フジバヤシ歯科クリニック (京都市左京区／出町柳駅)
藤林 晃一郎 院長の独自取材記事
京都市左京区の白川通沿いにあり、銀閣寺道バス停からすぐの「フジバヤシ歯科クリニック」。おしゃれな間接照明と落ち着いた色合いの院内で、スタッフがいつも笑顔で温かく患者を出迎える。「患者さんに気持ち良く通っていただくためには、やはり心が大切ですよね」と快活に話すのは、院長を務める藤林晃一郎先生。気さくで明るい言葉からポジティブなパワーがあふれる魅力的な歯科医師で、診療の傍ら勉強会や左京歯科医師会の活動にも熱心に取り組んでいるという。そんな藤林院長に、クリニックの現況や治療コンセプト、過去の出会いから新たな取り組みについて、たっぷりと語ってもらった。
患者それぞれのライフステージに合わせた治療を提案
今年で開院17年だそうですね。現在のクリニックの状況についてお聞かせください。
そうですね。待合室の窓際に飾っているぬいぐるみも、今ではずいぶんと色あせてきました（笑）。現在、歯科医師は常勤が私を含めて3人。ほかに非常勤で矯正の先生に来てもらっています。診療室はすべて個室で、治療用のキュアルーム3室とメンテナンス用のケアルームが2室。患者さんに関しては居住エリアや年齢もさまざまで、京都府の北部や兵庫県など、遠方からわざわざお越しになる患者さんもおられます。皆さんにいつでも気持ち良く通っていただけるように清掃専門のスタッフを置き、快適に過ごせる院内環境にはいつも気を配っています。
治療において大切にしているコンセプトを教えてください。
歯科治療で大切なのは、一人ひとりの患者さんのライフステージに合わせ、その方にとってベストな治療を提案することです。例えばインプラント治療にしても、歯が入ることだけが最終目標ではなく、生涯にわたってきちんと噛めなければ意味がありません。お年を召した患者さんの場合、後期高齢になって歯磨きが困難になることを見越して清掃性の良い形の歯にしておくなどの先見が必要です。同じ治療を行うにしても、30歳と80歳とでは考え方もアプローチも異なるわけですね。単純に口の中の問題さえ解決すればいいというのではなく、その方の生活まで視野に入れた治療を行います。主役はあくまで患者さんであることを常に忘れずにいたいですね。
チェアサイドで心がけていることはありますか？
一番は患者さんに不安なく治療を受けていただくことですが、単純に技術やエビデンスを振りかざすだけでは患者さんに安心していただくことはできません。真心を持って患者さんと向き合い、なるべく気持ちの良い応対と、わかりやすい説明を心がけています。もう一つ大切なのは、患者さんの納得につなげることですね。一方的にいくら説明しても、患者さんに理解してもらえなければ、それは単なる説得です。どのような治療をするにしても、患者さんにしっかりと理解してもらい、納得していただいてから始めることが重要です。言葉だけではなかなかわかりづらい部分もあるでしょうから、当院では画像や図表を積極的に活用し、モニター上で印や文字を書き入れるなどして明解な説明を心がけています。
しっかりと噛めることが生涯の幸福につながる
先生は歯周病治療が専門とお聞きしました。
歯周病は慢性の病気で、歯を失ってしまう原因の筆頭です。歯周病治療はあらゆる歯科治療の基本で、インプラント治療にしても審美歯科にしても、まずは歯周病をしっかり治さないことには何もできません。歯周病にも、なりやすい人、なりにくい人というのがあり、細菌検査でそれがわかります。最初にきちんと診査や診断を行い、その人に応じた治療を考えることが大切です。生涯の健康で大切なのは、やはりしっかりと噛めるということだと考えています。噛めなければ人は弱ってしまいます。食事の時以外は入れ歯が外されている状態の場合、次第に入れ歯が合わなくなってまともなごはんが食べられず、軟食が中心となって虚弱が一気に加速してしまいます。私は入院中の患者さんの訪問診療にも対応していますが、「噛む」ということは、それほど健康に直結していると感じます。
インプラント治療で大切なことは何ですか？
インプラント治療そのものは誰もが簡単にできるようになりましたが、そのぶん細かな部分までしっかりと考えた上で治療に入る必要があります。歯を失う原因には歯周病や虫歯、噛み合わせなどがあり、同じことを繰り返さないためにも原因をしっかりと見極めることが重要です。あとは適応の問題ですが、現在は歯科技術も進み、リウマチや糖尿病、心臓病などの全身疾患がない限り、顎の骨が足りないケースでも骨造成などでほとんどの場合は対応が可能です。ただし、なるべく土台がしっかりしているうちに治療をしたほうが負担は少なく済みます。家を建て替えるのに、基礎工事からやり直していたら時間もコストもかかってしまうでしょう？ なるべく早めに信頼できる歯科医院で診てもらうことをお勧めします。
こちらではメンテナンスにも力を入れているそうですね。
歯科は治療をするところというイメージが強いと思いますが、むしろ予防や健康維持こそが基本と私は考えています。当初は1室だったケアルームを2室に増設したのも、メンテナンスの重要性や歯科衛生士の働きやすさを踏まえてのことです。当院には複数の歯科衛生士が在籍していますが、その中には70代の大ベテランもいます。歯科衛生士は若い女性という固定観念があるせいで、せっかくスキルを持ちながら40代、50代で辞めていくのは実にもったいないと感じます。当院では年齢や性別による偏見をなくし、貴重な人材を活用する取り組みを進めています。また、一部で歩合制を採用し、働き方を自分で決められるシステムも始めました。努力目標を持てば、技術や患者さんへの接遇もおのずと向上していくでしょう。既成概念にとらわれることなく、こうした改革を一歩ずつでも進めていきたいですね。
出会いに感謝し、口の健康を全力でサポートしたい
現在の先生を形づくる転機となった出来事はありますか？
私も歯科医師になった当初は特に目標もなく、ただ漫然と仕事をしていたんですね。そんな時に出会ったのが、私の恩師である「タキノ歯科医院」の瀧野裕行先生です。この出会いが私のすべてを変えました。瀧野先生のもとで技術的なことから患者さんへの接遇まで学ばせていただき、初めて歯科医師という仕事に本気で取り組めるようになったと思います。また自分自身を見つめ直し、患者さんもスタッフも、みんなが笑顔になれることを本気でめざすようになりました。また、歯科医師会での活動や病院との連携、地域包括ケアなど、院外での活動の大切さにも気づくことができました。今ではたくさんの出会いが私を支えてくれています。今後もその感謝を忘れず、後進の育成などにもさらに力を入れていきたいと思います。
ご家族や趣味のことも教えてください。
うちは私と妻、娘が2人の4人家族。妻はここで歯科助手として私を手伝ってくれています。上の娘は大学で歯科衛生士をめざしていますが、父親が歯科医師であることを同級生にすら隠しているにもかかわらず、やはり実習先では言葉や行動からバレてしまうようです。私の趣味はヨットで、今も九州、四国、関東など、全国で開催されるヨットレースに出場しています。また、時には日本海でイカ釣りに興じることもあります。そうやって休日はしょっちゅう出かけていますが、家族は私の趣味に巻き込まれたくないと言ってついて来てくれません（笑）。レジャーも仕事も夢中でやるから楽しいんです。そして、すごくいい人生を送っていると実感します。皆さんも健康をキープして、ぜひ悔いのない人生を楽しんでほしいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
人生の最後まで自分の歯で噛めること。それが私たちが掲げる最大の目標です。そのためには一人ひとりの患者さんの口腔内に合った治療や予防が必要です。当院では患者さんが来院しやすい空間を整え、誰もが理解し、納得しやすい説明を心がけています。また、あらゆる患者さんの要望にお応えできるよう研鑽を欠かさず、さまざまな先生方の技術や意見を取り入れながら知識のアップデートにも励んでいます。自分の歯で噛むことによって、一人でも多くの方に毎日を笑顔で過ごしてほしい。このことを今後も願いつつ、皆さんのお口の健康を全力でサポートしていきたいと考えています。気になることがあれば、ぜひ一度足を運んでみてください。
