金町内科クリニック (葛飾区/金町駅)
木村 一史 院長の独自取材記事
金町駅南口から徒歩2分の複合施設内にある「金町内科クリニック」。同院は2016年に開業して以来、地域のホームドクターとして住民の健康管理をサポートしている。木村一史院長は、20年以上にもわたり経鼻内視鏡検査に携わってきたエキスパート。経鼻による検査は、経口に比べて嘔吐反射などの苦痛が少なく、落ち着いて検査できるため、より丁寧に観察でき、胃がんの早期発見・早期治療にもつながりやすいという。「病気になってからではなく、病気にならないために当院を利用していただけたらうれしいですね」と穏やかに話す木村院長に、医師になるまでのエピソードや、内視鏡検査の重要性などについて聞いた。
胃がんの原因となるピロリ菌の研究に取り組む
最近ではどのような患者さんが多く来ていますか。
開業当時と比べますと、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の治療、管理で来られる方が増えています。年齢も若い方からご高齢の方まで幅広いですね。ただ、ご高齢の方の中には、足腰が弱くなって通院できなくなり、在宅医療の先生にお任せするなど、少し心寂しく感じることもありますが、その一方で90代の方でも元気に通院している方もいます。ここは金町駅や京成金町駅のそばですし、金町駅南口はバスの便も良く、バスを使って来られる方も多いですね。当院は、日曜日も9時から14時45分まで診療していますので、平日に仕事で来られない方にも便利だと思います。当院が入っている施設内にはスーパーマーケットや図書館などもあり、検査の待ち時間にちょっと買い物に行ったり、あるいは買い物のついでに受診したり、ということもできます。
先生が医師になられるまでの経緯についてお聞かせください。
「医師になりたい」という気持ちはずっとありましたが、経済面や当時の実力などから医学部進学は難しいと考えて早稲田大学教育学部に進学し、卒業後は海外と接点が持てる仕事がしたいという思いから建設会社に就職しました。しかし理想と現実は違って、建設工事で海外へ行くことは少なくなっていったのです。海外への思いを捨てきれないまま3年ほど働いた時、青年海外協力隊の広告を見る機会があったんです。思い切って会社を退職して青年海外協力隊に参加し、アフリカの高校生に理科と数学を教えました。帰国後は1年ほど中学校の教師をしていましたが、医師になる夢を諦めきれず、30歳の時に福島県立医科大学へ進学したという経緯です。
ピロリ菌の研究も熱心に行ったそうですね。
ノーベル賞を受賞した研究で、日本人が最も恩恵を受けているのがバリー・マーシャル先生と、共同研究者のロビン・ウォーレン先生によるピロリ菌の発見だと私は思います。除菌すれば胃がんのリスクは3分の1に減るともいわれていますので、ピロリ菌の発見は、非常に多くの日本人の胃がんを防ぐのに役立ったともいえるでしょう。マーシャル先生と初めてお会いしたのは、仙台で行われた講演会に出席させていただいた時でした。その後、機会に恵まれ、オーストラリアのサーチャールズガードナー病院でピロリ菌の研究をすることができました。オーストラリアは自然も人の心も豊かで、とても良い国です。私も、私の子どもたちもすばらしい環境で学ぶことができました。 マーシャル先生たちがノーベル賞受賞してから今年で20周年になります。残念ながら、ロビン先生は昨年87歳で亡くなられましたが、マーシャル先生はお元気で研究されています。
経鼻内視鏡検査は午後の時間帯にも実施
こちらでは経鼻内視鏡検査に力を入れていると聞きました。
経鼻内視鏡検査は勤務医になってからずっと手がけていたのですが、開業直前に勤めていた多摩市の田村クリニックでは、多くの現場経験を積むことができました。同院では企業の集団検診を請け負っていましたので、年に数回は全国各地へ出張して企業の内視鏡検診をしていました。1つの事業所で2週間ぐらいの間、1日にかなりの人数の検査を行っていました。田村クリニックでも多くの内視鏡検査をし、精密検査が必要と判断した場合はほとんどの方をNTT東日本関東病院へご紹介していましたので、この時のご縁から日曜日には、NTT東日本関東病院の先生方が当院で大腸検査を担当してくださっています。
経鼻内視鏡検査にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
経口内視鏡検査は少なからず嘔吐反射がありますが、経鼻内視鏡検査ではかなり少なくなります。睡眠剤を使用せずにできますので、体への負担も少なく検査終了後も時間を置かずに日常生活に戻ることも可能です。嘔吐反射が抑えられれば、患者さんだけでなく検査をする側にとっても大きなメリットとなります。患者さんが苦しそうであれば早く検査を終わらせようという焦りが生じますが、経鼻内視鏡では心に余裕を持ち、ゆっくり時間をかけて検査を行うことができます。また、患者さんの中には糖尿病や高血圧など慢性疾患の治療で、毎朝薬を飲まなくてはならない方がおられますが、断薬せずに検査を受けられるよう、当院では午後の時間帯にも内視鏡検査を行っています。検査の時に胃の中に何も残らないように、朝は消化の良い軽食と薬、昼食は取りませんが、おなかがすいたときには、3時間前まではゼリーなどを取ることも可能ですので、より精密な検査を行えます。
こちらでは葛飾区の検診も行っているそうですね。
はい。葛飾区の特定検診や胃がん検診を行っています。胃がん検診の内視鏡検査は50歳以上の方が対象で、当院では経鼻内視鏡検査で行っています。先ほどもお話ししたように経鼻内視鏡検査は不快感の軽減が期待できますので、より受けやすいと思います。最近では胃がんの原因となるピロリ菌感染は減少してきていますが、ピロリ菌感染と関係ない悪性腫瘍も見つかることがありますので、ぜひ検査を受けていただきたいですね。葛飾区の胃がん内視鏡検診は本年は無料で受けられます。該当する人はぜひ、受診していただければと思います。当院のホームページから胃内視鏡検査の予約が取れるようになりました。
各患者に適した治療で健康をサポート
普段の診療では、どのようなことに気を配っていらっしゃいますか?
まずはよく話を聞くことです。時間が許す限りは患者さん一人ひとりとじっくり向き合い、自分のできる範囲で、できることを着実に行うよう心がけています。慢性疾患の治療では、患者さんの生活環境などバックグラウンドを考慮しながら、より適切な薬を選択するよう努めています。さらに、状況に応じて、迅速に判断し適切な医療機関へご紹介するようにもしています。また、患者さんがくつろげる環境をつくるということも重視しています。待ち時間も穏やかに過ごしていただけるよう、院内はバリアフリーで余裕を持った造りにしています。クリニック全体で安心できる雰囲気づくりをしていこう、とスタッフにも声がけしています。
お休みの日はどのように過ごしていますか。
実は、当院の休診日には、多摩の田村クリニックで診察を行っていますので、お休みというお休みは取れないのが実情です。田村クリニックでは、長くかかりつけとして診ている患者さんの診察や、内視鏡検査後のフォローアップをしています。20年以上継続している患者さんもおられ、患者さんとの深いつながりを感じます。当院は、金町に開業して10年目ですが、ここでも地域の方々とより深いつながりが持てるよう努めていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージを含めて今後の展望をお聞かせください。
これからも胃がんなどの早期発見・早期治療をモットーに、内視鏡検査の技術と経験を生かした診療を誠実に行っていきたいと思います。ピロリ菌を除菌した後もリスクの高い患者さんは継続した内視鏡検査が必要ですから、できるだけ楽に検査を受けていただけるようにしています。これまで内視鏡検査でつらい思いをされたことがある人もぜひお越しください。また、高血圧や高脂血症、軽い糖尿病も自覚症状が出にくい疾患ですが、検査をして適切な治療をすることで、大きな病気の予防につなげられます。病気になってからではなく、病気にならないために当院を利用していただけたらうれしいですね。地域のホームドクターとして、検診や診療を通じて健康管理をサポートしていきたいと思っています。