ふくだ代々木上原クリニック (渋谷区/代々木上原駅)
福田 雄三 院長の独自取材記事
代々木上原駅北口から徒歩1分のビル内にある「ふくだ代々木上原クリニック」は、今年3月に開院した胃腸の内視鏡検査と肛門の診療に力を入れるクリニックだ。仕事や子育てで忙しい人でも気軽に検査・手術が受けられるよう配慮しながら、胃と大腸の内視鏡検査と日帰りの肛門手術を行っている。東京や千葉の胃腸・肛門の専門病院で技術を磨いてきた福田雄三院長は、「この地で長く専門性の高い治療を提供したい」と意気込んでいる。病気だけでなく患者を診て、その人のライフスタイルに寄り添った診療を行うことにこだわる福田院長に、内視鏡検査や肛門の診療についてたっぷりと語ってもらった。
患者のライフスタイルまで見て治療にあたる
開院から約2ヵ月ですが、まず今の患者層について伺います。
近隣の方、特に30代から40代の方が多い印象です。胃と大腸の内視鏡検査と肛門の診療を行うクリニックですが、肛門科をあまり前面に打ち出すと受診しづらいかもしれないと考えて院名には入れていません。それでも周辺に肛門科を診る医院が少ないこともあってか肛門関連のお悩みをお持ちの患者さんも多く来院されていますね。主訴ではイボ痔(痔核)など肛門疾患で来院される率が高いです。当院では痔の日帰り手術を行っており、デジタル肛門鏡など専門的な機器も導入しているので、それを使って撮影した精細な画像をモニターに映しながら現在の状態を説明しています。患者さんにも「とてもわかりやすい」と喜ばれていますよ。私はもともと外科医師で、肛門外科の経験も積んでいるので、手術が必要かどうかはすぐに判断がつきます。そうした専門性の高い検査と治療をこの地域の患者さんに提供していきたいと思っています。
施設面でこだわられた点はありますか?
このビルには、もともと地元の方におなじみのスーパーがあったのですが、昨年の2019年にリニューアルされ、その2階にクリニックがあります。院内はトイレまで車いすで入れるバリアフリー設計です。特にこだわったのは、患者さんにリラックスして受診していただこうと、受付のフロント部分や待合室などの木材に、木目がきれいで落ち着いた雰囲気を醸すハワイアンコアを使っていること。私はギターやウクレレを弾くのですが、ウクレレの材質もハワイアンコアなので、院内に使いたいとのこだわりを設計事務所に伝えたのです。さらに準備室や待合などの椅子も自分で家具屋さんを回って、一つ一つ実際に座ってみて選んでいます。リカバリールームの椅子はストレッチャータイプですので、検査・手術後の患者さんを鎮静剤でうとうとした状態のまま運んでいまして、中には「いつの間に終わったんですか?」とおっしゃる方もいますね(笑)。
診療において大切にされていることは何でしょう?
病気も診ますが、人と人とのお付き合いとして患者さんにもしっかりと向き合いたいと考えています。同じ病気でも患者さんのライフスタイルによって治療法は変わるものです。例えば立ち仕事の方やタクシーなどの運転手さんですと痔になりやすいですから、その患者さんのライフスタイルも考慮して、職業や生活習慣にまで踏み込んでお聞きし、その中で最善の治療法を一緒に考える姿勢で臨んでいます。
慢性化した脱肛は、一度専門医院の診断を
日帰り肛門手術の内容を教えてください。
手術というと、痛みや苦しさを想像するものです。ですから当院では鎮痛薬や鎮静薬による麻酔を行い、専門病院で身につけた技術を用いて痛みや苦しさに配慮した手術を心がけています。日帰り肛門手術では大腸の状態も確認するため、事前に大腸内視鏡の検査を行います。もちろん初診の段階で応急処置は行いますが、基本的には次回に大腸内視鏡検査を行い、3回目の来院時に手術という流れです。平日と土曜の13時からは毎日、手術・検査の枠を取っていますので、患者さんの都合に合わせて、初診の段階で手術までのスケジュールを決めています。
痔はどの程度まで進行すると手術が必要になるのでしょうか?
最も多い症状はイボ痔ですが、指で中に押し込まないと戻らないほど脱出したり、軟膏などの薬を使っても出血や痛みなどが改善しない場合、治すためには手術を行うことになります。ただ日本人の成人のうち大半の方が痔を患っており、症状があるかどうかで手術の必要性は分かれます。市販の塗り薬などで対処できる方は特に手術の必要はありません。しかし痔は次第に悪化してくるものですから、年に何回も症状が出る慢性型なら、一度肛門科での検査をお勧めします。予防のために大切なのは、入浴をシャワーで済まさずきちんと湯船に浸かること。そしてトイレの便座に座っている時間を長くしないこと。用を足した後に長々とスマートフォンを見ている方は、肛門周囲の血流が滞るので要注意です。また下痢や便秘も痔の要因となります。清潔に保つことは基本ですが、温水洗浄トイレなどで洗い過ぎると皮脂が取れてかゆみが出ることもあるので、気をつけてください。
大腸内視鏡では負担の少ない方法で検査されていると聞きました。
当院で行っているのは「無送気軸保持短縮法」といって、千葉にある東葛辻仲病院にいた時に身につけた内視鏡の技術です。また、その前に勤務していた都内にある寺田病院の外科胃腸科でも、内視鏡検査について数多くの症例を経験しました。従来の検査術に比べ、無送気軸保持短縮法で挿入すると患者さんの負担は少ないですが、それでも不安という方もいるので基本的には鎮静剤を使用します。検査のみで終われる状態なら10~15分程度です。ただ、観察はしっかりと時間をかけて行います。良性のポリープを発見した場合は、出血が少ないコールドポリペクトミーという術式によりその場で切除するので、もう少し時間がかかりますね。日帰り切除手術が難しいと判断した場合は無理をせず、これまでの人脈から東京逓信病院や山王病院、がん研有明病院などを紹介しています。もちろん、患者さんが希望する病院があれば対応しますので、遠慮なくおっしゃってください。
外科の医師としての経験が診療や検査にも生かせている
上部消化器検査についても伺いたいと思います。
胃カメラは経口と経鼻の2種類の機器を備えているので、過去に口から飲んでつらい思いをしたなどトラウマがある方には、鼻から挿入する経鼻内視鏡での検査をお勧めしています。今後は渋谷区の消化器がん検診も始めたいと思っていますが、区の検診では鎮静剤が使えないので、経鼻による検査を希望される方も増えると思います。これまで経鼻内視鏡は経口に比べてどうしても画質が落ちてしまうものでしたが、最近の機器は画質も向上し、観察精度も経口とほぼ変わらないくらいに進歩してきています。経口か経鼻かは患者さんのご要望に応じて柔軟に対応させていただきます。また、初めて内視鏡検査をされる方は、痛みや苦しさが少なくスムーズに検査できれば、以降も気後れせずに受診できると思いますので、検査を受ける医療施設の選び方も大切にしてほしいですね。
先生は外科のご出身ですが、なぜその道を選ばれたのでしょうか。
私は三井記念病院で研修医だった時代から外科コースでした。もともと曽祖父の時代から代々歯科医師の家系で育ちましたので、自分もいずれ歯科医師になるものだと思っていたのです。それが、兄が2人とも歯科医師になったので自分には違う道もあるのではと考えました。その際、歯科は半分は外科的な仕事だということもあり外科の道を選んだのです。外科は手術によって症状の改善を図れることが多く患者さんに喜ばれることがやりがいです。これまで一般外科の医師として研鑽を積んできたからこそ、現在のCTなどの機材がない状況下でも、おなかを触るといった身体所見だけで手術が必要かどうか判断できると自負しています。開院してまだ数ヵ月ですが、すでに何件も総合病院に緊急で紹介して、その日のうちに手術になった患者さんもいらっしゃいます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
肛門科と胃腸内科の2つを中心に専門性を打ち出したクリニックですが、それ以外のことでも、もし私が話しやすいと思ってもらえるのであれば、どのような不具合でもいいのでご相談ください。一般の方には胃なのか心臓なのかはなかなか判別ができないものですので、地域に根差した医療提供者としてそこはしっかりと診たいと思います。胃腸や肛門以外でしたらしかるべき医療施設を紹介しますので、気になることがあれば、まずは何でも気軽に相談してもらえればと思います。