朝倉歯科医院 (茨木市／茨木駅)
朝倉 勉 院長の独自取材記事
包括的歯科治療をモットーに、噛み合わせを重視した予防と治療に尽力する「朝倉歯科医院」。1983年の開業当初から訪問での歯科診療に取り組み、通院困難な患者への口腔内ケアも積極的に行ってきた。院長の朝倉勉先生は、人と人とのつながりを大切に、一歩先を見据えた歯科医療で、地域の患者だけでなく、病院や大学、福祉関連施設とも丁寧に連携をしながら診療を行ってきた歯科医師だ。商社マンから歯科医師へ転身した異色の経歴を持つ朝倉院長に、同院の取り組みについて語ってもらった。
求めれば必ず道は開かれる
歯科医師になる前は、他業種を経験されたそうですね。
歯科に進んだのは20代後半になってからです。当初は関西大学経済学部から商社に就職しましたが、70年代に入り、産業構造が大きく変革していく中で自分の進路を見つめ直しました。歯科に目が向いたきっかけは、細かい手先の作業が得意だったこと、自分が受けた歯科診療で疑問に感じた経験があったことでした。2度目の学生生活は、生涯の中で最も勉強をしたと思います。卒業後すぐに開業すべく学校の勉強以外にも歯科医院の現場で研鑽を積み、1983年の開業後は得意分野を極めるため母校の歯周病学教室に入局。クリニック診療の傍ら学位を取得しました。当時注目をされ始めていたワイヤーをかける矯正歯科の技術も積極的に学んだほか、日本ではまだ普及していなかったインプラント治療が将来入れ歯に代わる治療になると確信し、研鑽を重ねてきました。
開業以後、講演会や出版など、積極的に情報発信を行っていますね。
かつて一般企業でマーケティングやブランディングにも関わていたため、歯科材料や治療機器を扱う企業の情報に敏感で、業者を招いてセミナーなども企画しました。しかし、正確な情報発信のためには業者主導型ではなく、歯科医師が歯科医師に正しい情報を伝えることの必要性を感じ、技術や知識の習得の場の設立に貢献してきました。また、必要な情報を一般の方にも伝えることが重要だと感じ、スタディーグループの広報担当もしていた私は、歯科に関する本の出版も積極的に手がけるようになり、今ではインターネットなどを活用した情報発信、講演会や地域の啓発活動にも力を入れています。
若手の育成にも取り組まれていますね。
「補綴の知識を専門的に学びたい」という勉強熱心な歯科技工士がおり、その希望をかなるため大阪大学の教授にお願いしたところ、快く引き受けてくれました。それなら当院で大学の医局員の先生を受け入れ、実践型の指導や研修が行える場を提供しようというのが始まりで、歯科医師臨床研修制度が導入された1年目に、早速私自身が臨床研修指導を行うため、協力型臨床研修施設の指定の申請をしました。10年以上にわたり学生の指導を行い、歯科医師の育成はもちろん、大学の医局とも強い連携関係を築くことができました。
包括的治療が基本。「矯正不要」をめざす小児歯科も
診療スタンスをお聞かせください。
近年は歯科分野でも専門性が細分化されていますが、歯科医師たるもの、口の中をオールラウンドに診て、全身の健康にも寄与すべきだと考えています。診療では包括的歯科治療を基本とし、歯を失う原因としても知られる虫歯と歯周病の治療と予防に注力しています。以前は歯周外科治療に専念していましたが、この2つがきちんとキュアできていれば、そもそもインプラントは必要ないのです。また、長年の歯科医師人生の中で実感しているのが、安定した噛み合わせと咬合の構築こそが、口腔を守る上で重要だということです。歯列を形成する歯の形、歯と歯の隙間、顎の関節に問題があると、虫歯や歯周病を招きやすくなります。本来の正しい噛み合わせを導くには、質の高い補綴治療が必要です。当院では開院時から技工室を設け、常勤の歯科技工士さんによる精度の高さにこだわった補綴物を提供しています。
小児歯科に力を入れていると伺いました。
当院の小児歯科の特徴は、子育て経験のある女性歯科医師が中心となって取り組んでいるところです。近年は子どもの予防歯科も進み、虫歯は減少の一途にあります。当院では初診時に唾液を採取して行う虫歯のリスク検査を実施し、お口の中のリスクをピックアップした上で定期検診につなげていきます。永久歯が生え始める頃になると、保護者の方は歯並びを不安に思う方が増えるため、正しい口腔機能を獲得するためのお口のトレーニングも行っています。口呼吸、指しゃぶり、頬づえ、姿勢など悪習癖も、正しい口腔機能の獲得を阻害するもの。お子さんが小さい頃からお伝えすることで、なるべく矯正の不要なお口に発達していけるようサポートしています。2023年6月には、子育て真っ最中の出口裕子先生が入職しました。食育アドバイザーでもある出口先生は、離乳食時期も含め、食事を切り口としたアプローチも行っています。
「生涯にわたる予防を」をモットーとした小児歯科ハッピークラブを開設しているそうですね。
「小児歯科ハッピークラブ」は、佐藤典子先生、出口先生ら子育て経験のある女性歯科医師が中心となって担当してくれています、お子さまの中にはお口周りを触られただけで泣いてしまう子もいるので、歯科医院嫌いにならないように細心の注意を払いながら、まずは歯科に慣れてもらうことから始めます。例えば、治療の前に、次に何をするのかを説明、治療器具や内容が書かれたカードを見せてから、治療を行うTSD（Tell-Show-Do）を徹底し、治療後は歯科スタッフだけでなく、親御さんからも褒めていただくことを大事にしています。2024年4月にはキッズスペースを設置する予定です。お子さんがより楽しく通える空間となると思いますよ。
お子さまだけでなく親御さんのサポートも行うそうですね。
保護者の方の歯も大切にしてほしいと、こちらも女性歯科医師を中心にマタニティー歯科も提供しています。女性は妊娠・出産・更年期と口腔内環境が変化するため、結婚前に一度口腔内を整えていただけたらと思います。特に妊娠中はホルモンバランスの影響で歯茎が腫れたり、つわりで歯磨きが丁寧にできず口腔内の病気になりやすくもあるため、定期的に通院をしていただきたいですね。またホワイトニングなど審美面のサポートも患者さんに寄り添う女性の目線が大切だと考えています。当院では院内に一部にホワイトニング専門の部門を設け、歯科という堅苦しい雰囲気を払拭し、気楽に通院していただけるように心がけています。
介護の目線で思いやりあふれる訪問歯科診療を
開業してすぐに訪問歯科診療を始められたのはなぜですか？
開業当時、患者さんの中に脳の疾患で入院してしまい、通院できなくなった方がおられました。その病院の内科部長が、たまたま知り合いだったので連絡を取り、訪問診療を行うようになりました。当時は訪問診療に適した設備や器具もありませんでしたが、工夫を凝らしながら対応しているうちに病院から他の患者さんの診療を要望されるようになり、さらには特養の施設、グループホーム、在宅と依頼が増えていき、訪問診療が本格的にスタートしました。現在は病院の精神科病棟への訪問歯科診療も行っています。
障害がある方、認知症の方への対応なども可能だそうですね。
施設・病院・福祉・行政との連携がほぼない時代に訪問診療をしていた中で、介護事業目線の診療が重要であると気づき、私自身もケアマネジャー資格を取ったという経緯があります。2000年4月1日に介護保険法が施行され、地域包括ケアシステムの構築も進み、ようやく地域連携の必要性が見直されるようになりました。当院では長らく訪問診療に取り組んできた経験はもちろん、訪問歯科診療専門や障害者歯科専門それぞれの歯科医師が在籍するほか、認知症の方への対応などの勉強会に毎年参加するなど、幅広いニーズに応えられるように体制を整えています。
今後の展望をお聞かせください。
私が好きな言葉は「研びて道は拓く」。学び研鑽を重ねれば必ず道は開かれると信じて、今までやってきました。当院では、知識だけでなく、長年積み上げてきた経験をもとに、治療後の経過までを見越した良質な歯科医療を提供しています。さまざまな症例を積み重ねてきたからこそできるアドバイスもありますので、お困り事がある方、セカンドオピニオンをご希望の方も、まずはご相談ください。子どもたちの健康な発育に関わり、なんでも相談できる身近な歯科医院であり、かかりつけ歯科医院としての役割を持ち続けていけるよう努力を重ねていきます。
