
最近、歩行などが困難になる運動器症候群、ロコモティブ症候群という症状が指摘されるようになってきています。これは、加齢に伴って、足腰の骨や関節の機能が衰え、筋力が低下していくものです。この症状のまま高齢になると、筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態のサルコペニアに進行します。さらに、加齢に伴い体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態のフレイル（虚弱）に進むこともあります。サルコペニアは、転倒や骨折、寝たきりなどの原因になっていくこともありますし、フレイルは、介護が必要となる直前の段階で、疲労感や活力の低下なども含みます。高齢化社会の中で、とても大きな問題になってくると考えられるので、こうした症状の対応に力を入れていきたいと考えています。
具体的にはどのような取り組みをされていますか。
サルコペニアやフレイルを予防するためには、その前段階であるロコモティブ症候群への対応が大切です。ですから若い方にも情報発信をして、40代頃からのロコモティブ症候群の改善や予防などの対策を講じる必要があります。また、高齢者の場合は、十分な栄養の摂取や、体力維持・筋力増加のための運動により、サルコペニアを予防することが重要です。当院では、患者さんの状態や年代に応じた予防やリハビリテーションをご提案し、またきめ細かな生活指導を行っています。整形外科を上手に利用して、健康寿命と平均寿命の差を縮めていただきたいと思いますね。
地域医療の中で重要な役割を果たす整形外科として
ところでお忙しい毎日ですが、お休みの日はどのように過ごされていますか。
普段はスポーツジムに行くぐらいですが、体を動かすのは好きなので、朝から2時間くらいかけてウォーキングをすることもあります。そのほかにも、ゴルフにはよく出かけています。とにかく昔から体育会系で、来院する子どもたちや中高生の「試合に出たい」という気持ちがよくわかるんです。地域のクラブチームや中高の部活など、代々、うちへ来てくれるところも多いんですよ。「そろそろ歳だから……」とも思うのですが、遠くからも来てくれるので、やはり期待に応えなければと、毎日忙しくしています。
今後の展望についてお聞かせください。
横浜市泉区医師会では、診診連携や病診連携の重要性を痛感しました。特に、整形外科には、さまざまな症状の方が多く来られますから、正確に診断して、必要に応じて適切な専門的な施設に紹介していくことが重要だと考えています。スポーツ整形に関しては、ホームページなども通じて、さらにテーピングの有用性を広めていきたいですし、来院される患者さんの悩みやセカンドオピニオンにも的確に対応していきたいと思います。いずれにせよ、患者さんに一番いい形で喜んでいただけることをめざしたいですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
高齢になってからのサルコペニアやフレイルを予防するために、若いうちから気をつけていただきたいですね。特に女性の場合、若い時から骨粗しょう症に備えることが必要です。40歳を過ぎたら筋トレを心がけ、50歳を過ぎたら、本格的に骨粗しょう症の予防をしてください。また、老化は膝からとよくいわれます。加齢につれてだんだん階段の上り下りがつらくなり、正座もできなくなってくるんですね。これを防ぐには、日頃からきちんとした筋トレとストレッチをしておくことです。エレベーターやエスカレーターはなるべく使わないように、私は今でも、駅の階段などは、2段飛ばしで登っていますよ。30歳代や40歳代の方でも、膝に痛みのある場合は要注意です。整形外科を受診して適切な治療を受けてから、なるべく運動を心がけ、関節や筋肉の機能を衰えさせないようにしてください。
