岐南ハートと呼吸のクリニック (羽島郡岐南町/岐南駅)
吉眞 孝 院長の独自取材記事
一般内科に加え循環器や呼吸器を専門にする「岐南ハートと呼吸のクリニック」は、2024年秋、岐南インターチェンジ近くに新規開業されたクリニックだ。真新しい院内には心臓や呼吸器疾患のための先端の検査機器が導入され、循環器と呼吸器の両輪で診療を行う同院。吉眞孝院長は、2010年から岐阜県総合医療センターで、専門的な循環器診療や集中治療専門の医師として呼吸器集中治療にも従事。その経験を生かし、身近で相談できかつ専門的な検査や診断が受けられるクリニックをめざして開業を決めたと話す。また、心臓病患者の体力の回復と再発予防に有用だという心臓リハビリテーションに対応しているのも、同院の大きな特徴だ。クリニックの特徴や診療時に心がけていることなど、たっぷりと語ってもらった。
循環器と呼吸器。専門性を生かして両輪で診療
まずは医師になられたきっかけをお聞かせください。
高校時代にこの先どういった職業に就きたいかを考えた時、人の役に立てる医師の仕事は魅力的だと思いました。実際に僕も病気になった時にはクリニックに行き、治療してもらうことがありましたが、医師という仕事は患者さんを元気づけることができ、人々の役に立つということを実感し、この道に進むことを決めました。
開業までの経緯を教えてください。
開業前は岐阜県総合医療センターで、循環器診療や集中治療専門の医師として重症の患者さんと向き合い、多くの患者さんの救命に関わってきました。ですがその一方で、力を尽くしても助けられない患者さんもあり、悔しい思いをすることもありました。そういった患者さんを診る中で、もう少し早く医療が介入していれば、こんなにひどい状態にはならなかったのではという症例があり、だからこそ皆さんにとって利便性が良い身近なクリニックで、循環器や呼吸器を専門的に診ることで、重症になるのを防ぎたいという思いを強くしました。悪くなってから助けるのではなく悪くなるのを未然に防ぐ、そういった医療に主眼を置いた診療を行いたいという思いから開業を決意しました。
循環器や呼吸器がご専門とのことですが、どのような病気がありますか?
一般的には心不全・狭心症・心筋梗塞・不整脈だけでなく高血圧の管理などは循環器の医師が、気管支炎や肺炎、喘息、肺気腫や間質性肺炎は呼吸器の医師が得意とする疾患です。風邪や花粉症などのアレルギーも呼吸に関係する疾患といえますね。先ほどお話ししたように、僕は循環器と呼吸器の両方の治療に従事してきたので、胸から上の不調についてはどんなことでも相談してもらえればと思います。胸が痛い、息切れ、呼吸が苦しい、咳が続くなどご自分ではたいしたことがないと思っていても、実は重大な病気が隠れている場合も。不調を感じたら放置せず早めに受診してください。当院で検査や診断をし、もし入院など必要であれば適切な病院をご紹介できるように近隣病院とも連携しています。
心臓リハビリテーションを導入し、総合的にサポート
開業されたばかりのすてきなクリニックですね。どんな特徴やこだわりがありますか?
一番の特徴は心臓リハビリテーションを行っていることです。クリニックで心臓リハビリテーションの設備がある所はまだ少ないと思いますが、僕自身、心臓リハビリテーションが心疾患の予後に有用であると考え導入を決めました。当院ではリハビリ専属の看護師がおり、医師と連携しながら血圧の推移や体重の増減、生活習慣の改善、食事のアドバイス、筋力の強化など総合的にサポートしています。また、CT、エックス線撮影、心電図検査、心臓超音波検査、呼吸機能検査など心臓と呼吸の両方の検査が行える機器を設置し、重症な患者さんも診られ、専門性の高い治療につなげていきたいと考えています。また、妻が耳鼻咽喉科の医師なので、診療のサポートだけでなく、耳鼻咽喉科と関連する部分についてのアドバイスをもらうこともありますね。
心臓リハビリテーションに注力されているということですが、運動方法などを具体的に教えてください。
心臓リハビリテーションは、心筋梗塞、狭心症、心不全などの心臓疾患があり一定の基準を満たしている方が保険診療で受けられるものです。自電車をこいで有酸素運動を行ったり総合的な筋力トレーニングを行ったりしますが、その際に心電図や血圧をモニターで計測して心臓のケアをしながら運動を行うことが重要で、心臓リハビリテーションをやっている人とやらない人では、予後に差が出るといわれています。心筋梗塞や心不全の患者さんは、生命予後のために薬を服用されていると思いますが、それらの薬と一緒で、心臓リハビリテーションも予後の改善を図る目的がある医療行為の一つなので、積極的に取り組んでもらえると良いですね。ですが、やみくもに運動するとかえって心臓を悪くしてしまうこともあるので、医師の指導のもとで行ってください。
クリニックとしての診療方針はどのようなものですか?
地域のクリニックとして一般的な内科の診療をしっかり行うのはもちろんですが、それに加え心臓や呼吸に関して不安を抱えている患者さんに対し、専門的な検査・診断・治療を提供できるクリニックにしたいと考えています。心臓や肺は複合症を持っている方が多いので、心臓だけ呼吸器だけと切り離して考えるのは難しく、総合的に診ていく必要があります。今まで勤務した病院での経験を生かし、心臓と呼吸の両面から診療を行っていきたいと考えています。何となく心臓の調子がおかしいと感じていても、いきなり総合病院へ行くのは大変だと思うので、そういった患者さんに対し、今までは病院へ行かないとできなかった検査など専門的な治療を近くのクリニックで受けられるようにしたいと思っています。
患者それぞれのニーズに応え、適した検査や診療を提供
患者さんと接する際に心がけていらっしゃることはありますか?
今まで勤務していた病院では重症な患者さんを診ることが多かったのですが、クリニックにはさまざまな症状の患者さんがいらっしゃいます。ですからその人それぞれに適した診療を行うことが大事だと考えています。例えば、今まで治療を受けていてもなかなか改善が見られないため、少し詳しい検査や専門的な治療を望まれる患者さんもいれば、軽い風邪症状を診てほしいという方もいらっしゃいます。そういった患者さんそれぞれのニーズにしっかり向き合って応えていきたいと思います。その患者さんに適した検査や診療を提案・提供し、帰宅時には不安を取り除けるように努めています。
総合病院勤務とクリニックでは違う面もあるかと思います。かかりつけ医院として、めざされていることは?
重症な患者さんを診ることが多い総合病院では、患者さんは治療が完了すれば退院され、その後継続して診ていくことはほとんどありません。それに対し、地域のかかりつけ医院は、長く患者さんとお付き合いし、その人の一生を継続して責任を持って診ていく点が病院とは異なる点だと思います。ですから、当院では専門性を大事にしつつ、幅広い診療に対応しています。また、クリニックは、患者さんと医師の付き合いが深くなるので、しっかりとコミュニケーションを取るようにし、小さなことでも相談してもらえるような信頼関係を築いていきたいですね。皆さんにとって身近な存在となれるクリニックでありたいと思います。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
かかりつけ医院として、近隣の方々に気軽に来ていただけるクリニックであると同時に、遠方の方でも心臓や肺に不安のある方が、もう少し専門的な話を聞いたり、検査や治療を受けたりしたいという場合に活用していただけるクリニックをめざしています。心臓や呼吸器に不安を感じても、すぐに大病院へ行くのは難しいので、病院の一歩手前で相談に行けるクリニックになれると良いなと考えています。それから、心臓リハビリテーションを行っているクリニックはまだ少ないため、そのためだけに病院へ行くのは大変な方や、現在通っているクリニックでは心臓リハビリテーションがないがやりたいと思っている方もぜひ相談してください。地域のクリニックによって専門性が違うので、それぞれのクリニックの良い所を生かしながら、お互いに協力して診療していければと考えています。