土屋デンタルクリニック 桜丘 (世田谷区/千歳船橋駅)
土屋 嘉緒里 院長の独自取材記事
千歳船橋駅から徒歩15分、緑豊かな住宅街にたたずむ「土屋デンタルクリニック 桜丘」。土屋嘉緒里院長は、祖父の代から続く歯科医師一家に育ち、天職として診療に打ち込む父の背中を見て、自然に歯科医師の道を選んだという。約8年間の海外での生活を経て東京で勤務医として復帰し、2022年に開業。「父がやってきた流れがすごく私の中で大きかった」と語るように、悪いところだけを治すのではなく口腔内全体を診るトータルケアを実践する。やわらかな雰囲気の院内では、患者がユニットで寝てしまうほどリラックスできる環境づくりに努めている。父から受け継いだ診療理念と、女性歯科医師ならではのこまやかな対応について話を聞いた。
トータルケアと予防歯科で口腔内の健康を守る
特に力を入れている予防歯科について教えてください。
当院の患者さんは予防意識が高く、定期健診やクリーニングを希望される方が多いです。ただ、今まできちんと3ヵ月に1回クリーニングしていた方でも、実際に診察すると歯ぐきの中に歯石が残っていることはあります。そこで当院で重視しているのがSRP(スケーリング・ルートプレーニング)です。歯ぐきの中の汚れの除去を図るもので、時間はかかりますが、これをしっかりやることが歯周病予防の基本になります。保険のルールに沿って、検査、スケーリング、再検査、そしてSRPという流れで進めます。「ここに来ると時間がかかる」と思われることもあると思いますが、実家もそうでした。父は「時間はかかるけど、しっかりきれいにして差し上げる」という自負を持っていて、私もその姿勢を受け継いでいます。メンテナンスに入った方も、人によっては、半年から1年に1度は歯ぐきの中の汚れを除去することの必要性を理解していただいています。
トータルケアという診療方針について詳しく教えてください。
「ここだけ治療してください」という患者さんには、もちろんその対応をしますが、必ず口腔内全体の状況も説明させていただきます。これは、一つの歯だけでなく、口腔内を一つの臓器として捉えて診療することが大切だと考えているからです。父から学んだのは、かぶせ物をする前に必ず歯周病の治療をして、口腔内のコンディションを整えてから補綴物を入れるということ。私も若い頃に補綴の勉強会に通い、形成や形作りの技術を磨きました。今はだんだんと目が疲れるようになってきましたが(笑)、人に見せられるレベルの仕事はできていると自負しています。また、インプラント治療や親知らずの抜歯など口腔外科の処置も基本的に院内で対応。埋伏している親知らずの抜歯なども行っています。
患者さんへの説明で心がけていることは何ですか?
CCDカメラで口腔内を撮影し、できるだけ画像で患者さんにわかりやすく説明することを心がけています。施術前に写真を撮って「ここに虫歯があるので取りましょう」と見せることで、患者さんにも納得して治療を受けていただけると思います。そのため説明と導入の時間は長めに取っていて、初回はクリーニング希望でもますは資料集めとお話が中心になることもあるので、「上下全部の歯のクリーニングは今日はできないかもしれない」ということは最初にご説明して、了承を得てから進めていきます。かぶせ物や詰め物の治療の際には、自費の材料についてお話しすることもあります。素材の違いだけではなく、かかる手間や長期的な衛生の面などのメリットも丁寧に説明し、選択肢の一つとして理解していただけるようお伝えします。
父の診療理念を継承し、理想の歯科医療を実現
開業までの経緯と、この地を選んだ理由を教えてください。
実は8年近く、主人の仕事で海外に住んでおり、その間は出産・育児に専念していました。東京に戻ってからは勤務医として数年働きましたが、父がずっと実践してきた「患者さんを最初から最後まで診る」診療スタイルが根本にあって。勤務医だった頃は担当が分かれていて、患者さんのことを十分に把握できないまま治療することもありました。その中で、「最初から携わって、その患者さんのことを一から診て、何かあったときにしっかりフォローできるようにしたい」という思いが強くなりました。また、主人が「家庭のことは僕もやるから」と開業を後押ししてくれたのも大きかったですね。桜丘は引っ越してきて初めて知った土地でしたが、実家の家紋をモチーフにした実家のクリニックのロゴの桜と地名が重なったのも何かの縁だと感じており、実家のクリニックのロゴをそのまま使用しています。
歯科医師をめざしたきっかけと、お父さまの影響について教えてください。
祖父の代から歯科医師で、母も歯科医師という環境で育ちました。特に「こうなりなさい」と言われたわけではないですが、自然とそうなるものだと思っていました。父は本当に勉強熱心で「歯科医師になるために生まれてきた」と周りから言われるくらい天職だと思って仕事をしていた人でした。小さい頃、週末は家にいないほど勉強会に参加していた父は家庭を顧みず、のイメージで一緒に遊んだ記憶はあまりありません。自分が歯科医師になってからは、父の働く姿に尊敬の念を抱いていました。父の診療の特徴は、矯正も口腔外科も歯周病治療もオールマイティーにこなすということと、かぶせ物をする前に必ず歯ぐきの状態と口腔内のコンディションを整えてから治療すること。一口腔単位で診て、10年20年先を見据えた治療をする。その理念が私の中にも深く刻まれています。大分の実家で7、8年働いた時期もあり、その間にアメリカ留学も経験しました。
クリニックの設計や設備などについて教えてください。
内装は、あえて個室は作らず、患者さんが何を話しているか、スタッフが何を説明しているかを把握できる空間にしています。やわらかい雰囲気を心がけ、患者さんに安心してもらえるよう工夫しました。設備面では、開業時に必要なものはある程度そろえようと、歯科用CT、マイクロスコープを、昨年は口腔内スキャナーを導入しました。衛生管理も徹底していて、口腔外バキュームや医療機関向けの天井備えつけ空気浄化装置でウイルスの除去ができる環境を整えました。1階で開業ができたのは良かったですね。ご高齢の方も多い地域なので階段の昇降がないほうがいいと考えていたんです。
地域に愛される、長く付き合えるクリニックへ
スタッフとの連携やチームワークについて教えてください。
現在は歯科衛生士と歯科助手が各1~2人ずつの体制で、スタッフは、私の診療方針を理解してくれている心強い存在ですね。お昼も一緒に過ごし、一緒にいる時間が長いので自然とコミュニケーションが取れています。私としては上司というより「ママ友」のような関係で接していて、気づいたことはその場で伝えるようにしています。皆さん本当によくやってくださっていて、受付も電話対応も全員ができる体制。スタッフには患者さんへの心遣い、言葉遣いを大切にしてもらっています。すべての患者さんが気持ち良く来院できる環境づくりを心がけています。
今後の展望と地域医療への思いをお聞かせください。
この辺りは歯科医院が少なく、皆さん不便していたと聞きます。ですから「近くに歯科医院があって良かった」と思っていただけるような、長くお付き合いできるクリニックになりたいですね。お一人で来られた後にご家族を紹介していただくケースも増えています。予防の観点から、メンテナンスでしっかり長く来ていただける関係を築きたいです。プライベートでは週末は子どもたちのサッカーの応援や、大分の母のところへ2、3ヵ月に1回は顔を見に行っています。最近は、ホットヨガで汗を流してリフレッシュしています。オンオフをしっかり分けることで、仕事にも全力で取り組めています。地域の皆さんの口腔内の健康を、これからも長く支えていきたいと思っています。
読者へのメッセージをお願いします。
セカンドオピニオンとしてでも、気軽に相談に来ていただければと思います。いろんな先生の意見を聞くことは大切ですし、今までの治療でご納得いただけない点があった場合も含めて、しっかりお話を聞きます。お口の中は見えないので不安も多いと思いますが、画像を使ってわかりやすく説明し、納得していただいた上で治療を進めていきますので、安心いただければと思います。歯科を身近に感じていただき、何か困ったことがあれば「あそこに相談してみよう」と思い出していただけるような存在になれれば幸いです。