よしはら歯科医院 (茨木市／茨木市駅)
吉原 正晃 院長の独自取材記事
阪急京都本線・茨木市駅西口から商店街を抜けて徒歩約5分、閑静な住宅街に位置する「よしはら歯科医院」は落ち着いた「和」空間が印象的なクリニック。歯科保存学の博士号を持つ院長の吉原正晃先生は、「セルフケアが容易なお口の環境を整えること」を診療方針に、定期検診とクリーニングによる予防歯科に力を注いでいる。加えて、吉原院長はケアマネジャーの資格も持ち、介護施設の訪問診療に長年携わった経験から高齢者治療の実績も豊富。特に、しっかり噛めて、取り扱いが容易な義歯の作製を追求し、持続性の高い包括的な治療の提供をめざす。患者のライフスタイルや将来まで想定した診療計画や手厚いインフォームドコンセント、家族同様に患者を思いやる吉原院長の取り組みについてじっくりと聞いた。
セルフケアがしやすい口内環境をつくる包括的治療を
歯科保存学の博士号を取得されていますが、どのような学問なのでしょうか？
歯科保存とは、歯を抜くことなく治療・予防をすることで、大切な歯を口内に維持し、保存し機能させることを目的とした学問です。8020運動の認知度が上がり、抜歯に対して否定的な患者さんもおられますが、ぐらぐらになった歯を無理に残すと顎の骨が減っていくなどデメリットが大きい場合もあります。私は、8020運動を「80歳で20本の歯を残せるような口腔環境を獲得しよう」という意味合いで捉えており、問題のある歯を無理に20本残すことに意味はないと考えます。私がめざしているのは、治療が必要な歯だけを診るのではなく、口腔内の全体バランス、患者さんのライフスタイルや将来などを総合的に鑑みて治療計画を提案する「包括的治療」です。当院の診療方針は「セルフケアが容易なお口の環境を整えること」。できる限りご自分でケアできて、足らないところを私たちがお手伝いするというスタンスで診療にあたっています。
「セルフケアが容易なお口の環境」をもう少し詳しく教えてください。
理想は、定期的な検診とクリーニングによって、健康的な口内を維持していただくことです。歯を失う原因の半数以上は歯周病といわれていて、原因となる歯周病菌の感染を抑えることがとても重要です。虫歯も同様に感染症です。歯周病菌や虫歯菌が繁殖しやすくなる要因は歯垢や歯石があることです。ご自身で取りきれない歯垢や歯石取りを治療の一貫とし、単なるクリーニングではなく、予防的な診療に力を入れています。当院のクリーニングは歯科衛生士が45分程度の時間をいただき、お口の中の汚れや原因菌を徹底的に除去します。その際、正しいブラッシングや口腔管理の方法など、セルフケアについても合わせて指導します。不健康な口内は、皆さんの想像以上に全身の健康に悪影響を与えます。年に3〜4回程度のメンテナンス来院を推奨しています。
治療計画は自分の家族を想定して立案すると聞きました。
もし自分の親だったら？ 自分の子どもの場合は？ など、常に「私の家族の治療なら……」という観点から考えると、5年後10年後のことも気になりますよね。将来にわたりセルフケアができて、しっかり食事が楽しめる口内環境の提供ができれば本望です。大学院卒業後、介護施設の訪問診療に長年携わっていたこともあって、体全体のバランスや長期的スパンで口腔内を考える習慣が身についたのかもしれません。とにかく持続性の高い治療方法を立案するよう心がけています。加えて、各治療のメリット・デメリットを説明し、患者さんが納得した上で治療方法を選択できるよう、カウンセリングやインフォームドコンセントは念入りに。治療内容にもよりますが、当院の診療は平均30分程度の時間を頂いています。
高齢者診療の経験を経て、入れ歯治療の重要性を体感
介護施設の訪問診療に携わっておられたとのことですが、印象的なエピソードはありますか？
大学院卒業後、勤務先で一般診療の傍ら、3軒の施設を担当しました。その中で、暴れてしまい義歯が作れないという、長らく車いすで過ごしてきた患者さんがいらっしゃいました。訪問を重ねるうちに私のことを信頼してくれたのか、入れ歯を作製することができました。口の中をきれいに保っている方は風邪をひきにくいこと、インプラントが痛む方や歯のない方は食欲が減退し、ひとたびバランスを崩すと寝たきりになってしまう可能性が高いなど、口内の健康が全身に及ぼす影響を診療の中で大いに実感しました。私にとって、高齢者診療にあたった勤務医時代は、今現在の状態だけを診るのではなく、「もし、寝たきりになったら？ 入院したら？」と将来的なオーラルケアを見据えた治療計画の大切さを学んだ貴重な時間です。
義歯について豊富なご経験をお持ちですね。
義歯治療を見直すきっかけになったのは、認知症の方が入るグループホームでの治療を経験したことです。当時は骨の中に板を埋め込むブレードタイプのインプラントを入れている入所者さんがおられたのですが、不具合が生じて痛んでくると精神的にも不穏になり、不信感からか治療中に暴れることが多かったんです。だから、治療には全身麻酔が必要で四苦八苦しました。一方、入れ歯を長く使われている方は認知症になっても、型採りをして、新しい義歯が作れるんですね。入れ歯は多少合わなくてもなんとか食事ができたり、少々の手直しで普通に食事が取れるようになったりすることも望めます。インプラントは不具合があると大変な治療が必要になる。この事実は、当時の私にとって印象的でした。そこでの経験が、入れ歯治療を見直すきっかけになり、安定した入れ歯を作製するために残せる歯を大事にしようと考えるに至りました。
なぜケアマネジャーの資格を習得されたのですか？
私が訪問介護に携わった時期に、ちょうど介護保険制度が導入されました。当時は介護保険の適応範囲や諸条件がどのようになっているのか誰もわからなくて、現場は大混乱（笑）。患者さんのためにも、現場スタッフのためにも役立つと思い、介護支援専門員（ケアマネジャー）の資格を取得しました。現在も介護保険が適応される歯科治療の相談はもちろん、その他アドバイスできることもあるかと思いますので、悩みがある方は気軽に来院していただけたらと思います。
永久歯の交換期こそ定期検診でオーラルケアを
休日の過ごし方を教えてください。
子どもが3人いますので、休日は家族で過ごすことがほとんどです。私は運転が好きなので、車でドライブ旅行によく行きます。昔は片道600kmも苦にならなかったんですが、今は400kmくらいが限度で（笑）。この間は島根の水族館に行きました。当院は小学校が近い場所柄、お子さんも多く来院されるのですが、親御さんの気持ちは実によく理解できます。兄弟姉妹でも性格がまったく違うことが多く、歯磨き指導も一辺倒では済まないということを、子育てを通して実感しました。その子の気質に合わせて、根気よく話しかけ、親御さんと協力しながら、予防歯科に取り組んでいきたいですね。
院内の空間設計で工夫されたところはありますか？
赤ちゃんから高齢者まで、老若男女に優しいユニバーサルデザインを採用しました。院内は、車いすやベビーカーで診療台やトイレまで移動できる全面バリアフリー設計です。治療中気分が悪くなる患者さんがいらっしゃっても、いち早く異変に気づけるよう、診療室もあえて間仕切りをなくし、ひと目で全体を見渡せるようにしています。
読者へのメッセージ、今後の目標などはありますか？
引っ越しや入院などでやむを得ず歯科医院を変えなければいけないことってありますよね。そんなときでも困らないよう、しっかり自分自身でメンテナンスが可能な口内環境づくりをお勧めします。メディアで礼賛される治療方法が必ず正しいとは限りませんから、目新しいことにとらわれず、着実なメンテナンスを心がけてください。今後の目標は小学校高学年から中学校にかけて、永久歯の交換期のお子さんにもっと自分の口の中に興味を持ってもらうこと。その時期に正しい歯磨き習慣を身につけ、永久歯を大切にしてもらえたら、その後の人生が随分楽になるはずです。健康な口内環境を獲得するために、ぜひ来院してほしいと思います。
