石山整形外科 (西宮市/西宮北口駅)
石山 照二 院長の独自取材記事
阪急神戸本線・西宮北口駅を下車、南西口からロータリーを越えて徒歩約5分。山手幹線沿い、両度町東交差点すぐ近くで診療を続けている「石山整形外科」。石山照二院長は大阪大学を卒業後、関西各地の基幹病院に整形外科医として20年余り勤務し、2010年に同院を開業した。高齢者の骨折は命にも関わると考え、診療では骨折の原因となる骨粗しょう症対策に注力。また、患者のニーズに応えてクリニックの隣にリハビリテーション施設や美容サロンを併設した。「心身ともに健康をめざし、ハッピーになってもらえたら」と朗らかに笑う石山院長の、診療姿勢や患者への想いなどについて、じっくりと話を聞いた。
地域の骨折予防を引き受ける覚悟で、整形外科を開業
クリニックの特徴や、患者層などについて教えてください。
当院は2010年に開業した整形外科医院で、整形外科とリウマチ科に対応し、クリニックの隣にはリハビリ施設と美容サロンを併設しています。この街に開業したのは勤務医時代、開業を考えていた時に物件を紹介されたことがきっかけでしたが、今や第二のホームタウン。当時はマンションや住宅がまだ少なかったものの、開業した頃からだんだんと住民が増え始めて……。当院は、この街と一緒に育ってきたようなものなんです。今では患者さんとの交流も増えて、地域に愛着を感じるようになりました。患者さんは地域住民の方や近隣で働いている方が多いです。子どもは学校や部活でケガをした子、高齢者は腰痛や膝痛、肩の痛みの相談が多く、幅広い世代の方が通われています。
整形外科を専門に選ばれた理由は何ですか? また、開業までのご経歴を教えてください。
大阪大学医学部に在学していた当初から、外科系の診療科目が自分に合っているだろうと感じていたので、多数ある中から整形外科を選びました。卒業して医師になって以来、整形外科ひと筋。基幹病院で手術を中心とした診療研鑽を積んできました。私自身、整形外科は外科の中ではシンプルな手術をするイメージを持っていましたが、実際はそうでもなく(笑)、勤務医時代には人工関節の手術など、難易度が高く技術を要する手術を週に何度も行うことも普通でしたね。開業後は身近な疾患を診ることが増えましたが、今も当院の患者さんで手術が必要な場合は、近隣の病院に赴いて執刀することがあります。
手術以外で、力を入れている診療は何ですか?
骨粗しょう症の予防と治療に取り組んでいます。骨粗しょう症は骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気として世間でもよく知られていますね。加齢が原因の一つとされているため、高齢の患者さんが多いことも特徴です。骨粗しょう症を患うと、少しの打撲や圧迫でも骨折しやすい状態になってしまいます。そのため、つまずいたりぶつけたりした拍子に腰の骨や足の付け根などの骨が折れて、手術になることも。実際、勤務医時代も、骨粗しょう症が原因で骨折して救急車で運ばれてくる高齢の患者さんをたくさん診てきました。骨粗しょう症からの骨折は、もろくなった骨をつなぎ合わせる必要があるため、手術も簡単ではありません。予防できない病気ではありませんから、開業するからには積極的に対策していきたいと考えたのです。予防の取り組みで患者さんの健康を守りながら手術件数を減らし、病院の負担を減らすことにもつながればと思います。
骨粗しょう症とその予備軍は40代の患者にも見られる
骨粗しょう症を専門的に扱っているのでしょうか?
当院では関節痛や打撲、スポーツ外傷など一般整形外科には幅広く対応していますが、高齢化が進んでいる現実を踏まえて、とにかく骨粗しょう症を見逃さないように取り組んできました。そのために開業当時は置いているクリニックが多くなかった病院向けの高精度な骨密度測定機も導入したほどです。勤務医時代にも骨粗しょう症対策はすべきと考えてはいましたが、開業後はより「やらねば」という使命感が強くなりましたね。というのも、開業後のほうが患者さんとの距離が近くなって生活背景を知る機会が増えたので、想像以上に「予備軍」がいることを実感したんです。ですから、当院に来る高齢の患者さんで少しでも骨粗しょう症が疑われる場合は、エックス線撮影や骨密度の測定を強くお勧めしています。
美容サロンを併設しているところも、こちらの特徴の一つですね。
実は、美容サロンを開設したのは、新型コロナウイルス感染症が流行してからなんですよ。外出できなくなりテレビばかり見ている高齢の患者さんたちが「もう生きていてもしょうがない」というような話をすることが多くなったのが、気にかかっていました。それで、なんとか楽しいことをしてあげたいけれど、何を望まれているのかわからないので、リハビリに来る患者さんにアンケートを取ってみました。そうすると、肌や髪をきれいにしたいなど美容に関する願望が予想以上に多かったので、驚いたんです。高齢者にとって美容サロンは敷居が高いそうで、だったらうちでやろうかと思って始めました。リハビリだけで通院するのは気が進まないけれど、美容もできるならと来院される方もいます。僕自身も今回の新型コロナウイルス感染症の流行で、体だけでなく心も健康にしていくことが大切だと、改めて考えるきっかけになりました。
診療で心がけていることは何ですか?
繰り返しになりますが、骨粗しょう症の患者さんを見逃さないように気をつけることです。例えば、患者さんから痛いと言われる前に、痛みの出そうなところを見つけるよう努め、骨密度計測を行い、早めの対処につなげています。こうした診察をしてきて、これまでかなりの数の「隠れ骨粗しょう症」を見つけてきました。中には、40代や50代で早くも骨粗しょう症の兆候が見られる方もいましたね。「放っておいたら将来的に骨粗しょう症になるだろう」という状態の方を早い段階で見つけ、予防や適切な治療につなげていくことが、医師としてのやりがいです。年を重ねたときに、圧迫骨折で腰や背中が大きく曲がってしまうリスクも大きいですから、ここでなんとか食い止めてあげたい。そんな思いを持って、日々の診療に向き合っています。
取りきれない痛みとは、うまく付き合うことが大切
先生が医師の仕事を選んだ理由を教えてください。
受験生だった当時、国民的人気を博していた医療漫画があり、大きな影響を受けました。でも、「医師になりたいです」と担任の先生に相談したところ、「今の成績では、希望する医学部には入れないだろう」とキッパリと言われてしまって……。それでショックを受けて、奮起して勉強に励み、大阪大学医学部に進学したんです。
医師として働いてきて、忘れられない経験はありますか。
やはり、骨粗しょう症で高齢の患者さんが亡くなっていくのを何度も見てきたことです。私が研修医だった頃は、骨折で手術をした高齢者は1年以内に亡くなってしまうケースがほとんどでした。当時は全身麻酔で手術を管理することが多かったのですが、全身麻酔は内臓への影響と負担が大きく、高齢者にはリスクがあります。そのため、持病のある方などは、術後に著しく弱ってしまいがちなんです。しかし、90代から100代となると、大きな骨折は手術をしないと亡くなるリスクが非常に高くなります。現代医学では麻酔や手術の技術も進歩していますが、それでも高齢者の骨折が死につながりやすいことは変わりありません。こうした経験から、患者さんにとってより身近で相談しやすい地域のクリニックとして、予防に努めることが使命だと感じています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
年を重ねると腰痛や関節痛、神経痛などのさまざまな痛みに悩むことが増えますが、痛みを完全に取り去ることは難しく、今後いかにして病気や痛みを軽いレベルで抑えていけるかが肝心となります。患者さんが痛みとうまく付き合い、ご自身の人生を楽しんでいけるように、お手伝いをさせていただきたいですね。また当院では開業当初から「寝たきりゼロ」をめざしていて、最近では通常の診療に加え、心身両方の健康をめざしてリハビリ施設や美容サロンを併設しました。これからも、皆さんの気持ちが前向きになるような取り組みに努めていきたいです。骨粗しょう症については、特に女性は成長期からの生活やホルモンの関係で、若くても骨粗しょう症が進んでいる方がいます。ダイエットや激しいスポーツに取り組んできた方など、心当たりがあれば一度、骨密度を測ってみてください。