くめ歯科クリニック (北九州市小倉南区/下曽根駅)
久米 彰一 院長の独自取材記事
2004年の開院以来、地域の歯の健康を守り続けてきた「くめ歯科クリニック」は、下曽根駅から徒歩5分の場所にある。老若男女問わず、多くの人々から親しまれてきた同院。「開院当初は小さかった子が結婚し、自分の子どもを連れて来てくれるようになりました」と目を細める、穏やかで気さくな久米彰一院長の人柄も、幅広い世代に親しまれてきたゆえんだろう。そんな地域の子どもたちの成長も見守ってきた同院では、歯科診療全般に対応。中でも特に注力しているのが、歯ぎしりやスポーツ時の衝撃から口腔内を守るマウスガードの作製と、年齢を重ねるにつれ嚥下や咀嚼などの機能が落ちてくる口腔機能低下症の改善だ。「間もなく息子が加わり、週1回ですが口臭の外来を開始します」とほほ笑む久米院長に、クリニックの歩みも含め幅広く話を聞いた。
20年以上、地域から親しまれてきた歯科クリニック
先生は小さな頃から歯科医師になりたいと思われていたそうですね。
ええ、出身は田川郡添田町という所なのですが、家から近くの場所に叔父が開院した歯科クリニックがありましたので、小さな頃から遊びに行っていました。それが生活の一部でしたから、叔父やクリニックの人たちとのふれあいを重ねるごとに、自分も将来は歯科医師になりたいと自然に思うようになっていましたね。その想いは高校になっても変わらず、北海道医療大学歯学部へ進学しました。随分と環境の違う場所でしたが、全国からいろんな人が集まってくる大学でしたので、交流も広がり楽しかったです。卒業後は地元に戻り、叔父の歯科医院で歯科治療全般においてしっかり研鑽を積ませてもらいました。
その後、北九州で開院に至った経緯についても教えていただけますか。
義理の弟が北九州で開院していましたので、その紹介でこの地での開院に至りました。20年以上前ですので、この周辺の景色もずいぶんと変わりましたね。幅広い年代の方が来院されるのは当時も今も変わりませんが、最近は高齢者が多くなり高齢化が進んでいることを実感しています。ただ、以前よりも虫歯のお子さんがすごく減ったのはとても良いこと。定期的にフッ素塗布でお子さんを連れてこられるなど、虫歯予防に対する意識の高い親御さんが増えたことも影響しているのだと思います。もちろん虫歯で来院するお子さんもいますが、痛くてたまらずというのではなく、学校健診での指摘で来られるケースが多いので、ひどくなる前に処置できるのは良いことだと思います。
では、中高生から成人の方はどのような主訴で来院されるケースが多いでしょう?
メンテナンスで来られるケース、それから歯の着色が気になるからとホワイトニングを希望される方も多いですね。適応範囲であれば保険診療内で対応できるようになった治療もあることから、銀歯を白い詰め物に変えてほしいというご相談も増えています。そう考えると、この年代も歯に対する意識の高い方が以前に比べると多くなっているのは確かだと思います。高齢者になると、歯周病治療でお見えになる方が多く、歯周病は歯を失うリスクが高まりますので、入れ歯治療で来院される方も多いですね。近年、年齢問わず多いと感じるのは、歯ぎしりや食いしばりで歯が摩耗している方。中でも30代から50代の働き盛りの方は特に多いように感じます。
マウスガードと口腔機能低下症の治療にも力を注ぐ
その場合、どのようなアプローチをされるのですか。
寝るときに装着するマウスガードを作製し、歯ぎしりや食いしばりから歯を守る策を講じます。今はストレス社会ですからね。そういった社会背景も歯ぎしりの要因となり、歯や顎にトラブルを抱える働き盛りの患者さんの多さにつながっているといえるでしょう。実は、この治療に取り組むようになったきっかけは、子どもの歯ぎしりがひどいという親御さんからの相談でした。睡眠時のことはご自身ではなかなかわかりませんので、子どもも大人もご家族などからの指摘で受診につながるケースと、メンテナンスなどで来院された際に歯の摩耗が気になり、こちらからご提案するケースがあります。歯ぎしり用とは別に、スポーツ用のマウスガードもありまして、こちらはコンタクトスポーツなど、衝撃時に口腔内を守るための物になります。スポーツ用マウスガードも、患者さんから「ボクシングの試合があるからそれまでに製作してほしい」と頼まれたのがきっかけでした。
患者さんからのご相談が始まりだったのですね。また、口腔機能低下症にも注力されていると伺いました。
ええ、当院では50代後半くらいから少しずつ多くなっている印象がありますが、誰でも年を重ねると噛む力や飲み込む力というのが低下してきます。きっかけとしては、「最近、食べ物をうまく噛めなくなった」「飲み込みづらい」「よくむせる」などの主訴で来院されるケースが多いです。口腔機能低下症を診断するための検査方法はいくつかありますが、最初は簡単な検査から始めます。例えば咀嚼検査でいうと、ゼラチンで作った歯ごたえや独特の食感があるお菓子を噛んでもらい、それを検査機器を用いてどのくらい細かくかみ砕くことができているか調べるなど。あとは舌の力を測る舌圧検査。判断基準となる数値が決まっていますので、それをもとに診断いたします。改善に向けた多種多様なトレーニング法がありますので、その方に適した方法をご提案しております。
そして、間もなく口臭の外来も開始されるそうですね。
これは、現在別のクリニックで研鑽を積んでいる息子が毎週土曜日にこちらへ来て担当することになっていまして、今年の夏頃からの開始を予定しています。口臭分野だけでなく、歯科治療全般対応できますので、今後は息子も皆さんのお役に立てるのではないかと期待しています。歯科医師として成長した息子と一緒に診療を行えるという意味でも楽しみではありますね。口臭の外来をご希望の方は、スタッフやお電話にてお気軽にお尋ねいただければと思います。
今後はクリニック継承に向け、息子のサポートを
日々診療を行われる中、患者さんと接する上で心がけていることなどはありますか?
患者さんとしっかり対話することですね。治療方針など、ご納得いただいた上で治療に入ることを心がけています。お付き合いの長い患者さんが多いので、話が横道にそれることもよくありますけど、何げない世間話も診療に役立つことがありますから、そこも含め患者さんとの会話は大切だと考えています。それと、当院にはご家族でお見えになるケースも多く、その家族構成も把握できるのは、診療においてプラスになることがたくさんあるんです。例えば、ご家族の持病や、ご兄弟同士の虫歯の状態などを関連づけて診ることができます。おやつの食べ方にしてもご兄弟は似ていますし、生活背景を把握できていると、コミュニケーションを深めるのにも、診療にも生かせますからね。早いもので開院から20年。当時小さかった子も今ではずいぶんと大きくなりました。
地域のお子さんたちの成長も見守ってこられた20年だったのですね。
感慨深いですね。久しぶりに会うと、「大学生になりました」「就職しました」と報告してくれますし、子どもの成長はあっという間。中には、結婚して、自分の子どもを連れて来てくれることもあるんですよ。そんな時は、もう自然とみんな顔がほころびますね。スタッフも長く勤めてくれている方ばかりなので、患者さんとも顔なじみ。みんなで盛り上がります。当院では、歯科衛生士2人と歯科助手1人が勤務してくれていまして、特に高齢の患者さんは彼女たちと話すのを楽しみにここへ来ている方も多いようです。笑顔で話している姿は、見ているだけでもほほ笑ましいです。
地域の皆さんとのふれあいや息子さんとの診療など、今後も楽しみですね。
今後は徐々に息子へバトンタッチしていく予定ではありますので、あと何年現役でいられるかはわかりませんが、皆さんとはずっと変わらずにふれあいながら日々過ごしていけたらと思っています。目に見えない部分でサポートはしていくつもりですが、今の体制を維持してもらえれば、あとは息子の思うように診療していってほしいと考えています。息子なりの考えもあるでしょうからね。任せた後は何をしましょうか(笑)。今まで行けなかったので、長期旅行などいいですね。とはいえ、まだもう少しは頑張りますので、お困り事などあればご相談にいらしてください。