北町もり歯科 (亀山市／亀山駅)
森 誠 院長の独自取材記事
1歳から100歳まで、幅広い年齢の患者が訪れる「北町もり歯科」。亀山市北町の閑静な住宅街に開業してから20年以上、地域医療への貢献を大切にし続けてきた歯科クリニックである。院長の森誠先生は「地域の患者さまを最期まで診たいと思って開業したんです」と力強く語る。同院は、ベビーカーや車いすの利用者がスムーズに入れる空間に、という森院長の想いから入り口まではスロープを設置し、院内はトイレを含めて動線を広く取り、ベビーカーや車いすでも快適に過ごせるバリアフリーとなっている。歯科・歯科口腔外科や訪問歯科診療など、幅広く地域のニーズに応え続けている森院長。歯科医師としてのポリシー、診療の際に大切にしていること、今後の展望などを聞いた。
「点」ではなく「線」で捉えた歯科診療を
開業までの先生のご経歴を教えてください。
愛知学院大学歯学部卒業後、同大学歯学部付属病院に1年、愛知県丹羽郡にあるさくら総合病院に総合的な治療を行うために7年半、付属病院に戻って教職員として2年半勤務しました。自分が専攻する口腔外科はもちろん、訪問歯科診療にも多く携わってきました。「歯科は歯を削って詰め物をして終わりじゃない。患者さんが通えなくなっても最期まで責任を持って診続けるのが歯科医師の使命、医療人としての使命」と強く感じました。その経験を生かして、両親の故郷であり自分の出生地でもある亀山の地域医療に貢献したいと思い、2004年に開業しました。
「患者さんの一生に寄り添う歯科クリニック」として、大切にしていることはありますか？
患者さんの「今」だけに焦点を当てた治療は、将来的に患者さんのためにならないと思っています。例えば歯を残すのは良いことだと思われる方が多いですが、実は高齢の方だと無理に歯を残さず、早期に抜歯したほうがいい場合もあります。なぜなら年齢を重ねるほど、抜歯による血圧の上昇や血管の破裂など、全身へのリスクが高まるからです。患者さんの歯の人生を、短期的な「点」ではなく「線」で捉えて、患者さんの健康状態とご年齢に合わせた診療を心がけています。
高齢の患者さんの診療では、どのようなことに気をつけていますか？
抜歯などの処置前には服薬中の薬をお調べし、血圧や血糖値の状況、血液検査の結果を確認し、施術中でもリスクを考え、バイタルをチェックしながら進めていきます。基礎疾患を抱える方も多くいらっしゃるため、歯科衛生士も含め、細かい部分まで目と気を配るよう心かけています。例えば「歯がグラつくから抜いてほしい」との訴えに対して、処置による健康リスクが高い場合は、医科との情報共有をお願いし、全身状態の確認を取るなど医科歯科連携も欠かしません。また認知症の患者さんもいらっしゃいますが、ご家族はもちろん、行政機関や専門の医師と連携して診療を行うようにしています。
患者の理解度を確認しながら治療を進める
診療の特徴と現在の患者層についてお聞かせください。
虫歯治療や歯周病治療、入れ歯治療や抜歯、予防や訪問歯科診療など、かかりつけ医として患者さんの幅広いニーズに対応しています。患者さんの待ち時間を考慮し、スムーズに診療に入れるよう、電話とインターネットで予約受付します。インターネットの場合は必ずこちらから折り返しお電話し、来院日の調整を行っています。患者さんは近隣のご家族や、職場が亀山エリアにある方が多く、開業当初から通われている方が多いです。そのため急な処置を必要とする患者さんは少なく、定期検診の方がほとんど。1歳から100歳までと幅広い年齢層に来院いただいていることで、それぞれのステージにあった治療やアドバイスをしています。
新型コロナウイルス感染症の流行下においても、患者さんが減らなかったそうですね。
開業当初から予防歯科の重要性を感じ、定期検診の患者さんにも治療後の患者さんにも、「健康なお口を維持するには、口内環境を清潔に保つことと定期的なメンテナンスが大切です」といつもお話ししています。患者さんにもその重要性が浸透したことで、新型コロナウイルス感染症の流行下でも「口内を清潔に保つことが感染リスクを減らすことにつながる」と考えて来てくださった患者さんが多かったように思います。現在は治療器具別に滅菌器を4台、業務用空気清浄機を3台稼働しています。開業当時から患者さんはもとより、自分たち従業員のためにも衛生的な環境づくりに配慮してまいりました。
予防面では、国民病とも呼ばれる歯周病にどのように対応していらっしゃいますか？
歯周病には慢性と急性のものがあります。大切なのは歯周病菌をゼロにすることではなく、後者の症状が出ないように口内環境を維持すること。そのために、定期的なメンテナンスを行うこと、歯周病の原因となる細菌の数を可能な限り減らす、歯に不必要な負荷がかからないように調整することなどが大事です。それでも年齢を重ねた際に、歯を抜かなくてはならないときがくるかもしれません。患者さんの将来の健康リスクを考えたときには、無理に歯を残さないほうがいいと診断したら理由をお話しして、ブリッジや義歯との付き合い方をご提案するようにしています。
患者さんとのコミュニケーションで心がけていることを教えてください。
例えば「欠かさず検診を受けているのに、なぜ詰め物が取れるの？」とおっしゃる患者さんには、「そもそも歯も、歯を支える骨、筋肉も加齢で消耗していくのが普通です。詰めた金属などの人工物は、身体に適合しているものほど劣化しにくいですが、そこでズレが生じて取れてしまうリスクはありますよ」と、その場ですぐに疑問点を解消するようにしています。お持ちいただいた詰め物をつけ直しができず歯を削る場合は、ただ「削りますね」ではなく「詰め物を取れにくくするために今の歯の状態に合わせて穴を深くする必要があるので」と、必ず具体的な理由も含めてご説明するようにしています。患者さんが納得した上で治療を進めることが、患者さんの安心感、そして患者さん自身の口腔環境や口腔機能への意識の向上にもつながると思っています。
ベテランスタッフと一生頼れる歯科クリニックをめざす
こちらは経験豊富なスタッフばかりだと伺いました。
歯科衛生士が3人、歯科助手が3人在籍しています。歯を抜いたり削ったりするのは歯科医師にしかできませんが、それ以外の処置の場合、患者さんと接する機会が多いのはスタッフです。だからこそ開業当初から「患者さんの一生に寄り添うマインド」を持ったスタッフの育成に力を入れてきました。今は立派に育ったベテランスタッフたちが、後輩にその医療人としてのマインドやスタンスを引き継いでくれています。患者さんがどんな薬を服用していて、どんな健康状態でどんな生活をしているのか。患者さんとの対話から自分自身で適切な対応や治療内容を考えて私に提案までしてくれる、頼もしいスタッフです。例えば糖尿病についてもスタッフと一緒に知識を得ることで、地域の病気のリスクを下げることをめざし、健康寿命の延伸につなげていきたいと思っています。
歯科技工士もいらっしゃるそうですが、どのようなメリットがあるのでしょうか？
来院でも訪問先でもすぐに義歯の修理に対応できて、早ければ当日中に患者さんに修理した義歯をお渡しができます。他にも私が調整した補綴物を仕上げてもらうことも。私と外注を出す歯科技工所の間に入って作業の調整役を担っています。その調整に割く時間を私は患者さんの診療や治療に充てられるので、とても助かっています。患者さんの要望や私の指示から最適な技工物をめざして作ってくれるのは、非常にありがたいですね。
最後に今後の展望と読者へメッセージをお願いします。
今後はもっと訪問歯科診療に力を入れていきたいですね。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、訪問でも大概の診療はできるんです。「家まで来てもらうのは申し訳ないから……」なんて遠慮なさらないでください。「なんとか自分が頑張れば通院できるから」なんて、無理をして頑張る必要はありません。少しでも通院が大変だと感じたら、私でもスタッフでもいいので、まずはご相談ください。どんな些細な不安でも疑問でも意見でも構いません。患者さんの人生において、どんな場所で、どんな方針で、どんな治療をしていくのが良いのか、一緒に考えて探していきます。産声をあげたばかりのお子さんから体が思うように動かない高齢の方まで、これからも地域の皆さんに、最期まで頼っていただけるような歯科クリニックをめざします。
