北山内田歯科医院 (京都市北区/北大路駅)
内田 雅也 院長の独自取材記事
京都市営地下鉄烏丸線・北大路駅から8分ほど歩いた所にある「北山内田歯科医院」。開院から20年の間、地域の患者のニーズとともに診療スタイルを確立してきた。陽光が差し込む開放感のある院内は、内田雅也院長自身もリラックスできるというこだわりの空間だ。「答え」を早急に求めるのではなく、その「過程」を探ることを重視し、患者との対話の時間を大切にする内田院長。長く通ってくれている患者が多い分、患者の年齢層が高くなっても対応できるよう新しいことにも挑戦したいと意欲を見せる。開業の経緯や診療で気をつけていること、今後の展望などをじっくりと聞いた。
落ち着いた立地とリラックスできる空間へのこだわり
歯科医師をめざしたきっかけやこれまでのご経歴についてお聞かせください。
高い志を持ってめざしたというわけではないのですが、父も祖父も歯科医師だったので、他の人に比べれば身近な存在だったのでしょう。大阪歯科大学を卒業後は、京都駅前にある「山本歯科医院」に入職。いわゆる総合歯科であり、若い歯科医師を一から育てることを伝統的に続けておられる歯科医院で、基礎をしっかりと叩き込まれました。各分野の専門の先生が集まっていたので幅広い知識を得られましたし、駅前という立地からさまざまな患者さんを診ることができたのもいい経験です。多くの勉強会に参加する機会をいただき、たくさん勉強することができましたね。
そこから開業を決意された経緯は何だったのでしょうか。
同じ歯科医院で勉強をしていた先生が開業することになり「大きな歯科医院しか知らないだろうから」と誘ってもらい、手伝うことになったんです。今でもお世話になっている方で、自分で歯科医院を持つイメージや開業に必要なノウハウなどを学ぶことができました。山本歯科医院に残るという選択肢もありましたが、一通りできるようになったので自分の力を試したくなったのが開業のきっかけです。また、これまでは、どちらかといえば次から次へと患者さんが来る中での診療で、落ち着いて話をしながら治療するスタイルではなくて。ちょうど世間的にも歯科医院が増え始め、ゆっくり時間をかけて診るという流れに変わってきていたタイミングだったので、自分には向いているのかなと思い、開業を決めました。まずは2005年に北山通に面したビルの1階でスタート。人通りのある場所で歯科医院があることを知ってもらい、8年ほどたってから現在の場所に移転しました。
歯科医院づくりのこだわりを教えてください。
敷地が狭いので、圧迫感がないようにしてほしいと設計士さんにお願いしました。当院の入り口は全面ガラス張りで、待合室も吹き抜けになっているので開放感があります。患者さんから好評で「コーヒーを出してよ」と言われることも多いので、引退したら喫茶店をやってもいいかなと(笑)。私がメインで使う診療台は感染症対策を考えて個室にしています。待合室に面した側がガラスになっているので、入り口・吹き抜けから入った日差しが個室まで届くんですよ。性能の良いライトよりも自然光で見たほうが仕上がりがわかりやすいですし、少し疲れたときに見上げると空が目に入るのは私自身もホッとできます。こちらがリラックスしていないと患者さんもリラックスできませんからね。
患者と同じ目線に立ち、長く丁寧に付き合いを重ねる
力を入れている診療についてお聞かせください。
メンテナンスを重視し、80歳で20本の歯を残そうということを大切にしています。というのも、この辺りは昭和の初めにできた住宅地で、3世代ほど進んでも便利で静かなこの地を好んで長く住んでいる方が多いんです。当然、通っていただいている方は年齢を重ねていかれるので、取り立てて変わったことをするのではなく一人ひとりを丁寧に診続け、お口の健康を守ることが私の役割だと考えています。長く診ていると、普段どんな生活をしているかも把握できてきます。例えば夜勤の多い方は、生活習慣の改善を指導するのが難しいですよね。患者さんとの信頼関係を大切にしながら、患者さんの生活背景にも配慮した治療を進めています。
診療で気をつけていることや意識していることは何ですか?
患者さんと同じ目線で考えることです。以前、何かで見た医師の話で「医療の最前線」とは、常に知識をアップデートし続けることはもちろんですが、目の前にいる患者さんに近いところで仕事をすることも最前線なのではと言われていて、なるほどと。いかに患者さんに近い目線で、その人の気持ちを考えて診療できるかを大切にしたいと思っています。そのためにはある程度の時間は必要ですから、平日は20時まで、土曜日も17時までという診療時間になっています。
開院当初からコンセプトを決めていたのですか?
自分でこうしたいと明確に決めていたのではなく、患者さんのニーズに応えていたら今のスタイルになりました。もし、時間をかけず通院回数も極力減らしてほしいとスピードを求められる方ばかりなら、今とは真逆のスタイルになっていたかもしれません。地域の皆さんとともに20年歩んできた間に、私も当院も育てていただきました。
すぐに答えを求めず、過程をヒントに糸口を探る
スタッフさんはどんな方がいらっしゃいますか?
歯科医師は私一人で、歯科衛生士が数人来てくれています。話好きのスタッフが多く、次々と患者さんをさばいていくスタイルの歯科医院で働いてきた方は、じっくりと時間をかけられることを「楽しい」と言ってくれています。お話の時間を大切にされている患者さんも多いので、歯科衛生士との会話が定期的なメンテナンスの習慣につながればうれしいですね。
開院から20年を迎え、今後はどんな歯科医院にしたいとお考えですか?
まずは自分自身の体力を維持しながら、新しいことにもチャレンジしていかなければと考えています。医師は病気の人を診ますが、歯科医師が診るのは基本的には元気な人。しかし高齢者が増えてくれば、持病のある方を診る機会も当然増えてきます。当院でできることと大きな病院での治療が必要なことのラインを見極め、適切に対応していく。そのためには知識のアップデートも常に続けながら、近隣の医療機関との連携も大切にしていかなければなりません。これまで当院を信頼して通ってくれている患者さんのために、できることをこれからも模索していきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
歯科医院の主役は、あくまでも患者さん。患者さんのニーズがあって、当院がどうお役に立てるかを話しながら、一緒に考えていくというスタンスです。実は歯科医師は「治療」と言いながら、歯を元通りにすることはできません。例えるとすれば、ガラスは割れたら新しいガラスに交換しますが、歯の治療の場合、割れたガラスに似たものを入れて「ガラスに見えるでしょう」と修復をめざすイメージでしょうか。その尺度は本人が満足するかどうかであり、医学的には治療が終わっていても患者さんが納得いかなければトラブルの元にもなります。インターネットで調べて答えを出すのではなく、最初に困ったことを教えていただき、問題を解決するための過程を大切にした診療を心がけています。当院の診療スタイルを見てみたいという方は、ぜひご相談くださいね。