かわかみ整形外科クリニック (神戸市垂水区/学園都市駅)
川上 洋平 院長の独自取材記事
神戸市垂水区の「かわかみ整形外科クリニック」は、幅広い整形外科疾患に対応する地域密着のクリニックだ。膝関節のスポーツ疾患をはじめ、豊富な臨床経験を持つ川上洋平院長が、理学療法士らスタッフと協力して精度や質にこだわった医療の提供に努め、肩凝りや腰痛などの日常的な痛みへの積極的な治療を行っている。またテニスやウインドサーフィンで活躍した経験を持つ川上院長は、スポーツに励む人を応援したいという気持ちが強く「まずは痛みを取ることをめざし、納得のいくパフォーマンスができるように、患者さん目線で復帰に向けたお手伝いをしたい」と話す。スポーツ疾患に限らず、患者の要望に耳を傾けながら「患者一人ひとりの伴走者」として診療や研究に取り組む川上院長に、医療にかける思いと今後について詳しく話を聞いた。
積み上げてきた実績と経験を生かし、地域に貢献
まずは開院までの先生のキャリアについて教えてください。
神戸大学医学部卒業後、兵庫県立淡路病院(現・兵庫県立淡路医療センター)などで勤務し、その後大学院に進みました。大学院では、神戸大学や理化学研究所、先端医療センターで、膝関節を中心にスポーツ疾患、人工関節の手術、再生医療の分野などについて学び、大学院修了後はアメリカのピッツバーグ大学へ留学しました。ハイレベルな環境で多くのことを学び、日本中からドクターが来ているのでネットワークも広がり、おかげで日本全国に信頼できるドクターがいます。留学から帰り、北播磨総合医療センターを経て大学病院へ戻り、再生医療の研究や骨軟部腫瘍の臨床に従事しました。そして担当した患者さんを最後までしっかり診ることのできる開業医になろうと思い、神戸大学整形外科教室の先輩である木村眞二先生からクリニックを継承し「かわかみ整形外科クリニック」をオープンしました。
どのような患者さんがいらっしゃいますか?
午前中は変形性膝関節痛や腰痛などの一般的な整形外科疾患の患者さんが中心です。リウマチは予約制の専門の外来も設け、生物学的製剤を用いた内科的療法を中心に徹底的に治療していきます。毎月リウマチ便りを発行し、患者さんとのコミュニケーションを密に行っています。リウマチも骨粗しょう症も変形性膝関節症も女性に多く、7割くらいが女性の患者さんです。骨粗しょう症は骨密度を測るだけでなく、血液検査で骨代謝をチェックしたり運動指導を取り入れたりしています。また、超音波診断装置で確認しながら痛みの患部に注射を打つための神経ブロック療法も行っています。さまざまな痛みを抱えて来られますから患者さんの負担をなるべく少なくしつつ、回復が最速にめざせるよう取り組んでいます。午後はスポーツをされている学生さんたちの、スポーツ外傷やスポーツ障害に関する相談も多いです。
スポーツ整形外科に注力されているそうですね。
スポーツ整形外科はあらゆるレベルや年代のスポーツに励む方々のスポーツ障害に対する診療・治療、早期復帰をめざした治療を行う分野です。スポーツに熱心に取り組んでいると、関節、靱帯、腱、骨などの一定部位に繰り返し負担がかかることで痛みに悩む人が少なくありません。プロレベルのアスリートや部活動に励む人はもちろん、成長期のお子さんにも悩んでいる人は多く、理学療法士によるストレッチや動作チェック、適切なリハビリテーション、装具療法などを組み合わせながら、慢性のスポーツ障害やケガからの復帰、パフォーマンスアップの総合的なサポートをしていきたいと考えています。
スタッフ全員が患者の「伴走者」としてサポート
多彩なリハビリテーションも実施されていますね。
リハビリテーション科も標榜しており、常勤の理学療法士5人を中心に非常勤も含めて医学的なケアを行っています。スポーツ疾患はもちろん、高齢の方や出産後の女性のさまざまな痛みに対応できるよう設備を整えました。当院の理学療法士はそれぞれ違った専門性を持ち、さまざまな悩みに寄り添うことができます。例えば体育の教員免許を持っている理学療法士は、教え方や励まし方がとても上手ですし、女性の理学療法士は、出産を機に骨盤がゆがんでしまったり、お子さんを抱くことで腕や手首を痛めたりした患者さんに対して「ママのための施術」が得意。リウマチで動かしにくくなった手のリハビリテーションや訪問リハビリテーションも行っていますよ。物療のリハビリテーションの機器も体外衝撃波など先進のものをそろえています。
診療時のモットーは何ですか?
「一人ひとりの伴走者になること」がモットーで、これはスタッフ全員に、その意識を持つよう伝えています。患者さんの中に「どこにかかっても年のせいだから仕方ないと言われたけれど、ここに来て『一緒に治しましょう』と言われてうれしかった」とおっしゃった方がおられました。「一緒に」という姿勢が大事だと思うのです。患者さんに寄り添うこと、スタッフ同士が連携すること。できる限り患者さんの希望をかなえ、無理な場合も別の納得される提案をできるように心がけています。患者さんが笑顔で帰れるクリニックでありたいですから。当院では撮影したレントゲンやオリジナル疾患パンフレットをお渡しして患者さんにご自身の病気を理解してもらい、治療を受けていただくようにしています。
患者さんに寄り添うとは、具体的にどんなことですか?
例えば、スポーツを頑張っている患者さんがケガをされたとき。今休むわけにはいかない、とにかく痛みを取って戦える状態にと望まれる場合もあるでしょうし、決まった期日までにできる限りの治療をしたいとおっしゃる場合もあるでしょう。根本的な完治をめざすことが「正解」ではないわけです。それは治療法に関してもそうで、できるだけ手術はしたくない、雑誌で見たお薬、装具を試してみたいなど、いろいろな思いがあります。中には医学的に見て正解と言えないこともあるでしょう。でも、だからと言って簡単に否定していいものではないと私は思います。患者さんはなぜそう思うのか? 患者さんの本当の願いは何か? 患者さんの心をよく聞き、患者さんの希望に合わせて一緒に治療を進めていくことが「寄り添う治療」だと思っています。
幅広い活動を通じ、より良い医療をめざす
再生医療の研究にも従事されていたそうですね。
神戸大学医学部附属病院へ月に1~2回は再生医療の研究に行っていました。診療と研究の両立は大変だと感じることもありましたが、常にリサーチをして研究を続けておくことは大事だと思いますし、再生医療の分野は大学病院でも留学の際にも経験を積んできた分野です。特に骨や軟骨の再生や骨軟部腫瘍に再生医療を生かすための研究に取り組んできましたので、いつか骨軟部腫瘍のお子さんが近くの整形外科で術後の治療ができる環境をつくれたらと思っています。また、膝や肘関節疾患に対する再生医療の研究も進んできているため、実用化された際には、スポーツに励む人を中心に当院でも提供できたらいいですね。
院外の活動にも積極的に取り組んでおられるそうですね。
身体障害者スポーツをお手伝いするボランティアや整形外科分野に関する配信や執筆活動など、いろいろとチャレンジしています。新しいことに挑戦することで新しい出会いにも恵まれますし、新しい知識も得られます。一つのことをやり遂げれば、新しい挑戦への扉が開いていくのを感じられます。一見、医療に関係ないような分野にも学びは多くあるもので、診察室ではなかなか聞けない患者さんのリアルな悩みや思いを聞くこともあり、本当に勉強になりますね。日々の診療はもちろんですが、院外の活動を通して得た知見を生かしてより良いクリニックにしていけたらと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
今後はリハビリテーション担当のスタッフとの連携をさらに深め、痛みや障害の予防にもっと力を入れていきたいと思っています。特にスポーツ障害の予防にもっと細かく取り組み、スポーツ施設やチームとの連携も一層強化していきたいと考えています。もちろん近隣の方や整形外科的な疾患で困っている方にも気軽に相談してほしいですし、治療法や使ってみたい装具の相談もどんどんしてほしいです。木曜には予約の患者さんのみの外来を設けており、時間をかけてゆっくり病状を伺ったり治療方針を立てたりすることも可能です。またオンライン診療や電話での相談も受けつけています。困った時にいつでも役に立てるような体制をつくり、クリニック全体で治療の応援をしていきますから、安心して受診なさってください。