阿部デンタルオフィス (板橋区/志村三丁目駅)
阿部 嘉生 院長の独自取材記事
志村三丁目駅から徒歩3分の好立地にあるのが、完全バリアフリーで個室診療を行う「阿部デンタルオフィス」。「再治療のスパイラルを断つために、口腔内環境を整えたい」と話す阿部嘉生(あべ・よしお)院長は、実直で温かい人柄から患者の信頼も厚い。同院では、5台あるユニットのうち、3台を予防歯科専用として用意。口腔内カメラでの撮影なども実施し、歯科衛生士らスタッフと連携しながら、虫歯や歯周病にならないための予防歯科に力を注ぐ。患者の豊かで幸せな人生を願い「地域の虫歯ゼロ」をめざす阿部院長に、クリニックの特徴やスタッフの役割、予防への思いなど詳しく聞いた。
「-1歳から生涯歯を守る」ことをめざす予防歯科
院長のご経歴とクリニックの成り立ちを教えてください。
自分自身が子どもの頃に歯列矯正を受けたことをきっかけに歯科医師を志し、歯学部を卒業後は都内や近郊の歯科医院に勤務して、虫歯や歯周病の治療にあたってきました。学生時代から虫歯や歯周病、不正咬合などを未然に防ぐための予防歯科に興味があり、診療をしながら患者さんのお口の中の環境を整えることの重要性を再確認。そのためにはより幅広く対応する必要があると感じ、一般の診療と並行して、歯列矯正やインプラント治療の技術をそれぞれ専門の先生のもとで学びました。インプラントについてさらに掘り下げたカナダ留学を経て、2014年7月に「阿部デンタルオフィス」を開院。生涯にわたってご自身の歯を守るため、お口の環境を整えることをめざす予防歯科の考え方を軸に、幅広く診療にあたっています。
クリニックの造りや設備についてこだわっているところはありますか?
当初から完全バリアフリー設計にこだわりました。勤務医として働いていた頃、私たちにとって何げない動作でも高齢の方にとっては負担となる場合が多いことを知りました。私の妻も摂食嚥下障害のリハビリテーションを専門とする歯科医師で、大学病院と並行して当院でも診療を行うことから、高齢の方が通いやすいように院内の段差をなくし、完全バリアフリーとしたのです。また、お子さん連れでも気軽にご来院いただけるよう、キッズスペースを完備。診療室はプライバシーに配慮した個室とし、外に声が漏れることのないカウンセリングルームも用意しました。機器を徹底的に清掃する超音波洗浄器や高圧蒸気で細菌やウイルスを滅菌するオートクレーブも導入し、常に気持ち良く受診していただける体制を整えています。
どのような患者さんが多く通われていますか?
赤ちゃんから高齢の方まで、幅広い層の患者さんをお迎えしています。親子で受診していただく方も多いです。歯並びには骨格など遺伝的な要素もあり、食生活などの生活習慣も共有しているため、お口の環境はご家族で似る傾向があるとされています。ご家族で受診していただくことで、一緒に口腔環境整備に取り組むことができれば、より効率的に進めることが可能となります。歯が生え始める頃は子育てが大変な時期で受診を負担に感じることも多いと思われるので、おなかに赤ちゃんがいる「-1歳」の頃から、あるいは妊娠を意識し始めたタイミングでご相談いただけるのが理想です。また、当初より予防歯科の重要性を伝え続けてきたためか、現在では虫歯治療よりもメンテナンスでの受診がメインになっていますね。そのため、5台ある診療ユニットのうち3台を予防歯科専用とし、歯科衛生士が担当制でオーダーメイドの予防プログラムを提供しています。
歯科衛生士とともに、ケアしやすい口腔環境づくりを
予防歯科の考え方を大切にされているのはなぜですか?
「悪い部分ができたら削る」という従来の歯科医療に限界を感じたからです。一時的に痛みなどの症状を取り除くために治療を行っても、根本的な解決にはつながりません。一定期間が経過すると症状が再発し、また治療を繰り返してというスパイラルに陥ってしまうのです。虫歯や歯周病には必ず何らかの原因があります。その原因を追究し、それを取り除いてこそ、生涯にわたってご自身の歯を守ることがめざせます。トラブルの原因に迫り、口腔環境を良好にするための予防歯科は、いわばプラス思考の治療。ある種クリエーティブな仕事になるのです。患者さんだけでなく、歯科医師も歯を削るのは嫌なもの。削ることを繰り返すと、歯の寿命は確実に短くなってしまいます。こうした治療を避けるためには、できる限りトラブルを起こさないようにできることを提案し、継続していく予防歯科こそが重要となるのです。
予防歯科では歯科衛生士さんの役割が大きくなりますね。
歯を失う原因は主に3つ、虫歯と歯周病、そして歯や歯根の破折です。歯科衛生士は、このうち歯周病のケアに特化したスペシャリストになります。担当の歯科衛生士が画像撮影や各種検査を通して患者さんのリスクを判定し、歯科医師と情報を共有しながらそれぞれに合った予防プログラムを立案・提案。歯の健康の伴走者として、患者さんと一緒に長期的なケアに取り組みます。当院にはベテランから若手まで複数の歯科衛生士が在籍していますが、それぞれ診療の中心を担うプレーヤーだと考えています。予防プログラムを継続する上でトラブルが起きたり、矯正などの必要が出てきたら、そこからが歯科医師の出番と考えています。
矯正にも注力されているとか。
矯正というと見た目の変化をイメージされる方が多いと思いますが、実は予防的にも大きな意味を持ちます。なぜなら、歯並びが悪いと口腔環境を整える上で大きな障害となるからです。矯正できれいな歯並びをめざすことで、ブラッシングがしやすくなったり、磨き残しが少なくなったりすることが見込め、予防につながります。また、歯並びの悪さが引き起こす舌や唇などの悪い癖などに対しても、さまざまな良い影響が見込めます。当院では小児から成人まで幅広く矯正を行っていますが、より効率的に進めたいなら、骨の成長を利用できる発育期からの矯正をお勧めしています。早くから口内環境を整えることを心がけることで、大人になってからも口内環境に気を配るようになりますし、自分の歯を守る意識を身につけられるでしょう。矯正は親から子へ贈ることができる最良のプレゼントだと考えています。
詳細な検査と情報共有で口腔意識の向上をめざす
2024年から訪問診療もスタートされたそうですね。
もともと当院にいらしていた患者さんで、高齢化や持病によって通院が難しくなった方が中心です。地域の医療機関から依頼を受けて、介護が必要な患者さんや先天的に飲み込む力の弱いお子さんの所へも伺っています。訪問診療では、クリニックと同等の治療をご自宅で受けていただくのはもちろん、口腔機能の維持に努めることで、患者さんの生活の質や人としての尊厳を支えていくのが大きな目的となります。お口のクリーニングを通して、患者さんに「気持ち良くいられる」と喜んでいただけたらうれしいですね。ご縁があって一度治療を任せていただいた皆さんですから、一生涯かけて診ていきたいという思いがあります。
診療で心がけていることは?
患者さんのお口の中の状態を正しく把握することと、その情報を共有しながら患者さんの歯に対する意識を高めることです。当院では初診時に口腔内写真やエックス線画像撮影などを行っていますが、これらにより虫歯になりやすい性質やリスクなどを判定できます。患者さんお一人ではこうしたリスクに気づくことは難しいもの。また逆に歯科医師のみがリスクを把握していても、患者さんの意思と行動が伴わなければ治療を進めるのは難しくなります。口内環境の現状とリスク、方針を正しくシェアし、二人三脚で治療を進めていくことが重要なのです。クリーニングで歯のメンテナンスをするのは大事ですが、知識こそ予防につながる最大の武器だと考えています。
今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。
近年、マスク生活やアレルギーの増加によって、お子さんの口呼吸が問題となっています。口呼吸は口腔内の乾燥や菌の繁殖につながるため、改善に力を入れています。また、当院の患者さんは歯に対する意識の高い方が多く、より高いレベルの治療を求められることも増えているため、先進の治療を積極的に取り入れていきたいと考えています。引き続き、予防歯科を通じて地域医療に貢献し、歯を大切にする方々に寄り添っていきますので、その場しのぎの治療で再治療を繰り返すスパイラルから抜け出したい方はぜひご相談ください。