つばきウイメンズクリニック (松山市/いよ立花駅)
鍋田 基生 院長の独自取材記事
2015年の開院以来、不妊で悩む夫婦や女性特有の体の不調を抱えている人に寄り添い、専門性の高い治療を行っている「つばきウイメンズクリニック」。院長の鍋田基生先生は、愛媛大学医学部附属病院で生殖医療部門主任や産婦人科外来医長などを務め、約20年間にわたり高度生殖医療に携わってきた経歴を持つ。新しい技術やシステムの導入に積極的に取り組み、高度生殖補助医療の分野で豊富な経験と知識を有する鍋田院長ら医師や看護師、培養士などのスタッフがチームとなり、医療を提供する同クリニックの診療方針や特徴について聞いた。どんな質問にもテンポ良く、詳しく答えてくれる鍋田先生。「オーベルジュのようなクリニック」をテーマにした入院食や、今後の展望についてとても楽しそうに話す姿が印象的だった。
上質な産婦人科医療とサービスの提供を追求
どのようなクリニックにしたいと考えて開院されたのですか。
私は愛媛大学医学部附属病院産婦人科で生殖医療と女性医学の分野の経験を中心に積み、たくさんの患者さんのニーズにふれました。その実績の中で得た知識や技術を生かし、自分の思い描く婦人科診療に挑戦したいと考えたのが動機でした。患者さん一人ひとりの状況やご要望に、きめ細かにフットワーク軽く応えていきたいと思ったんです。思い描いたクリニックの理想像は、地域の皆さんから愛される「専門性の高いかかりつけの産婦人科」。開院以来、患者さんが通いやすく、上質な医療とサービスを提供できるクリニックをめざしています。
診療内容について教えてください。
多数の医師をはじめ、助産師、看護師、培養士、検査技師などのスタッフとともに、不妊治療、分娩、ウイメンズヘルスケアの3つを中心に産婦人科全般の診療を行っています。不妊治療に関しては専門性の高い技術を生かして、いかに早く患者さんを妊娠まで導くかということに重点を置いて診療しています。分娩については、快適な自然分娩はもちろんですが、理想的な無痛分娩を追求しています。ウイメンズヘルスケアは、ホルモンバランスの変化によって起こる、女性特有のさまざまな体の不調やトラブルに対して、女性医学の専門性を生かして医療的なサポートを行うものです。生理痛や月経不順、更年期障害、尿漏れなど、体の不調が気になったら気軽にご相談ください。
ホテルのロビーラウンジのような待合室をはじめ院内全体が奇麗で、先生のこだわりを感じます。
患者さんが快適に過ごせる空間にしたかったので、建物の計画にはかなり時間をかけました。特にこだわったのは動線です。患者さんがどう入って来て、どう動くのか、スタッフの動きはどうなるのかなど、いろんなシミュレーションをして考えました。設計士さんとのディスカッションで良いものを提案してもらったし、正直、採算度外視で造った施設ではありますが、建物自慢のクリニックにはしたくはないんですよ。
早期の目標達成をめざす不妊治療
先生の不妊治療への取り組みについてご説明いただけますか。
「1年以内に妊娠しましょうね」と、初診の方には話しています。「1年以内に妊娠」をポリシーに特徴のある治療の進め方をしています。ある程度の段階まで治療を進めて結果が出ない場合に行うのが一般的な検査も、当院では最初の検査項目に入れています。治療ではタイミング療法の次のステップとして人工授精を行うのが一般的ですが、当院は2つの方法を併用する流れをご提案しています。2つの方法を併用する「体内受精」に半年ほど取り組んで結果が出なければ、体外受精をご提案して1年以内の妊娠をめざしています。
男性不妊の治療も行っておられますよね。
はい。男性不妊の外来については、獨協医科大学特任教授の岡田弘先生が行ってくれます。どうしても岡田先生に治療と手術を行っていただきたかったので頼み込んだんですよ。無精子症に対する「MD-TESE(顕微鏡下精巣内精子回収術)」など、専門性の高い治療にも対応しています。岡田先生による男性不妊の外来は毎月1回の完全予約制です。
産科において取り組まれている「無痛分娩」について教えてください。
現在、当院の無痛分娩は経産婦が対象です。大学病院時代に休みを利用し、京都の島岡医院の院長、島岡昌幸先生のもとに通い、2年間ほど研修医のように基本から学ばせてもらいました。島岡先生による無痛分娩に最初に立ち会わせてもらった時、妊婦さんが笑いながら出産したんですよ。笑いながらの出産なんていうのを見たのは初めてでしから、「こんなお産があるんだ!」と衝撃を受けました。感動的なお産を体験してもらいたいという思いで、硬膜外麻酔による無痛分娩を行っています。当院には、埼玉医科大学総合医療センターの産科麻酔科で無痛分娩の経験を積んだ麻酔科医師がいます。麻酔科の医師や小児科の医師がいるのも、当院の強みです。
新しい技術の導入やシステムの改善に常に挑戦
先生が医師を志したきっかけは何ですか?
生殖医療に興味があったんです。1992年にベルギーのパレルモ博士が世界で初めて顕微授精に成功したんです。当時高校生だった私は、顕微授精法を解説する映像を見て衝撃を受けました。顕微授精法は今でこそ普通の医療行為ですが、その当時は神の領域だといわれていましたからね。こういうのをしてみたい、と考えたわけです。それで、私は文系だったのですが、理系に転向して医師になる道を選びました。志したという感じではなく、父親の事業を継ぐまでの間は自分の興味のあること、好きなことをやろう、という軽い気持ちだったんですよ。高度生殖医療への興味は大学に入学してからも、医師になってからもずっと続いたので、今も医師をしています。
入院食にもこだわりがあるとお聞きしましたが、先生ご自身がきっとグルメなんですね。
「オーベルジュ・クリニック」をコンセプトに、入院食にも力を入れています。以前ホテルでシェフをしていた料理長をはじめフレンチ担当、和食担当のシェフが上質な食材を使って毎日3食を用意してくれています。おやつやデザートは、専属パティシエが作ります。私は「毎日がお祝膳」って言ってます。院内にパン工房をつくり、洋食メニューの朝食では、その日の朝にブーランジェが焼き上げた自家製パンも提供できるようになりました。私もおいしい物は好きなんですね。日曜日には家族と一緒に食事に出かけています。
今後の展望を教えてください。
チーム力の向上が、より質の高い医療とサービスの提供につながると考え、「ISO9001(品質マネジメントシステムに関する規格)」を2020年に取得しました。また、患者さんの満足度を高めるためには、まずスタッフの満足度を高めなければならないと、2022年にはスタッフ専用の管理棟も完成しました。明るく開放的な管理棟ラウンジは、スタッフの休息の場となっています。これからもスタッフの働きやすさは重視していきたいです。やりたいことはいっぱいあります。「今より良くなること」を考えたり、実践したりするのが楽しくて仕方ないんですよ。
読者にメッセージをお願いします。
不妊治療に携わる医師は結果を出さなければ意味がない、努力賞はないんだと考えていますので、患者さんお一人お一人に合った方法を選択する「オーダーメイドの医療」で全力を尽くします。専門性の高い技術を用い、丁寧に行うことにこだわり、一日でも早く不妊治療を卒業できるように努めます。「感動的なお産」をめざす無痛分娩に関心がある方や、女性特有の体の不調にお悩みの方もご相談ください。