ひめ歯科クリニック (多治見市/姫駅)
伊藤 三徳 院長の独自取材記事
姫駅から徒歩約8分程の場所にある「ひめ歯科クリニック」。田畑が広がる住宅地の中にそっと寄り添うように優しく立つ同院は、1995年に伊藤三徳院長が開業した。多治見市出身の伊藤院長は東京医科歯科大学卒業後、都内で5年間の勤務医経験を経て地元に戻り、長年にわたり地域に密着した歯科医療を提供し、信頼を築いてきた。「常に患者さん本位の治療を提供するよう心がけています」と、伊藤院長は物腰やわらかく、言葉を丁寧に選びながらも力強く話す。その一つ一つの言葉からは、誠実に患者に向きあう姿勢がにじみ出ている。常に勉強を怠らず、患者の話をよく聞き、小児から高齢者まで幅広い年齢層に対応。不安を抱えがちな歯科治療においても安心感を与えてくれる伊藤院長に、診療における心がけや地域への思いなどをたっぷりと聞いた。
ニーズをくみ取り、気持ちに寄り添った治療を提供する
こちらではどのような患者さんが来院されていますか?
当院は開業して30年近くたちますので、開業以来通ってくださっている患者さんも、当院の歩みと一緒に年を重ねています。ですので、義歯治療やメンテンナンスで通う患者さんが増えてきましたね。介護施設からの依頼も増えてきているように感じます。協力体制を構築している介護施設もあり、入所者さんの口腔ケアや治療の依頼をお受けしています。この辺りは田舎で少子高齢化が進んできていますが、近くに小学校や保育園がありますので、地域のお子さんやそのご家族も受診いただいています。またご高齢の方は、徐々に車を使えなくなって徒歩やご家族の送迎で通院されるようになる方もいらっしゃいますが、ここに歯科医院があって助かっているというお声を頂くと、この周辺の方たちのお役に立てていることが実感でき、歯科医師冥利に尽きる思いですね。
義歯治療において幅広く対応されていますね。
恩師が義歯治療を専門にしていたので、多岐にわたって学ばせていただきました。保険診療をご希望の方には保険で、自費の義歯に興味がおありの方には丁寧にご説明しています。いずれにしても患者さんが決められるように、保険も含めて選択肢をご提供するようにしています。近年、磁石を使った義歯が保険適用となり、少し義歯のバリエーションも広がったように感じています。また、自由診療の義歯はある程度費用がかかりますので、高額だなと感じられるかと思います。しかし、義歯は「食べる」「話す」ことに直結するものですから、より快適な生活を送ることが望めることを考えれば、そのメリットは大きいと思います。
設備面にもこだわっていらっしゃると伺いました。
はい。切削器具を滅菌する専用のものを含め2台の高圧蒸気滅菌器や、乾熱滅菌器、2台の超音波洗浄器など、器具に合わせて適切な滅菌・消毒ができるようスタッフ全員で徹底しています。切削する際に、空気中に飛び散る粉塵を吸引する口腔外バキュームも開院時から全診療ユニットに設置し、使用しています。患者さんにとってはもちろんですが、私や働くスタッフにとっても良い診療環境をつくることも重要だと思っています。また、近年では、根管治療の際に根の中を掃除するための機械を新しくしました。少しずつではありますが、患者さんの負担軽減につながるよう、また、より確実な治療ができるよう充実させていきたいと思います。
幅広い選択肢を提示し、より良い治療をともに考える
現在注力しているのは、どういった治療でしょうか?
保険適用の幅が少しずつ広がって、かぶせ物や詰め物でも白い素材が入れられるようになりました。自由診療も含めて、患者さんにとって選択肢の幅が増えてきたということですね。そのため、保険のものでもできる限り長く維持できるように、しっかり勉強をして提供をしています。ただ、力がかかりそうな歯や入れ歯の支えになる歯などには適用できない場合もあるため、歯の状態をしっかりと見極める必要があります。患者さんの要望に必ずしも沿えるとは限らないので、費用面なども含めてきちんとご説明をして、相談しながら進めていきます。しかし、まず第一に患者さんのご要望ありきですので、患者さん本位の治療を進めていくことは、一貫して大切にしています。
スタッフさんに伊藤院長からお話しされていることはありますか?
やはり患者さんに合わせて対応していくことですね。例えば配慮が必要な患者さんがいたら、どのスタッフがついてもきちんと対応できるように情報を共有するといったことをしています。うまくいかなかったことがあった場合にも、繰り返さないようにその情報も共有していますね。また、定期的に院内でのミーティングを開き、新しい材料や治療法などの勉強も行っています。スタッフの中には開業当初から勤めてくれている方もいて、本当にありがたいですね。年代はバラバラですが、全員が協調性を持ってやってくれています。私の他に女性の歯科医師も1人在籍していますが、もう10年以上勤務してくれていて、信頼を寄せているんです。スタッフには恵まれていると感じていますね。
伊藤院長は、なぜ歯科医師になろうと思われたのですか?
父が多治見駅前で時計店を営んでいて、子どもの頃は壊れた時計を分解して遊んでいました。手先が器用で、細かい作業が好きだったんです。歯学部へ進学した親戚に話を聞いていたことも大きかったと思います。親のように手に職をつけて自分のペースで仕事ができ、何より人のためになるので、歯科医師をめざしました。東京医科歯科大学に進学し、卒業後は5年間勤務医を経験して、1995年にここで開業しました。母校は医療の研究者や教員を養成する校風で、卒業生の大半が大学に残りますが、私は地元で歯科医療に携わりたかったので、臨床で経験を重ねる道を選びました。勤務したのは大学の関連医院でしたし、大学の先生方が定期的に講師として勉強会や診療の場に来てくださったので、小児歯科や口腔外科などの幅広い領域をより深く学べたのではないかと思います。
丁寧でぬくもりのある診療で、地域の歯科医療を支える
休日はどのようにリフレッシュされていますか?
子どもの頃にバイオリンを習っていたことがきっかけで、大学ではオーケストラのサークルで活動し、今でも休日はバイオリンを弾いています。市の交響楽団でコンサートマスターも務めているんですよ。近年は他の市のイベントなどにも出演するようになり、休日は忙しくしています。実は初めの頃、患者さんには内緒にしていたんです。ですが、演奏会などでだんだん目撃されることが増えていって、「何で先生がそこで弾いているの?」と驚かれたり、褒めてくださったり。今ではいつも聴きに来てくださる常連さんもできて、演奏会でお顔を見つけるたびにうれしく思います。まだ健康なうちに、趣味も精一杯楽しもうと思っています。心の健康にもつながりますからね。
今後の目標を教えてください。
近年、歯科において嚥下障害や口腔乾燥など、口腔の機能低下についても対応が必要だとされてきています。健康寿命を延ばすためにはとても重要なことだと思います。当院においても十数年前から訪問診療の患者さんを中心に指導やリハビリテーションなどを行ってきました。今後は外来においても、口腔機能が低下している患者さんに対して、それぞれの患者さんに合わせた指導や訓練などの対応ができるようにしていきたいと考えています。
最後に読者へメッセージをお願いします。
ここ数年で歯科医院の役割は大きく変わってきたように思います。虫歯や歯周病になったところを治療して終わり、というだけでなく、そうならないために、メンテナンス中心のケア型の医療を患者さんに合わせて提供していくことが重要だと考えています。ケアとは定期的に歯科医院へ行って受ければいいというものではなく、ブラッシングを基本としたご自身でのセルフケアも非常に重要です。その方法を一緒に考えていけたらと思っています。治療に対してのご要望やご希望があれば、ぜひ率直に教えてください。すべてのご要望にはお応えできないかもしれませんが、当院で対応可能なことはしっかりと対応させていただきます。お口の中で困ったことあれば、どうぞ気軽に相談してください。