あやこレディースクリニック (大阪市東成区/玉造駅)
金 雅子 院長の独自取材記事
大阪環状線・玉造駅から歩いて約2分の場所にある「あやこレディースクリニック」。金雅子(きむ・あやこ)先生が院長を務める同院には、幅広い世代の患者が訪れる。来院する患者の多くは緊張や不安を抱えていることから、「患者さんが少しでも安心できるように、一人ひとりのお話を聞いて、一番つらい症状は何かを聞き出すようにしています」と金院長。漢方薬も積極的に取り入れており、希望する患者には症状に合わせた処方を行っている。取材では、医療を通じて地域貢献することを目標に掲げる金院長に、同院の特徴や強み、訪れる人たちへの思いなど幅広く聞いた。
女性のよりどころとなるようなクリニックに
最初に、開業に至るまでのお話を伺います。
私は、女性の心身の不調をメンタルヘルスも含めてしっかり診ていきたいと思っていました。ただ、医師になった当初は開業しようとは考えていなくて。家族に医師がいるわけでもなかったので、医師というのは勤務医としてキャリアを積み、入院患者さんを診たりしていくものだと考えていました。そこで大学卒業後に勤務医として働いて途中で大学院に入り、研究の傍らで臨床もするというコースに進んだのですが、学位を取得して本格的に臨床に戻るとなった時、初めて開業も一つの選択肢として意識しました。そこからは展開が早かったです。この物件がちょうど空いていて、慣れ親しんだ地域に根差し、医療貢献することができたらと開業を決めました。
こちらのクリニックならではの特徴はどんなところでしょうか?
こぢんまりとしたクリニックで、当院より機械や設備が整っているクリニックはたくさんあると思います。おかげさまで私自身も楽しく働かせてもらっており、私と同じ目線で患者さんに対応してくれるスタッフや、一生懸命手伝ってくれる看護師など、スタッフにもとても恵まれているんです。私が感じている、このアットホームで温かな雰囲気が当院の一つの特徴といえるのではと思います。もともと、婦人科に通っていただくハードルを下げるために、病院のような堅苦しさをなくしたクリニックにしたいと考えて開業しました。総合病院も近くに多くあり、必要な場合はご紹介し、スムーズに治療を受けられるようサポートをしています。継続的なアフターフォローなども行っています。スタッフもすべて女性なので、婦人科が初めての患者さんにも安心して受診いただけると思います。患者さんが話しやすい雰囲気、不安を少しでも取り除けるような対応を心がけています。
どういった患者さんがいらっしゃいますか?
20代から50代までの女性が多いですね。もちろん、10代や60代以上の方もいらっしゃいますよ。当院の周辺には若いファミリー世帯向けのマンションが多く立っていますので、親子で来院いただけることもあります。この辺りにお勤めの方や、多くはありませんが京都や滋賀、奈良、神戸など近県からもいらっしゃいます。患者さんの主訴で多いのは、月経痛、PMS(月経前症候群)、生理不順の3つ。40代後半以降の患者さんからは更年期障害の相談が多く、ホルモン補充療法などで治療を行います。その他、漢方薬や子宮頸がんワクチンをはじめとした各種ワクチン接種などの対応を行っております。
患者に合わせた漢方薬の組み合わせ処方に注力
こちらのクリニックでは漢方薬も積極的に取り入れているそうですね。
私自身が開業する前から漢方薬に興味があり、専門家から学んだり勉強会に参加したりしてきました。開業前に勤務していた医療機関の外来でも、ピルや鎮痛剤、ホルモン補充療法とは別のオプションとして、必要に応じて漢方薬を処方していました。例えばPMSや月経痛では、次の生理、もしくは次の次までに症状が少しでも楽になることをめざします。生理不順はもう少しじっくり取り組む必要があって、半年から1年、短くても3ヵ月スパンで症状の推移を見守ります。更年期世代のほてりや発汗、不妊などに悩む方にも、漢方薬は心強いもの。漢方薬もピル、また、ホルモン補充療法それぞれの特徴がありますから、症状に応じて、説明をした上で患者さんに選択していただいています。
漢方薬の良さはどのあたりにあると感じていますか?
漢方薬の良いところは、患者さんの症状に合わせていくつかの種類のお薬を合わせられるところでしょうか。西洋薬との併用も可能です。生理痛のほかニキビなどの皮膚トラブル、鼻炎などのアレルギー症状など、複数の症状があれば、それらのためのお薬も合わせることができるので、その方に合わせた処方ができるんです。あとは極端な副作用が少ないというのも大きいですね。薬なのでリスクはもちろんありますが、重篤なトラブルは出にくいと思います。また、10代の子の食欲不振や倦怠感、めまい、なんとなく元気がないから学校に行けないといった主訴にも役立つと感じています。自律神経が関係する症状には適応の幅が広く、診療のバリエーションが広がるといった良さもありますね。
子宮頸がんワクチンの啓発にも力を入れているそうですね。
子宮頸がん予防9価ワクチンが2023年4月から公費対象となりましたので、小学6年生から高校1年生まで対象者の定期接種は無料です。1997年度生まれから2005年度生まれのキャッチアップ接種は終了してしまいましたが、1回でも接種している人は2026年3月31日まで公費で3回の接種を完了できますので、忘れずに計画してほしいなと思います。接種率は少しずつ上がってきていますが、正直まだまだだと感じています。そのため対象年齢の方がいらしたらワクチン接種の説明をしたり、チラシも配布したりしています。質問も積極的に受けつけていますよ。ワクチンについて本当に知らなくて接種機会がないという方もいますし、知っていてもワクチンが怖いという方もいます。大切なワクチンですから、今後も婦人科医として適切な知識を広めていき、認知度、接種率の向上に貢献したいです。
医療を通じて地域貢献をめざす
診療する上で大事にされていることがあれば教えてください。
実は私自身が病気をして、2024年の4月から約4ヵ月の長期療養・休業を経験しました。闘病生活の中であらためて感じたことは、「患者になって気づくことがあまりにも多かった」ということ。検査一つ受けることもやっぱり不安ですし、結果を聞くまでの時間が思った以上に長く感じます。ですからその不安を増長させるような空気はなるべく出さないよう心がけています。そして少しでも安心してもらえるよう、まずは患者さんの不安や一番つらい症状を聞き出せるよう努力しています。患者さんと医師との間で問題としている部分にずれが生じないようにすることで、診療の時間がお互いにとって良い時間になります。「先生と話していたら、何だか元気が出ました」「安心しました」なんてお言葉をもらえたならとてもうれしいです。
患者としての経験が、今の診療にも生きているのですね。
自分が病気になって休業したことで、スタッフはもちろん患者さんたちにも心配をかけてしまいました。突然のことでしたので、患者さんにはご不便もかけてしまったのですが本当に温かい言葉をたくさんいただき、人の優しさがこんなにも人の心を打つのだとあらためて感じました。復帰できた今、これからはその優しさをお返ししていきたいという気持ちがとても強くなりましたね。また、これから同じ病気の検査や治療を受ける方のお役に立てればと思って、ブログでの発信もしています。最近は治療が落ちついているので趣味である登山のことなども書いているのですが、診察室で患者さんと交わす些細な会話が以前よりも増えたように感じます。診察室にいる医師としての私だけでなく、一人の人間としての私を知っていただけたことで、患者さんとのやりとりもよりスムーズになりました。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
私は、女性は家庭のキーパーソンだと思っているんです。特に20代から50代くらいまでの女性は、家庭のほかにも学校や職場など、さまざまな場所で重要な役割を果たす存在ですよね。頑張りたいけれど体や心の不調を感じてなかなかうまくいかないというようなことがありましたら、遠慮なく当院へご相談いただけたらと思っています。これからも女性を応援し、地域の皆さんの助けに少しでもなれるようなクリニックをめざしてまいります。